【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

文字の大きさ
10 / 84
第2章 ルイーズの気持ち

1 カルディニア王国の危機

しおりを挟む
  
 王都の中心地(王宮)から、馬車で南に40分ほど進むとカルディニア王立学園がある。

 王立学園を起点として、東に1時間ほど進んだ場所に王国学院、西に30分ほど進んだ場所に王国女学院は位置している。

 カルディニア王国学院と女学院は、あることをきっかけにして50年前に創設された。それまでは、貴族子息も貴族令嬢も、共に王立学園で学ぶことを義務付けられていたのだ。

 王国学院と女学院が創設されることになったきっかけは、当時王立学園に通っていたカルディニア王国第三王女の奇行である。

 周りからそのようにと捉えられた行動の一つが、他人の婚約者を略奪する行為だ。学園に入学するまでの第三王女の評判は「美少女」「奥ゆかしい」「淑女の鑑」など、大変評判の良いものばかりだった。

 そんな人物が何故、と周りは騒然となった。

 当時の国王や王宮関係者が第三王女の奇行に気付いた時には既に手遅れで、王立学園に通っていた高位貴族の子息たちは、軒並み籠絡された後であった。

 その後始末で、嫡男の廃嫡や幽閉、国外追放など、高位貴族家は大いに荒れた。救いだったのは、下位貴族の子息たちのほとんどが手付かずであったこと。ただそれだけだった。

 真実も解明されぬまま、当の第三王女は幽閉のみ。それには婚約を駄目にされた貴族家
やその親族、関係者からの批判が殺到したが、国王はそれ以上の重い罰を与えなかった。

 王政は衰退の一途を辿っていくと思われた。
 しかし、第三王女の母親であり、当時の王妃は隣国ロードリアス王国の元王女であった。王妃並びに王家には、大国ロードリアスの後ろ盾があり、貴族家では謀反を起こす計画なども出ることはなく、決定に黙って従うほかなかった。今やそれらの話は禁忌事項で、口に出すのも憚られる。

 その出来事が原因で、当時王国の議会では二つの議案が持ち上がった。

 一つ目は〈学院〉と〈女学院〉の創設。この提案は表向き〈性別の特性に合わせた教育〉〈専門性知識の習得〉など、学園にはない科を設けるために、都合の良い理由が挙げられた。本来の目的は〈異性間トラブルの回避〉であることは貴族であれば誰しもが理解していることだった。

 二つ目は、長年続いてきた男系継承に関する法改正の提案。これまでも、議会で何度か提案された議題であったが、女性の継承を認めない方向で話は進められていた。しかし今回の問題によって、継承できる男性の減少に伴い、女性の継承が認められることとなった。

 議会では、その提案が何度も協議され、国王はそれを渋々ながらも認めたのだった。それにより、学院と女学院の創設が決定され、カルディニア王国の爵位継承制度にも変化が生じることとなった。

〈王立学園〉王族と王侯貴族、貴族家(公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵)の嫡男、嫡男ではなく爵位継承予定の者、養子となり爵位を継承するものが所属 学科は貴族科。

〈王国学院〉貴族家の二男、三男、庶子、庶長子、庶民が所属 学科は騎士科・執事科

〈王国女学院〉貴族家の息女、庶子、庶民が所属 学科は淑女科・侍女科

 王国女学院の淑女科に関しては、王立学園時の淑女科がそのまま引き継がれる形となった。王国学院と王国女学院は、どちらも庶民に門戸を開いている。しかし、多少なりとも学費が掛かるため、必然的に入学を希望した富裕層の庶民が入学することとなる。

 こうして、カルディニア王国の教育環境と爵位継承制度は劇的な変化を遂げた。

 決定された当初は、問題点が上がり捗々しくなかったが、それも年数を重ねるごとに落ちついていった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

私を愛してくれない婚約者の日記を読んでしまいました〜実は溺愛されていたようです〜

侑子
恋愛
 成人間近の伯爵令嬢、セレナには悩みがあった。  デビュタントの日に一目惚れした公爵令息のカインと、家同士の取り決めですぐに婚約でき、喜んでいたのもつかの間。 「こんなふうに婚約することになり残念に思っている」と、婚約初日に言われてしまい、それから三年経った今も全く彼と上手くいっていないのだ。  色々と努力を重ねてみるも、会話は事務的なことばかりで、会うのは決まって月に一度だけ。  目も合わせてくれないし、誘いはことごとく断られてしまう。  有能な騎士であるたくましい彼には、十歳も年下で体も小さめな自分は恋愛対象にならないのかもしれないと落ち込む日々だが、ある日当主に招待された彼の公爵邸で、不思議な本を発見して……?

婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします

たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。 荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。 「この猫に構うな。人間嫌いだから」 冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。 猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

薬師の能力を買われた嫁ぎ先は闇の仕事を請け負う一族でした

あねもね
恋愛
薬師として働くエリーゼ・バリエンホルムは貴族の娘。 しかし両親が亡くなって以降、叔父に家を追い出されていた。エリーゼは自分の生活と弟の学費を稼ぐために頑張っていたが、店の立ち退きを迫られる事態となる。同時期に、好意を寄せていたシメオン・ラウル・アランブール伯爵からプロポーズを申し込まれていたものの、その申し出を受けず、娼館に足を踏み入れることにした。 エリーゼが娼館にいることを知ったシメオンは、エリーゼを大金で身請けして屋敷に連れ帰る。けれどそこは闇の仕事を請け負う一族で、シメオンはエリーゼに毒薬作りを命じた。 薬師としての矜持を踏みにじられ、一度は泣き崩れたエリーゼだったが……。 ――私は私の信念で戦う。決して誰にも屈しない。

銀鷲と銀の腕章

河原巽
恋愛
生まれ持った髪色のせいで両親に疎まれ屋敷を飛び出した元子爵令嬢カレンは王城の食堂職員に何故か採用されてしまい、修道院で出会ったソフィアと共に働くことに。 仕事を通じて知り合った第二騎士団長カッツェ、副団長レグデンバーとの交流を経るうち、彼らとソフィアの間に微妙な関係が生まれていることに気付いてしまう。カレンは第三者として静観しているつもりだったけれど……実は大きな企みの渦中にしっかりと巻き込まれていた。 意思を持って生きることに不慣れな中、母との確執や初めて抱く感情に揺り動かされながら自分の存在を確立しようとする元令嬢のお話。恋愛の進行はゆっくりめです。 全48話、約18万字。毎日18時に4話ずつ更新。別サイトにも掲載しております。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

処理中です...