【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

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第6章 問題解決に向けて

10 遠征帰還パーティー(前日)③

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 キャサリンが滞在する予定の客室では、キャサリンとエマがソファーに腰掛け向かい合っていた。

「それで? 貴女、リオンとはどういう関係なの?」

「まだ婚約はしていないけど、この先はどうかしら?」

「……嫌な女。私は小さい頃からリオンと婚約すると聞かされてきたわ。こんな小国の伯爵令嬢と婚約するより、大国の伯爵令嬢である私と婚約した方がリオンにとっても利があるに決まっているわ」

「小さい頃から婚約する、と聞かされていただけでしょう? 本人同士の気持ちなんて関係ないのかしら? リオンが誰を想っているかなんて考えないのね」

「誰を想っている…? まさか……、自分が想われてるとでも言いたいの!?」

「そんなこと、自分の口からは言えないわ」

 苛立つ様子のキャサリンと、煽ることをやめないエマ。

「今回の滞在も、まだ婚約をしていないから友人も一緒なの。想い合っているのだから早く話がまとまれば良いのだけど……」

「……リオンは、本当に貴女のような人を想っているのかしら? そうは思えないのだけど?」

「さあ、どうかしら?」

 ちょうどその時、ドアをノックする音が聞こえてきた。

「紅茶をお持ちいたしました」
「入ってちょうだい」

 キャサリンの部屋へルイーズがやってきた。リリーのお世話以外の時間は、侍女の仕事も手伝っているようだ。部屋へ入ると、お辞儀をしてからキャサリンの側まで歩み寄った。

「失礼いたします。紅茶を新しいものに代えさせていただいてもよろしいでしょうか」
「ええ、お願いするわ」
「かしこまりました」

 キャサリンは、紅茶を淹れなおすルイーズをじっと見つめている。

「貴女、ここの侍女じゃないわよね?」
「はい。こちらには、夏季休暇の間だけ滞在させていただいております。お手伝いをすることも、こちらの御子息様にはご了承いただいております」
「——リオンとは知り合いなの?」
「……はい。リオンさんには……、良くしていただいております」

 キャサリンとルイーズの会話を聞いて笑いが漏れるエマ。

「ふふっ」

 キャサリンは、そんなエマの様子に懐疑的な眼差しを向けながら何かを考えているようだ。

「あなた、リオンとはどういう関係?」
「どういう関係……まだ、何も決まっていません」

 ルイーズは、キャサリンに答えながらも赤面しながら俯いた。

「は? まだって何よ! リオンが侍女風情と何かあるわけないでしょう!!」 
「侍女…風情……」

 ルイーズは、キャサリンの言葉に引っ掛かりを覚えたようだ。彼女の顔をじっと見つめた。

「まだ、勉強中の身ですが、私は侍女という仕事に誇りを持っています。でも、リオンさんのことも真剣に考えています」

 ルイーズの発言中に、エマが護衛として壁際に控えるブライスに目配せをすると、ブライスは頷きながらキャサリンに気づかれないように近寄った。

 キャサリンは、怒りに顔を歪ませながら、ルイーズに紅茶のカップを投げかけた。

「バァーーン!!」

 ブライスが動こうとしたその時、部屋に駆け込んできたリオンがルイーズを守るように抱きかかえた。間一髪のところでルイーズにカップは当たらなかったが、リオンの背中は濡れてしまった。

「っ!! リオン! 何やってるのよ! ちょっと! 離れなさいよ!!」

 ますます激昂したキャサリンは、リオンとルイーズを引き剝がそうと、ルイーズの手を乱暴に掴んだが、その腕に触れた途端、弾かれる様に手を離した。

「やだ……あなた、何なの。気持ち悪い。もう、なんのために、ここまでやったと思ってるのよ……リオンと結婚するのは私なんだから!! う―――気持ち悪い……」

「ルイーズ大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。でも、リオンさんが......」

「俺のことはいい。それより聞きたいことはあるが、それは後だ」

 リオンはルイーズから離れ、キャサリンに向き直り厳しく問いただした。

「キャサリン、『ここまでやった』とは、何をやったんだ? ……話すわけがないか。ブライス、キャサリンを地下に連れて行ってくれ!」

 頷くブライスは、気分の悪そうなキャサリンを抱えて部屋を出て行った。二人を見送ったリオンは、エマのいる方へ振り返る。

「シャロン伯爵令嬢、どういうことですか? こんなこと、計画にはなかったはずですが?」

「あの方は、どんな経緯であれ貴方を想っているのよ。偽物が出てきたところで、すぐに気づかれるわ。やっぱり本物が出てこないと、本音は聞き出せないわよ」

 そのとき、部屋に入ってきたキースがエマに歩み寄った。

「エマ、聞いてないぞ」

「女の勘は鋭いのよ。私ではあそこまで興奮状態にはできなかったわ。だから、途中でルーちゃんに来てもらうようにメアリーに頼んでおいたの」

「勝手な行動は控えてくれ」
「分かったわよ。でも、ルーちゃんがここに来ることを知ったら、許してくれなかったでしょう?」
「まあ、それは無理だろうな。それより、リオン早く次に行くぞ」
「わかった」

 リオンとキースは急いで部屋を出て行った。

「エマさん、私もリリーちゃんのところに戻ります」
「ルーちゃん……ごめんね」

 ルイーズは、顔を横に振り軽く微笑むと、リリーの元へ急いで戻っていった。

「メアリーさん、ただいま戻りました」
「ルイーズさん、黙っていてごめんなさい」

 メアリーは、頭を下げながらルイーズに謝った。

「できれば教えてほしかったですが......、今は私に出来ることをするだけです」

 その後、ルイーズはリリーのお世話に専念した。

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