せんたくする魚

白い靴下の猫

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血が回復してしまいました

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ペドロが見えなくなるとすぐ、ゼノが現れた。
「お疲れ様。見事な仲良くなりっぷりだったね」
「ありがとう。絶対戦になんてさせないんだから」
「うん。よく頑張った。イリアは偉い」
「えへへ。嬉しい。リノも褒めてくれないなかな~」
「あー、うー」
ゼノが口ごもる。
「・・・お、おこってるとおもう?」
イリアがちょっと心配そうに聞くと、ゼノは呻いて、取り敢えず、イリアが無事なら本気で怒ったりはしないから、気長になだめてやってくれると嬉しいといった。
イリアは心配になって走り出した。
船のすぐそばで、パールが待っていてくれた。
「早いね」
「はい。走って帰りました」
麻黄の酒が抜けていないのに走ったので、頭がぐるぐる回る。
「昔通りの優しい種族だったかい?」
「はい。とても。懐かしくて嬉しい気持ちがしました。彼らの財産をあらしたのに、信頼してくれていて。助け合えたらと心から思いました」
「よかった。着替えたら、リノの鍵あげるから、私の部屋へおいで」
「へ?鍵?」
意味がわからなかったが、船に戻ると、その意味はすぐにわかった。
リノが自分の部屋に監禁されてるという。大騒ぎだったそうだ。
いくら怒っていても、真っ先にイリアの前に顔を出さない時点で、こういう強行手段を疑うべきだったかもしれない。
まずい。これは怒ってるよ、な。
パールに任せたから大丈夫だとおもいきや、えらく強引な手に出たものだ。
体を清め、服を替えて、イリアは、リノが監禁されている部屋をのぞく。
多分心配されてるから、取り敢えず安心させてと思ったのだが、すごい顔で睨まれてイリアは首をすくめた。
あーうー。
釣り針、頼みにくいな。
パールに鍵をもらって、早く部屋から出しに行こう。
だが、パールはえらくのんびりお茶など出してくれる。
「えーと、リノに謝りに行かないと・・・」
「まぁ、ちょっと、ゆっくり顔を見せな。・・・ずいぶん、顔色がいいね。ゼノに聞いたら、ざっと二キロは走ったって?」
「それぐらい、だと思いますけど」
「で、特にめまいしたりはしない?」
パールはイリアのまぶたに触れたり、口の中を覗いたりしながら聞いた。
「ええと、今ぐるぐるしてるのは、多分麻黄のお酒のせいで、体はすごく軽いです。最近は昔みたいに走れます」
「少しだけ、血をくれるかい?」
「へ?・・・っ」
肘の内側に細くて中空の魚の針をチクっとさされた。
「ごめんよ。ゼノ、血止めておいて」
「はいはい」
「あ、ほとんど血出てないし、そのままでいいよ」
イリアは言ってみたが、ゼノは、すぐに布を持ってきて器用にまいてくれる。
パールは、しばらくイリアの血を少しずつ小さな器に溶かしたりしていて、話しかけにくかった。
「ほい。おしまい」
しばらくするとパールはイリアに向き直ると、にこっとわらった。
「ソラニンの芽を飲んだ特徴は全部消えてるよ。体は健康。心も、さっきの話を聞く限り健康、だね。・・・あたしからリノには言わないから、イリアの好きにおし。」
ひょっとするとこれを言うためにパールはついて来てくれたのかなとイリアですら思うほど、肩の荷を降ろしたような、さっぱりしたパールの宣告だった。
イリアは、信じられずに呆然と聞き返した。
「まだ、やめて三ヶ月も経ってないのに?」
「ああ、そうだね。ひょっとしたらもっと早く治っていたのかもしれない。ま、いいんじゃないのかい。リノは成長してるところと足りてないところが極端だから、本人がそれに気づく時間だったと思えば」
パールはあっさりそう言うと鍵をくれた。
「い、いえ、混乱してたのは、リノじゃなくて私だったみたいで・・・」
「ああ。イリアは仕方ないさ。あんたにまだ時間が足りなければ、おちつくまで、リノに言わなけりゃいい。ずるでもなんでもないよ」
だが、イリアが心配していたのはそんなことではなかったようだ。
「わ、私、今日幼虫とかも食べちゃったし、ちょっと色っぽくないかも!」
とっちらかった顔でイリアが叫ぶと、ゼノとパールが吹き出して笑った。
平和だねぇ、と。
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