偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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82☆左手が許しません!

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・・・なんだろう、これは。
目の前で、キルヤ様と私が、口論している。

「サフラじゃないくせに、ユオを触りまわすんじゃないわよ!」

「いい眷属もってるじゃねぇか、サフラは!」

「サフラの眷属じゃないもん、ユオのひだり手だもん!」

「サフラ贔屓すぎだろが!人間の枠はみ出さないなら俺のほうがよっぽど器用なんだよ!」

「不器用が可愛いの!サフラにエッチおしえたのはこの私よ!文句あるわけ?!」

「お前か!あのややこしいやつらを追加でひねったのは!文句しかねーわ!おまけにど修羅場で持ち場はなれやがって!」

「ど修羅場ってのはこの後くんの!どうしてくれんのよ、キスマークついたじゃない!」

私の口は非常に元気がよく、キルヤ様は怒鳴ってるのになんか嬉しそうで。

あのぉ。

割り込んでみようとしたんだけど、左手の勢いがすごくて・・・って、え、左手?私の?・・あ、私の左手!

ケバケバ男に流された電流を強引に遮断して、そのあと気配がきえた。

なぜいままで意識に上らなかったんだ?あれだけしょっちゅう脳内会話してたのに?わたしの・・本体の・・ために、犠牲になったのに?

サフラも私も異常ないけどなぁ、と思っていたさっきまでの自分の異常がひたひたと見えてくる。
サフラだって、キルヤ様のカウンセリングを懇願してくる段階で、すでに平気じゃない。

「あのおっ。呆けていて悪かったですが、戻りましたので!!」

キルヤ様の頬に爪を立てようとした左手を分捕って、自分の右わきの下に抱え込む。
さすがに世話になりっぱなしのキルヤ様にキレるのはまずい。

「キルヤ様、すみません、うちのがっ」

「お?おお。元気な分身だな。そりゃ、アレ位存在感があるやつが消えたら、バランスも崩す」

「って、はじめから私のメンタルが、左手の欠損で綻んだって、見立ててたんですか?」

左手の説明、してなかったのに?
私ですら、わかってなかったのに?
名医なの?

「お前のパニック中に精神誘導やったから、見えちまっただけだよ」

「うわぁ・・・お見苦しいものを」

未だにじたばたする左手をにらみつける。

「あー、その左手、離していいぞ。ってか、ソレ、どうやって戻った?探しても気配すらなかったのに、いきなり殴りかかってくる程元気とか・・」

それは、私も気になる。

左手から、生気が満ちていく。彼女をとおった血が、順に温度を取り戻し、色鮮やかに変わっていく。焦燥にも近い、覚醒。

さっきキルヤ様がくれたのがお風呂あがりのあたたさがだとすると、これは試合の中盤でアドレナリンがバンバン血管を開いていくときの熱さだ。

自分の左手を脇から引き抜いて、まじまじと見つめる。

「このばか、キスとマッサージがうまいだけの遊び人にふらふらして!ユオはサフラが癒すの!すっごいネタ仕入れてきたのに!浮気ものには教えないからね!」

やいのやいのとよくしゃべる。
こんなのが抜け落ちて、よく異常なしとかおもえたな、私。

ちゅう

あ。
完全に面白いものを見る目になったキルヤ様に、左手のゆび、を、吸われた。
人差し指の第二関節が、異次元みたいな湿った暖かさの内側に埋まる。

「ぎゃぁ!あ・・」

やっぱりね。
触覚過敏発動するような触れ方だって、自由自在だよ、この人だもの。

舌は、私の人差し指と中指の間の皮膚の薄いところを通過中。背筋がぞくぞくして、体の奥がじんじんするけれど、慌てるのを左手に任せてしまうと、妙に余裕ができた。

「キスとマッサージのうまさなんて、体験しないとわからないよなぁ?」

うわぁ。すごみ上手。
ひとことで、指がいっぽんずつちゅるんと口に吸い込まれ、ほっぺの内側にほぐされ、良く動く舌に丁寧に嘗め回される想像が脳を支配するからすごい。

さっさと、説明しなさいよ、左手。ジワジワ耐えがたくなるくすぐったさに総崩れして、這う這うの体で、降参する未来しか見えないよ?

「どっちの味方なのよ⁈」

確かに。
いや、ごめん、だって、あんたがいるの、なんか楽しくて。

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