せんたくする魚

白い靴下の猫

文字の大きさ
2 / 26

ウミヘビの約束

しおりを挟む
「あー。喉、痛くないか?」
唐突にリノがきく。
「もう痛くない」
そうイリアが答えると、リノはイリアの手首を掴んで走り出した。
「そか。じゃ思いっきり悲鳴あげてな」
「え?」
気づいた時には、甲板から海に飛び出していた。
「ぎゃぁあああああっ」
ぼよん。落下。ぼよん。
体が二回ほど、奇妙に弾んでリノの上に落ちた。
「いてて。どいて~」
リノがうめいて、イリアは慌てて体をずらす。
「ごめん、でもっ、死ぬかと思った!先に言ってよっ!」
「あは。いい叫びっぷり。ちょっとだけうつ伏せに倒れてて。遊んでるとこ見えないように布屋根でここらへん隠すから。焼きごて押したフリしないとな」
そのせいか。
心臓はまだドキドキいっていたけれど、怒る気もせずイリアはうつ伏せのまま周りを見回した。
「筏?」
筏にしては広いけれども、海に浮いていて、ロープで船とつながっている。
ロープを見上げると、甲板と、船室の両方から伸びていて、途中で蜘蛛の巣のようなハンモックが数箇所張られていた。きっとあのハンモックで弾んだのだろう。
リノは器用に、ハンモックに布をかけて甲板から見えないようにした。
それから、「釣竿持ってくる」と律義に説明してからするするとロープを登ると、船室に入り、持てるだけ竿やら餌やら仕掛けやらを持って降りてきた。
「そこもあなたの部屋?」
「そんなとこ。イリアを寝かせてた部屋だけじゃたりなくてさ、実験室ってことにしてぶんどったんだ」
リノは筏の下にいろんな生簀をぶら下げていて、そこには変わった魚がたくさん入っていた。リノは、一生懸命解説してくれた。
美味しい魚、生で食べられる魚、骨が針になる魚、油が取れる魚、毒を出す魚。
そのあと、釣りをした。
胸元がスースーしているのを忘れられるほど、楽しかった。
綺麗な魚がたくさん釣れる。
それから貝殻でできた綺麗なナイフで、生で食べられるお魚の料理もしてくれた。
イリアが笑うと、リノはすごく嬉しそうな顔をする。
イリアは生まれて初めて、疲れるまで笑った。
夕方になると、リノはご飯を部屋に運んできて、二人で食べようと言ってくれた。
焼きごてをおされた奴がすぐ元気だと怪しまれるから人前に出るな、だそうだ。
夜になると、胸元のコテを当てられたところがはれぼったい感じになった。
「ゴメンな。辛いよな。ちょっと我慢な」
そう言って、リノは、スポンジで冷やしてくれる。
別に、辛いというほどではないし、リノも同じはずだった。
遊んで、笑って、食べて、おんなじ傷があって、冷やされて。
「だいじょぶ。スポンジきもちいし」
イリアはそう言うと、うとうとし始めた。
父親の言葉の通りに死のうとしたことが、遠い夢のようだ。
次の日の朝も、胸元はやっぱり重かった。
「おはよう」
イリアが言うと、リノがちょっと慌てた。
「おはよう。あのな、胸元の傷ひどいけど、よく洗っとけば、二週間ぐらいで消えるから・・・。かきむしったりしなければ跡も残らないから。ええと、泣かないでくれると嬉しいんだけど」
「見せて」
リノが気まずそうに布をずらす。
「!!・・・すごい」
イリアは言葉を失う。赤黒く変色して盛り上がった皮膚と、その中央に焼け焦げた海蛇。焼印そのもの・・・
なんで?なんでこれが痛くないんだ?
「あの瓶の中、何だったの?」
「うー、聞いても泣かないか?」
「なんで聞いて泣くのよ」
「・・一つは腐ったキャベツの液ベースの黒色化薬。これつけて日に当たると真っ黒のあとがつく。も一個の赤く腫れる方は、麻酔作用のあるうなぎの体表粘液とチャドクガの鱗粉ベースで、顔に塗ったら人相不明になるやつ」
「げぇっ」
そう言って、一瞬固まったあと、イリアがケラケラ笑い始めたので、リノのほうがびっくりした。
「怒らないのか?」
「怒らないよぉ。すごい、すごぉい!」
船に生えたオレンジの木を思いだす。イリアはリノを仰ぎ見た。
ああ、いるのだ、こういう人間が。自由になる才能のある人間が。
「えーっと、じゃ、パレオ」
