【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

文字の大きさ
84 / 84
最終章 旅立ち

7 ずっと一緒に

しおりを挟む
 
 大自然に囲まれた辺境の教会

 高く澄んだ鐘の音が響く中、生涯を誓い合ったばかりの新郎と新婦が教会の扉から参列者の前に現れた。

 そんな二人を祝うように、祝福の言葉を浴びせる多くの者たちで、普段は静寂なこの場所も幸せな空気に包まれている。

 ルイーズは、ブラン家とクレメント家が用意した、総レースのウエディングドレスを身に纏っている。その隣では、濃紺のタキシードを着用したリオン。その胸元にあるブートニアにはレースのリボンが結ばれている。


 新郎新婦には、誰も入り込むことのできない二人だけの特別な雰囲気が漂っている。

 参列者には聞こえていないが、リオンはルイーズの傍らで「女神だ」「きれいだ」「愛している」などと囁き続けている。

 ルイーズは、そんなリオンの言葉に苦笑いをしながらも、時より優しい目でリオンを見つめている。

「必ず幸せにする」

「私も、貴方を幸せにしたい」

 そんな二人の姿をうっとりと見つめる女性陣たちと、リオンの甘さに引き気味の男性陣。その近くでは、しくしくと泣き出すルーベルトと慰めるエイミー。

 なんとも対照的な場面が広がっていた。



 ♢



 時はリオンが求婚した一年前に遡る。

 遠征先から急いで屋敷に戻ったリオンは、騎士団を解散させるとその足で花畑に向かったそうだ。
 そこには愛しのルイーズが、一人ぽつんと佇んでいた。(リオンにはそう見えていた)

 リオンは、この機を逃すまいとばかりに早急に行動した。ルイーズから結婚の同意を得ると、クレメント家に戻り、父親へ話を通した。そして、一年後の結婚を認めさせた。

 まずは婚約だということで、半月後にはルイーズと二人でブラン家を訪問した。そして、帰省と婚約の話に、ブラン家の人たちを大層驚かせた。

 大好きな姉に会えたリアムとミシェルの喜びようは凄まじく、二人はリオンから滞在延長の許可をもぎ取った。それからの三日間は、姉と共に楽しいひと時を過ごしたようだ。

 滞在中は、元婚約者のオスカーが、ルイーズの帰省を知り謝罪に訪れた。昔と変わらぬ穏やかな態度で迎えられたオスカーは、もう一度やり直したいと縋ってきた。

 しかし、ルイーズから「反省したら、前を向いて頑張りましょう」と励まされ、横にいるリオンには睨まれながら静々と帰っていった。

 最後まで、弟のような存在だったオスカー。そんな元婚約者を憎み切れないルイーズは、苦笑いをしながらも最後の別れを呟きながら見送った。

 その後、王宮で婚約の手続きを済ませると、友人たちに報告をしてから辺境へと戻っていった。

 クレメント家の屋敷に着くと、二人はそれぞれの日常に戻った。
しかし、隙あらばルイーズの傍にいようとするリオンは、辺境伯とレアから再三にわたり注意をされ、結婚式までの接近禁止令が出された。

 そんな予想外の出来事があったものの、同じ建物内にいるだけでも幸せそうな二人は、ようやく結婚式を迎えることができたようだ。




 ♢




 それから数年後


 ルイーズとリオンは、二人の子供を連れて思い出の花畑へとピクニックに来ていた。

 リオンとそっくりな8歳の息子が、ルイーズにそっくりな4歳の妹の手を引いている。
二人は到着するなり花畑で遊び始めた。


「この土地に来てから、もうすぐ十年が経つのね。十六歳で侍女科に移ることを決めてから、色々なことがあったわ。
あなたと再会して、意識していたのにまた会えなくなって。あの時は、侍女の仕事にやりがいを感じていて、そのときにリリーちゃんにお仕えすると決めたの。リリーちゃんの笑顔を見ると嬉しかった。ずっとお仕えしたいと思っていたわ。

