ひどくされても好きでした

白い靴下の猫

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115. 雨の中

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パチドが、ミケに駆け寄っていくのを見て。ミケが、幸せそうに笑うのを見て。
ソナは、やっと大きく息が吸えた気がした。

よかったぁ。ミケがあんなふうに笑ったら、任務完了だ。
嬉しい。幸せ。安心した。

ふふ、よくがんばった、私!

雨だけど、街まで歩いて行こう。だって、ニマニマが止まらない。
ソナは上を向いて両手を広げ、雨をいっぱいに浴びながら、くるくると回る。

そんなソナの視界は、雨のカーテンの向こうに、タイキを捕らえた。この綺麗な腹黒さんは、最近よくソナの周りに出るのだ。

タイキは、綺麗な腹黒さんに良く似合う、ちょっと高めの良く通る声で、ソナによくわからないことを言う。

「泣くのかなって、思って見に来たら、楽しそうに踊っているから、みていた」

「なんでこのめでたい状況で、私が泣くのよ」

「・・・パチドが好きだろう?」

きょとん。
そうとしか表現しようのない顔で
ソナがタイキを見る。

「えーと、あなたが?」

「違うのか?」

「私に聞かれても・・」

「あのな、俺がパチドに惚れているかをソナに聞いたと思った訳か?パチドがソナに振り向かないから凹んでいるかと思った、っていう話をしているつもりだ」

ソナは、タイキをまっすぐに見たけれど、その表情たるや、まさに、『大丈夫かコイツ』以外のなにものでもない。

「初耳ですね」

「おまえなぁ。あれだけ、パチドの身代わりに刺されたり、俺にパチドを殺さないでくれって媚びたりしといて、違うって言い張るわけか?」

「・・・そりゃ、あなたから見れば、みっともない方法かもしれないけれど、私としては精一杯よ。せっかくいい気分だったのに、貶されてケチがついたじゃない、帰る!」

完全に拗ねた顔になったソナに、タイキが慌てる。

「待てよ。貶した訳じゃないだろうが。それに、いい気分、だったのか?」

「私は芸術家肌じゃないのよ?気分良く無きゃ雨の中踊りません!」

タイキは、ソナの濡れた髪をかき分けて、頬に手を当て、自分の方を向かせた。
ぷくーっ、と膨れたその顔は、失恋に沈んでいるものでないことは明らかで。
ちょっと、うるっ、となった目は、たぶんタイキのせいで。
完全に、ホールドアップ。

「分かった、順番がわるかった。俺は、お前が好きだ、ソナ」

「・・・嘘をおつきー!」

だめだ、余計に怒らせた。なんでだ?

「経験頼みの手練手管の数々で誑し込めると思うな?!売春婦経験2年もやれば大抵の男のタイプなんて1巡するんだから!年上風吹かせて丸め込もうなんて・・」

「誰が年上だよ。ソナは二十歳だろうが」

「そうよ、二十歳よ!あんな抱き方して、優しくして、どうせ赤子の手捻るようだとか思っているのよね!」

「抱き方がイマイチで悪かったな!はじめてなのだから仕方がないだろうが」

「初めてなはずないでしょうが!どこまで馬鹿にすれば気が済むわけ?!」

「16で初めてがそんなにおかしいか?!」

「誰が16よ!ルカですら16じゃない!」

「俺とルカは同い年だよ!幼馴染って言っただろうが!」

「・・・?! 10才ははなれて見え・・」

「そんな離れた、幼馴染ありか?少なくとも一方は幼くないだろうが」

「・・・え゛、あれ?」

「あのルカ抱えて、どうやって女性関係の手練手管を獲得するんだよ。・・・あー、俺のそっち側のスキルが気に入らないというのは分かった、適当にどっかで精進してくる、他に希望は?」

「ま、まって、まって。・・・本当に16?」

「誰にでも聞けよ」

「じゃ、ピュア系云々も本気とか?わ、私が強引に童貞奪っちゃった?ご、ごめん!夢とか、あった?大丈夫よ、ノーカウントで!」

「なんでそうなる?!人の話を聞いていたか?ソナが好きだ。だから、お前が許すなら、寝るし、治癒するし、くっついて歩く。ソナがパチドを好きだと思ったから、言わなかった」

タイキとしては、もう一度告白したつもりだが、ソナは聞こえていないうえに、うるうる、から、ぽろぽろに。

「夜な夜な泣いていたり・・」

「なんの話だよ!おちつけ!」

「可哀想に。泣いていいのよ?」

「いや、今泣いているのはお前だが?!しかもなんだ、それは同情の涙か?!」

泣いているソナを、抱きしめるが、絶対におかしい。
抱きしめ返すはずの手で、頭を撫でてくるとか、何ごとだ!

やれやれ、どこで、間違えたかな。
告白に失敗したことは疑いようもないが、それでもやっぱりソナを抱いているのは嬉しくて。

手練手管ねぇ。まぁ、追い追い頑張るとしよう。
タイキは、そう誓うのだった。
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