そう言って、リノは美しい緑に染め上げられた布を差し出す。
珍しく、イリアが笑っても一緒に笑わない。緊張しているようにも見える。
「多分、終わったあとには、怒ってると思うけど」
「え?」
「なんでもない」
イリアは一枚の布をドレスのように着るパレオに慣れていなかったので、結局リノが手伝った。
それから、白っぽいオレンジ色の顔料を持ってきて、イリアの唇に塗ってくれる。
素で唇の色が良いと、酷いやけどがないことがバレてしまうのだという。
「あんまり元気そうな顔しちゃダメだぞ。すっごく可愛いけどな。笑うなよ。すっごく可愛いけどな」
真面目な顔をしてリノが言うので、イリアは、どんな顔をしていいか分からず、うつむいた。
それを見てリノは頷くと、イリアの手を引いて、船長室に向かう。
「おい。エラブ船長!」
リノは艦橋からの視線も無視して進むと、ノックですらなく、蹴りを二発ほどいれて船長室らしき部屋のドアを開けた。
部屋の中は、船長と副船長、それから航海士が話し合いの最中だった。
「お揃いで丁度いいや。印つけた」
船長が口を開く。
「そういえば、昨日派手な悲鳴がしていたな。・・・だが随分顔色がいい。失敗か?見せてみろ。」
ああ、昨日ドアの外で聞こえたのはこの声だ。イリアはリノに一歩擦り寄った。
リノは、イリアの後ろに回ると、すっと、パレオの結び目をほどいた。布が消える。
!!!
イリアは、何が起こったのか分からず呆然と立ち尽くし、一瞬後に、胸を抑えてへたりこんだ。
「いやぁーーっ」
男たちの視線が突き刺さった。
特に一番若い航海士は口をあんぐり開けて、膨らみ始めたばかりの胸を注視している。
すぐにリノが、布をかけた。イリアが必死で前を合わせる。
「どこ見てんだよ!ちゃんと印見たのかよ!」
自分で見せておきながら、リノが航海士に突っかかる。
「いや、その、うん、見た。ちゃんと印になってた。でももうちょっとゆっくり・・・」
顔を赤らめながらも、真面目な振りでブツブツいう航海士の間合いに、一瞬でリノは飛び込んだ。航海士の喉元に美しい貝殻のナイフが突きつけられる。早い。
「印以外で見たものは忘れろよ!俺のだからな!」
船長の目が、イリアからあっさりとはなれて、リノのナイフさばきにもっていかれたのがわかる。
「やめろ。リノ。わかった。合格だ。あとは好きにしろ。それより・・」
船長はリノのナイフさばきにツッコミたかったのだろうが、副船長のほうが早かった。
「また、よく効く薬を作ったのか?リノ。昨日お前が渡した薬を付けた奴は、飯を全部食ってた。意地を張って付けなかった奴は、起き上がることもできない。その子も、焼印があるのに随分元気だな」
「なんだ、薬付けてない奴いるんだ。ばかだな」
リノがナイフをしまう。
「バカはお前だ、リノ。手柄は戦ばかりじゃない。お前の功績は何本も墨が付くものだぞ。船の上にオレンジを生やし、毒虫の島で蜜を作り、薬まで作る。それに、お前、明らかに強くなっているだろう。あんなナイフさばき・・・いつからだ」
イリアにもわかった。リノは多分、強い。そして、すごく、頭がいい。
落ち着いて考えればわかる。イリアを半裸にしたのも、航海士に絡んだのもわざとだ。ゆっくり傷を検分させないために。
「墨、嫌いだ。オレンジの時こりた。痛いし」
リノが子供っぽく言うと、船長が顔をしかめる。
墨は刺青のことだ。大きな手柄を立てると腕に一本ずつ足していく。海民のなかの序列を表すらしく、墨の本数を増やすために皆励むものらしい。
焼印を押された戦利品でさえ、ひとつの手柄で焼印の上に墨が入れば、焼印は無効だ。そのまま船に残って上を目指すもよし、陸に上がるもよし。自由な人間に復権する。
「海民の名誉を重んじないのか」
船長が怒ったようにきくと
「んー。今はそうでもない気分、かなぁ。なぁ、墨三本になったら、女連れていていいんだよな?年関係ない?」
ちょっと、思い直したようにリノがきいた。
「ああ、関係ないとも。さらに四本になったら、女にもいい暮らしをさせてやれるぞ。分け前が倍だからな。」
