手負いですが恋愛してみせます ~ 痛がり2 ~

白い靴下の猫

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45 ゼルダの夜会

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結論から言うならば、ゼルダの会食は、敵の先制攻撃から始まった。

クルラは、普段から大人し目だ。
大人数がひしめいているオフィシャルな場では特に。
クリスタの取締役として招かれて初めての公の場で、目立つことは控えたいはずで。
その彼女が、ゼルダでの会食中に、珍しく声をあげる。
ただ一言、
「え?」
と。

シューバのあいさつ中だった。
あわてて声を押さえようとするクルラの腕を、隣にすわっていたマッドが握る。

クルラの腕には鳥肌がびっしりたっていて、呼吸がひゅうひゅう音に変わろうとしているところだった。
「その水だ!飲むな!多分麻薬関連!」
株主や来賓がたくさん来ており、カメラも入っているなかで、マッドが一瞬のためらいもなく叫ぶ。

雁があかりに水を飲んだかを聞いた。あかりがうなずくと、横抱きに抱えて吐かせにすっ飛んでいく。まぁ間違いなくそのまま強制入院コースだろう。

丸テーブルにクリスタの面々がすわり、男性陣はアルコールを、女性陣はミネラルウォーターを。そんな流れだった。

メイがコップを逆さにして、シューバとさとるに自分は水を飲んでいないとアピールし、シューバを守れる配置に入りながら、クリスタの机の開けられた水のボトルをノーキンに、シューバの席の目の前にあった水のボトルをマッドに投げる。

マッドは投げられた水をあけて、先に自分の口に一口含んで異常がないのを確認すると、クルラをテーブルクロスの下に引っ張り込んで、この場で吐けだのうがいしろだの、注射するから暴れるなだの怒鳴りながら応急処置を始めた。
一方のノーキンは中身の解析をすると言って駆け出して行った。

シューバはそのままマイクを置かずに指示を出した。
「ゼルダ所属のものは、社外に一歩も出るな。CSIRTに全権限を開放する。違法の責任はすべて私が負うからその水に細工をしたやつ、そそのかしたやつ、故意に見逃したやつまで全て縛り上げろ」

質より量と言われた警護チームが、CSIRTの指示にしたがってゼルダの実行部隊を、つぎつぎに拘束し、カメラが動いたままの、来賓がいるままの広間にどつき入れてくる。

社内にも社外にもつながったモニターとカメラに、シューバの声が吸い込まれては吐き出される。
「そんなに、戻りたいか。飢えて、蔑まれて、同族で自家中毒のように腐らせ合っていた頃に」
声に威圧感をのせるだけで、こんなに変わるものか。
警護チームに混ざって実行部隊の拘束を手伝っていたさとるが、ぞくぞくするわ!と腕をさする。

公衆の面前で社員を捕らえ始めると思わなかったのだろう、上層部の数人があわててシューバに意見する。
「シューバ様、ゼルダの信用にかかわります、ここは一旦閉会にしてからあらためて・・・」

シューバが嗤った。
「あらためる必要があるか?地獄に子々孫々にいたるまで浸かり続けたいと望むものと、一刻も早く分かたれたいと思っている私が?」

闇が噴き出すような声音に、英雄と言われたころの彼の父を思い出すのか、ラノン様とつぶやいて最敬礼をするものが出る。
意見しに来た人間のほとんどが、自分の席へと後ずさりしていく。

それでも後に引けないものたちが、額から汗を滴らせながら叫んだ。
「シューバ様!クリスタの女、いえ、女性が数人体調をくずしたからといって、ゼルダ内で粛清など!」
まったく。
シューバが少しだけ顎を引くようにして口の端をあげた。

「解らないのか?私も、ゼルダも、国ではない。どこで開くも自由な経済圏だ。私がホゴラシュに、私の愛した人を受け入れてくれと頼むいわれはない。受け入れられないものが自らこぼれ落ちれば済む。私は何も困らない」