 でも、そんなとき貴方が求婚してくれた。とても嬉しかったわ。これでずっと一緒にいられるんだと思ったら、すぐに返事をしていたわ」

「ああ、そうだったな」

 リオンは昔のことを思い出しているのか、穏やかな表情でルイーズを見ている。

その時、離れた場所から二人を呼ぶ声が聞こえてきた。

「お父様ーーお母様ーー見てください!」

「わたしのもみてー!」

「見てるぞ。二人とも上手にできたな」

 子供たちは、少し離れたところから二人に花冠を見せている。

「二人のところに……、ルイーズ?」

「ずっと……一緒って…約束…したわ」

 リオンが振り返ると、子供たちを見つめるルイーズの頬には涙が伝っている。泣き止まないルイーズを、リオンは優しく強く抱きしめた。

 しばらくして、ルイーズの顔を覗き込んだリオンは、彼女の目蓋にそっとハンカチを押し当てた。ルイーズが顔を上げて「ありがとう」と伝えると、リオンは軽く目を見開いた。

「ルイーズ……目の色が」

「何か……おかしい?」

「いや……とても…きれいだ」


 涙ぐんだリオンを、微笑みながら見つめるルイーズ。

 その瞳の色は、新緑を思わせるような透き通る若葉の色だった。



                                    
 Fin



しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

私を愛してくれない婚約者の日記を読んでしまいました〜実は溺愛されていたようです〜

侑子
恋愛
 成人間近の伯爵令嬢、セレナには悩みがあった。  デビュタントの日に一目惚れした公爵令息のカインと、家同士の取り決めですぐに婚約でき、喜んでいたのもつかの間。 「こんなふうに婚約することになり残念に思っている」と、婚約初日に言われてしまい、それから三年経った今も全く彼と上手くいっていないのだ。  色々と努力を重ねてみるも、会話は事務的なことばかりで、会うのは決まって月に一度だけ。  目も合わせてくれないし、誘いはことごとく断られてしまう。  有能な騎士であるたくましい彼には、十歳も年下で体も小さめな自分は恋愛対象にならないのかもしれないと落ち込む日々だが、ある日当主に招待された彼の公爵邸で、不思議な本を発見して……?

婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします

たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。 荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。 「この猫に構うな。人間嫌いだから」 冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。 猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

薬師の能力を買われた嫁ぎ先は闇の仕事を請け負う一族でした

あねもね
恋愛
薬師として働くエリーゼ・バリエンホルムは貴族の娘。 しかし両親が亡くなって以降、叔父に家を追い出されていた。エリーゼは自分の生活と弟の学費を稼ぐために頑張っていたが、店の立ち退きを迫られる事態となる。同時期に、好意を寄せていたシメオン・ラウル・アランブール伯爵からプロポーズを申し込まれていたものの、その申し出を受けず、娼館に足を踏み入れることにした。 エリーゼが娼館にいることを知ったシメオンは、エリーゼを大金で身請けして屋敷に連れ帰る。けれどそこは闇の仕事を請け負う一族で、シメオンはエリーゼに毒薬作りを命じた。 薬師としての矜持を踏みにじられ、一度は泣き崩れたエリーゼだったが……。 ――私は私の信念で戦う。決して誰にも屈しない。

銀鷲と銀の腕章

河原巽
恋愛
生まれ持った髪色のせいで両親に疎まれ屋敷を飛び出した元子爵令嬢カレンは王城の食堂職員に何故か採用されてしまい、修道院で出会ったソフィアと共に働くことに。 仕事を通じて知り合った第二騎士団長カッツェ、副団長レグデンバーとの交流を経るうち、彼らとソフィアの間に微妙な関係が生まれていることに気付いてしまう。カレンは第三者として静観しているつもりだったけれど……実は大きな企みの渦中にしっかりと巻き込まれていた。 意思を持って生きることに不慣れな中、母との確執や初めて抱く感情に揺り動かされながら自分の存在を確立しようとする元令嬢のお話。恋愛の進行はゆっくりめです。 全48話、約18万字。毎日18時に4話ずつ更新。別サイトにも掲載しております。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

処理中です...