手負いですが恋愛してみせます ~ 痛がり2 ~

白い靴下の猫

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52 腹黒好き

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シューバが私を忘れて、2週間、かな。

忘れられてしまっても、いや、忘れさせてしまっても、か。
遠くから、シューバを見ているのは好きだ。
きれいだし、私の推しだし。
シューバが仕掛けるゼルダの発展も、ドラマみたいでかっこいい。

市場が大きくなれば自動的にライセンス料が増えるようにしてあるものぐさ設計のクリスタと違って、シューバのゼルダは頑張り屋さんだ。

今は、バイオマスなセルロースを餌にして、うちの子・・ホゴラシュの希土類鉱床からとった細菌だから、うちの子よね・・・に、砂漠でも生分解するプラスチックを作らせている。で、ゼルダはこのプラを量産するための共同開発先を大募集中。

私からみると、随分技術を小出しにしてるなぁ、と思うのに、ネギしょった外資系企業が次々と飛び込んでくる。

このネタは多分、あと10年は安泰ねー。

だって、私は知っている。
この技術、良い技術だけどできた後に難点がある。普通の生分解しないプラごみに混ざると、普通のプラの方の再生がすごくむつかしくなる。
シューバがクリスタに技術相談に来たのはここで行き詰ったから。
セルロースも微弱にだけど磁力応答するし、うちの子な菌たちは当然のように磁性細菌だったから、ナノ磁石が好きに操れるクリスタとの研究はものすごく効率的だった。

ゼルダとクリスタは、あっという間に、あとから添加するだけで、うちの菌が作ったプラを、普通のプラスチックにすることができる薬剤を開発した。要するに元の木阿弥だけど、まざっても他のプラに悪させず、素直にリサイクルされる。

でね、なんでシューバがそんな元の木阿弥技術を国際化させたいかと言うと、もってるんだよね。同じ設備で同じように使える、二酸化炭素呼吸の宿主細菌。うちの子な菌の兄弟分で、生分解プラの製造工程で大気中の二酸化炭素が消費できて、世界中が飛びつかざるを得ないヤツ。

腹黒いわぁ。
好きだわぁ。

きっと、順番とタイミングを最適化しながら、上手に売っていくんだろうなぁ。
あたまもカンもいいもんね。
儲かるんだろうなぁ。
モテるだろうなぁ。

遠くから見ている分には、怖くない。そりゃぁもう、全然。
腹黒なんてお好みのトッピング。推しのでてくる小説でも読んでるみたい。

抱きついて、怖がって。キスをして、怖がって。
そんなことは、もう、ない。
至近で変なアレロケミカル出したりしなければ、あの子の足は引っ張らない。
草葉の陰から応援、しちゃうよー、だ。
ファンってやつ。

他国のファン程、熱愛報道にキビシクはないけど、結婚相手は、顔だけで選んじゃだめだからね、ミギとペギに優しい女性!これ絶対。
あの子のそばに、幸せをざくざくに。
そうだ、今日の分の、プレゼントをえらぼう。ファンだから!

世界の半分くらいの国にとって、ホゴラシュは国になった。
レノをはじめとしたいくつかの過激な組織のトップは自分の配下の手で、殺された。
ゼルダの会食でぶちかましたシューバの脅しが効いて、シューバの意思を強引に捻じ曲げようとするやつは、いなくなった。
クリスタも『きゅーぶ』も順風満帆で、心配事の9割9分は片付いた。
だから、私はシューバの追っかけをしているファンのひとりとして過ごしても、何も困らない。

正直、我ながらよくもったほうだと思うし、気分は余生よ。気楽で、楽しい。

なのに、いまだに夢見が悪い。
毎日、自分が損壊される、夢。

幼児期から妄想産業に棲んでほぼ15年。
自分の妄想の暴走で蝕まれる日が来るとは思わなかった。
我ながらとほほなヤツ。

最近は、起きていても、呼吸がにがくて、体が損壊されていく感覚が止まらない。
あー、変な物質だしてるんだろうなぁと思う。
アレロケミカル。泳げないカマキリを、水につっこませたりするやつな。
最後まで可愛くないと言うか、斜めに間抜けと言うか。

洗い流したらマシになる気がして、震えが減った今も、お風呂にばかり入る。
風が散らしてくれたらマシになる気がして、風の強い所にばかり散歩に行く。
でもまぁ、変わったことと言えば、それくらい。

夢見なんて、記憶を少しいじればホワイト・プログラムで矯正できるけど、そこまでするようなことじゃない、というか、是非ともやりたくないと思っている。
たかだか夢のことで、シューバとのあれこれを忘れるなんて、もう欠片だってごめんこうむる。
だって、もう増えないじゃない。すごく貴重なのよ。

あきらめなければいけなかった想いへの餞別に。
今度は、私が想っていたいとおもう。
私が忘れても、あの子が私を想ってくれていた時間くらいは。せめて。
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