シューバは怒鳴った訳でも、銃を振りかざしたわけでもない。
だが、捕らえられていない社員も、捕らえられた男たちの中からすらも、跪いて赦しを乞うものが出はじめる。

シューバという人間は、ここに居続ける義務がない。
ホゴラシュの歴史上はじめて国民にまで大量の外貨を回した強力なポンプは、移動できる。

その事実から、なぜ目を背けていられたのか、彼らはわからなくなっていた。

国にならないか?と、義務をかぶってでもここで幸せにならないかと、シューバをその気にさせたのが畑里あかりだっただけなのだ。

「愛する人を害されたくなくばホゴラシュを捨てろと脅してくる輩が絶えなくてな。私が去るべきか、脅してくる輩が去るべきか、一度だけ皆にも聞いてみようと思った訳だ」

お前たちは、ホゴラシュを守りたければ「あかりを」捨てろと脅したのではない。あかりを守りたければ「ホゴラシュを」捨てろと脅したのだ。

今すぐその脅しに屈してやろうか?
シューバは、そう問いかけたのだ。

『こぼれ落ちたくないのなら、自分たちの手でその脅しを行ったやつらを片付けろ。
私の手を煩わせるな。』

明確すぎるメッセージが、タキュもキュニも超えて、胃袋と生殖細胞を持つすべてのホゴラシュ人の心臓を貫く。

シューバ様に、ホゴラシュを捨てろと、脅したの『敵』は、だれだ?

次々と拘束され、どつき入れられてくる『敵』は、キュニもタキュもごちゃまぜだった。
外貨と食料と未来とを、ホゴラシュからおいだそうとする『敵』に、キュニもタキュもない。
その混乱のさなかで、シューバは来賓と株主に先ほどと変わらないオフィシャルな顔を向ける。
「さて、社外の方々にはお暇な時間でしょうからゲームをひとつ。ゼルダの株価がこの事件で下がると思われる方は、私が現在の金額で買い取りましょう。そうでないと思われる方にはたった今お売りしましょうか。どうぞこの宴にご参加ください」

ざわざわっ。
一瞬間を開けて、広間は電話の洪水になる。
本社につなげ、取引所の現在の価格を教えロジュルダの資産はホゴラシュ貨幣の担保じゃないのだぞ、国外移転した方がむしろ・・

それから。
シューバは、ゆっくりとキュニの部族長のたちのテーブルに顔を向ける。
ロジュの巨体の側に、レノが真っ青な顔をして座っていた。

「ロジュ、隣の男が今回のことにかかわっているか知らないか?」
「どうされる、おつもりでしょうか」

シューバは捕らえられた実行部隊+アルファを顎で指した。
「こいつらを広場にでもつなぐ。群衆に嬲り殺されたくなければ、指揮系統が上のものを自分たちで仕留めるしかないだろう?わかりやすい『上』候補がいれば、死者が減るかと思って親切心だ」

どちらでもいいと、シューバの態度は言っていた。
レノが手下から殺されて手下が助かっても、手下という手下が群衆に嬲り殺されても、どちらでも。

「あなたの敵になりたくないというだけで、人々が自分の拠り所を壊すと思いますか」
ロジュは硬い表情でそう答えたが、シューバはごく軽く首を振った。

「するさ。しなければ、地獄の底を、飢えと蔑みを押し付けたと自分を恨む子と共に這いずり回ることになる」

言葉はあきらかに、外の人間に聞かせていて、敵意はレノに向いていて。

シューバの威圧が、自分に向いていないとわかるのに、ロジュの頭は自然と下がってしまう。
シューバが畳みかける。
「ロジュ。2~3年という時間はな、求めれば得られると知った人間が、その可能性を潰した人間を全身全霊で恨めるようになるのに、十分すぎる時間だ。お前はそれがわかるから、あかりと話を付けたのだろう?賢しさに免じて、選ばせてやる」

ロジュとて自分たちの不利を、感じないわけではなかった。
この部屋の外の人間が、モニターを通じて、カメラ映像を通じて何を受け取り、どう感じ、どう動くか。
シューバの威圧で嫌と言うほどわからせられた。

それでも、少しでも譲歩をという焦りでロジュが言い募ろうとする。
「あかり殿は、効率的にキュニを束ねることを・・」
だがロジュの言葉は、シューバのすがすがしいほどの笑顔を見て途切れた。

「ああ、公的な話をし過ぎたな。私はそんなに大人か、ロジュ?お前は忘れている。私が、あかりとともにいる男をどう思うか。簡単だろう。さとるとマッドと雁とお前の中のだれを殺した時がいちばんあかりの怒りが少ない?お前にはぜひ敵になって欲しい所だ」

この子どもっぽいとも言える嫉妬が、シューバの本音であり、本当に些細なきっかけで天秤が実行側に傾くことが、そして、それが彼になんの害も与えないという事実が、さざ波のような恐怖になって、キュニとキュニに協力した者たちの心を浸していく。
キュニの箱舟であるロジュは、盤石ではない。

そして、捕らえらえられた男たちが、その冷たいさざ波に耐え切れずに騒ぎ始める。
『レノ様、あなたが、命じたのではないですか』『1人だけお逃げになるのですか』
『命の中身がほんとうに国のためになるなら、群衆に向かってそう言ってください』

