手負いですが恋愛してみせます ~ 痛がり2 ~

白い靴下の猫

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57 手負いのゴモラ

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シューバはフリーパスでクリスタの中を進み、あかりの執務室に直行した。
あかりの執務室は雑多だ。デスクワークをしていない時期はとくに。
謎のシャーレが並び、安物のCCDカメラが働いているその横に、平気で袋菓子が置いてあるあたり、今日の彼女のやる気のなさがにじみ出ている。

「んー、いらっしゃぁい。どしたの?」
うとうとしていたらしい彼女は、軽く目をこすった後、両腕を広げた。

この私にハグを挨拶にしろと?
ふらふらとあかり走化性を発揮したところで、彼女の手首の内側に見慣れない色を見て覚醒する。
紫斑?

考えてみれば、長袖ブラウス自体が不自然だ。
日中の気温は高く、クリスタの場合、スーツもブラウスもYシャツも客と会わない時は誰も着ない。

「あ、ちょっと、まった、誤解・・」
私の視線の先にある色を認めたあかりが、なにやら言葉を発したが、理解できない。

あかりの袖をまくる。息をのむほどの色の洪水。

肘下に大きく広がるどす黒いアザと、剣山の上を引きずられたかのようなひっかき傷、その周りの赤、青、黄。
普通に生活していてつくはずもなければ、あかりに加えられた暴虐を思い出させずにはいられないほどの傷跡。

「やめてってば、何でもないから!」
「なんでもないはずがないだろう!なぜこんな跡が・・何があった!?」

頭が真っ白になっていた。
あかりの静止がきけない。

「本当に何もない!薬が合わなくて隙あらば内出血ってなった日があるだけ!すぐにノーキンが気づいて薬かえた!って話を聞けーーッ!」

焦りすぎてボタンが飛んだが、かまわず、あかりを押さえつけてブラウスをずらす。
肘下のような目を覆うような跡はないが、一筋首から胸元に下りる爪痕。

ビーッ、ビーッ、ビーッ

あかりが机の下の非常ベルを蹴り押したらしい。
神経をひっかくけたたましい音がプレハブ本社に鳴り響く。

「ちょっと、人の話信じなさいよ!やめてっていってるの!こらーっ!」
あかりが暴れて、ブラウスが裂けた音がする。

「どうした?!」
間髪入れずにマイクから帰ってきたさとるの声に、あかりが叫びかえす。

「皮下出血をシューバが誤解して、手負いのゴモラ!証人求む!」
「わーった!!」

それから、わらわらと見知った顔が部屋に駆け込んできて、いいから話を聞けと口々に諭され、あかりと引きはがされた。

ノーキンが、内出血の原因と予後の記録をみせてやるから機嫌を直せと肩を叩く。
どうやら本当に事故だったらしい。薬があわず、人工的な血友病のような状態になってしまっていたのに本人が気づかず、ミギとペギと遊び狂った挙句の傷跡だとか。

あかりは、プンスカ怒って、
「あーのーねーっ、心配してくれるのはありがたいし、びっくりな跡なのも認めるけど、会社で服はがれちゃ、取締役の立場ないでしょお?!怒ってるからね、おっかけてこないでよ!」
そういって部屋を出て行ってしまった。
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