本気になってみるか?そんな感じで副船長がニヤっとした。
「よしっ。じゃぁ、俺、今からこいつ口説いてくるから。で、イリアにOKもらったら、墨やるよ。あと三本分。んで四本にする」
「はあ⁈三本分?」
部屋にいる大人の顔が皆唖然、という同じ表情になる。
イリアが後から聞いた話によると、皆、一本に命をかけるのだそうだ。
オレンジは神の所業だと謳われ、全艦一致で墨二本とされたが、本人が痛いから一本でいいと言い張った。既に海民中の伝説となっているらしい。
余裕たっぷりの顔でリノが挑発する。
「何が欲しい?今回の薬な、傷の治りが悪くなるから使いようだけど、痛覚は部分的に麻痺させられる。あと、俺、サメが逃げていく薬も成功したぜ?」
「なんだと?!」
大人たちが同時に叫ぶ。既に場の空気はイリアの焼印どころではない。
薬の方は、イリアが証拠だ。普通なら焼き印をおされてこんなに元気なわけはない。
だが、痛覚を部分的に麻痺?
それよりなにより、サメが逃げていく?
「沿岸ってさぁ、長年戦してっから、サメさえよけられたら鉄とか一杯眠ってるよなぁ。欲しくない?」
鉄が自由に入手できるのは、砂民だけだ。
ほかの民にとっては鉄は非常に高価なもので、砂漠の市場で入手するために大きな犠牲を払っていた。
一方、砂民は、大砲をもち、鉄の球を船に射込もうと、惜しげもなく沿岸に鉄をぶちまける。砂民にとって、鉄は貴重というほどではなく、武力を誇示する程度でもぶちまけられるのだ。
だが、そのわざとらしい鉄は、入江に大量のサメを呼んだ。
ぶちまけた鉄が回収不可能と考えられてきたのは、ひとえに鮫。ひたすら鮫だった。
「本当か」
「もちろん、実地で俺が見せてやるよ。麻酔は一本分、サメよけは二本分、合わせて三本で買うか、会議しとけよ。・・あ、その前に、イリアがOKするの祈っといてくれ。俺が振られたらチャラな。痛いの嫌だし」
・・・大人たちが顔を見合わせる。
墨を買うだの売るだのという、誇りと対極の言葉につっかかろうかと一瞬躊躇し、舌打ち一つで船長は説教の方をあきらめた。実益が大きすぎる。
「会議だ。幹部を集めろ」
船長が決断すると、リノは自分の体で大人たちの視線を遮って、イリアのパレオを結び直した。そして、騒然とし始めた大人に目もくれず、イリアを気遣う。
「立てるか、イリア」
「うん」
早く行こう。そんな感じでイリアを促した。
部屋にもどってカンヌキをかけると、心のそこからほっとしたように息を吐いた。
「あー、緊張した。えーっと、ごめんな。すごくごめん。殴っていいよ。でも、泣かれると・・・」
「ありがとう」
イリアは心から言ったが、リノは青い顔になって壁にへばりついた。
「お、怒ってるよな?女が、怒ってるのに『ありがとう』とか言うときはものすごく怖いことが起こるって、エラブ船長がっ」
リノのおののき方がイリアのツボにはまって笑いの発作が起きる。
「あははは。なにそれ。笑わさないでぇ。怒ってないから~!大丈夫。私のためにやってくれたのとわかってるしっ、けど、うひゃひゃひゃ」
リノは、笑い転げるイリアのそばに恐る恐る近づいて、ちょこんと横に座った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

俺様系和服社長の家庭教師になりました。

蝶野ともえ
恋愛
一葉 翠(いつは すい)は、とある高級ブランドの店員。  ある日、常連である和服のイケメン社長に接客を指名されてしまう。  冷泉 色 (れいぜん しき) 高級和食店や呉服屋を国内に展開する大手企業の社長。普段は人当たりが良いが、オフや自分の会社に戻ると一気に俺様になる。  「君に一目惚れした。バックではなく、おまえ自身と取引をさせろ。」  それから気づくと色の家庭教師になることに!?  期間限定の生徒と先生の関係から、お互いに気持ちが変わっていって、、、  俺様社長に翻弄される日々がスタートした。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

処理中です...