「さぁ、えらべ、ロジュ。レノは、今回の件に、無関係か?」

ロジュが膝をついた。
「・・・世話役が、ゼルダからナノ磁石を窃取すべしとの実行の命を出し、実行部隊を動かしたと、先ほど聞き及びました」

ふうん。
そんな感じでシューバは軽く眉をあげてクリスタのテーブルを見やる。

「ノーキンから連絡はあったか?」
マッドが青い顔のクルラを抱えたまま答えた。
「水に入っていたのは、ナノ磁石付のFosファミリーの転写因子とジアモルヒネ様の物質。ゼルダで初期に実験禁止になったやつだ。理屈上はナノ磁石を使って大脳基底核の線条体に転写因子持ってくれば人工的にヘロインの禁断症状もどきが操れる。結構な技術者まで敵方なようだな」

シューバの目に瞬いた激烈な怒りを感じられたのは、彼を見慣れた数人だろうか。
「それを拘束しろ。技術方とやらも引きずってこい」
その声を聴いて、弾かれたようにレノが立ち上がった。
「お、お待ちください、いや、待ちなさい、シューバ。『約束』をまもれ!『約束』を破れば母親がっ・・」

ロジュが、レノの死を直感して目を伏せる。

ロジュは、レノが洗脳者であることを知っている。だが無理だ。こんなに場を作る力に差があっては。
意識レベルを落とすどころか、自分に注意を向けさせることすらできない。
操る以前の問題。
この状況で、シューバにそんな脅しが通じると思うなら、その勘の悪さだけで死に値するだろう?

シューバはさらりとロジェの表情を見てからレノに答えた。

「ああ、母は十数年前に首を吊ったそうだな。そんな昔のことはどうでもいいが、不信な点があれば検視報告書を上げろ。長いつきあいだ。最後の頼みとして一応見てやる」

レノの目が信じられないものを見るようにまん丸に開く。
母親が、首を吊ったと、なぜ知っている?
洗脳の入り口がとっくにふさがっていたことを知って、初めてレノの視線が周囲の助けを求めて動くが、すでにロジュは視線をはずしていた。

「ロジュ!なんとか言え!キュニはっ」
ロジュが目をあげもしないのを見てシューバが嗤う。

「ああ、国?は知らんが、この経済圏は今、キュニとタキュなど些細な差だ。私の敵と、それ以外。地獄に還りたい奴とそれ以外。他は、ない。」


その後、広場に一周、まるく杭が打たれた。
杭と杭の間に張り巡らされる鎖はたった一本。
その中に、縛り上げられて広間に集められていた容疑者たちが、拘束を解かれて入れられていく。

シューバの処刑宣言は簡単だった。
「私は、見張りを『置かない』が、ホゴラシュの発展を願う者たち皆に監視を頼もう。処分されるのが嫌ならば逃げていい、が、子々孫々に至るまで二度と私のもとに戻るな。
ああ、友達や家族が冤罪でとらえられていると思うものがいれば、守ってやって構わないぞ。明日の朝、あかりの気分で、私の敵を決めてもらう。ホゴラシュごと敵にならないことを祈ろうじゃないか」

群衆が広場を取り巻き、手に手に石を持ち、その輪を狭めていった。

下っ端は震えながら、シューバとあかりへの服従と恭順の言葉を唱えながら、杭の側で体を縮めた。杭の外側に出ようとすると歯をむき出した群衆に円の中へと追い立てられるからだ。
だが、円の中心部付近では、指揮系統がそこそこ上の者同士がせめぎ合い、より上位の者のを数人で引きずって、もみくちゃにしている。
徒党を組もうとするものには、群衆から石がなげられた。

長く、血なまぐさい夜になった。

鎖の内側へ追いこまれた人数は30人を超えたが、朝息をしていない人間の数は6人。レノはヒトの原型をとどめていなかった。
当たり前なのか不思議なのか、生存しているものの中に、重症者はいない。

「ふーん、思ったよりも、死者が少なかったな」
広場のカメラの映像を見ながらそうつぶやくシューバを、クリスタの面々は唖然として見守った。
こんなシューバをあかりに見せなくて済んでほっとする。精密検査におくるだけだと言うのに、あっさりあかりの意識をかりとった雁に感謝だ。

膝をつき頭を下げる容疑者たちは、それぞれに自分の組織の『上』の血をかぶっており、いつの間にか広場の鎖は、彼らを閉じ込めるものではなく、群衆から守ってくれる結界に変わっており。

朝はとても静かだった。

シューバは生存者を、あかりの判断だと言って解放した。
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