解放

かひけつ

文字の大きさ
119 / 136
第3章 ~よう

問答無

しおりを挟む
《side『人間的合理性スマート
私の誕生は、『カプセル』で目が覚めた時だ。

 今となっては、珍しいことじゃない

それもこれもグルバンの暴走とアピスの裏工作の成れの果てだが、どうこう言うつもりはない。予め、知識もあって、大体の感情には整理がついていたから、他者に興味なんて大してない。

 だから

空気を読むのが人よりできるのかもしれない。なんて簡単に消せるのに、他の奴らは得意そうじゃないらしい。

 感情が薄かったからかもしれない

『アピス』の種族存続の戦争だ、とか。リン含む被害者連合の正義の鉄槌、とか。

 どーーでもいいが勝つ

とはいっても、それらを独力で、どうこうできる力もなければ、行動力もない。

 私は私を、『特別』だとは、基本

外から分かった気で俯瞰して、ただ冷めてるだけ。自身の机上の空論生活や自堕落っぷりに自虐はしても、根本的に解決する気にはならない、ただのニートだ。

 そんな私は特別なことが数点あった

①アピスが意図して『生きたがり』を凝縮させたものが私の根幹にあること
それによって、平凡一般的感性とアピス超人的達観が共存すること
③眼が強化されていること

 <別に『生きたがり』と思ったことはないんだがな>

それら以外はひ弱な一般人。謎は、まだまだありはする。

 <でも、分かんなくていい>

一般人であっても、理解しきれてない機械を使うし、身体を全部理解してるやつなんていない。

 <されと…>

作業服を整え、仮眠室を出る。

 「おはよ~」

 「あ、おはようございます」

 「も~~固いよ~固いって~~w。敬語やめなよー。ガチガチだとミスっちゃうよ~」

 「すいませんもー、癖でして」

 「うんうん、真面目だもんね~w」

 「移動中に雑談とかいいですか?」

 「全然いいよ~」

 「ドラマ…見ましたよ【ロミオとジュリエット】」

 「あ、ほんと~!え、どうだった~~?」

 「原作だと配達トラブルだったものを、『悪戯イタズラ猫』のせいでメッセージ取り消しなんて中々ゾワってくるようなこと考えますよね…」

 「よね~~、関係性増やしちゃって冷や冷やしてたとこあるけどー、ラストまで良かったくない?」

 「ですねーー面白かったですよ。期待値超えてました」

付き合いは上手い方だ。こういう場は、下手にでるに尽きる。後輩面は、先輩風吹かせるのと似た、してやったり感がある。

 「@%$って話しやすよね~」

 「そうですか?」

 <当たり前だろ>

これは私の練習とアピスの事前準備に当たる。相手がどんな人かも直ぐ分かるようになったし、それに合う接し方も分かる。

 だから

親友だと思われることは多かった。こっちは何も思ってないのに、だ。

 「@%$さん!あぶな!」

心の渇きは少々異常だった。たぶん、心はアピス超人、技術や知識が一般人なんだ。

ブンッ……!!!

 <ちょっと違うか。死にたくないのはホントだ>

鉄の塊が数センチ手前に落ちる。だが、当たらないと分かっているし、バウンドしてもこちらに倒れてこないことも予測済みで、脅威でも何でもない。

 「@%$!大丈夫だった?」

考え事で周りが見えなくなっていたのは、わざとじゃない。

 <やっぱり、『考える』メリットはないな…>

バタン…

 「…腰抜かしました…焦ったーーー」

ハハハハハハ

周りの笑いに理解はできても、心が揺れることはなかった。

『生きたがり』とは…やはり思わない

目が良いお陰で生を見極められるから危機感がなってないのかもしれない。死にたいと思わないし、死を間近に感じると、体は正直に震え出す。ただ、これは特別じゃない。一般的な範疇に過ぎない。





ずっと、ゲームをしていた。リンという存在も知識では知っていたが、さほど興味がなかった。いずれ来る絶対的な死と同じで、『頑張り』で変わるものとは思えない。

 <なんとかなるだろ…>

考えないようにしていた。拠点にどうせ来るのも分かっていた。でも、知っているなら、手助けをしに部屋から出ないといけなくなる。

 「ただのゲームだってば」

『知っているのに何もできなかった』に引け目を感じるなんて…下らないことだ。ゲームにのめり込めばいい。会った時も、被害者面してオドオドしてればいいと思っていた。

 「一緒すr…ってエンじゃん。おひさ」

ハッキリ言って、『エンターテイナー』なんて眼中にない。『エンターテイナー』って名前掲げる割には、根っこがただの寂しがり屋で向いてなさそうと思うだけで、それ以上の感情がない。リンは…データなんかよりずっと、ずっと…主人公たる風格を持っていた。

 「わたしは『最強ザ・ワン』に用がある」

 「そうだよね、うん。じゃあ、私もご一緒しようかな」

話が通じる。おそらく、考えなんて読まれてる。でも、敵意さえなければ、正当性さえあれば、話ができる。

 そこらの一般人バカとは違う

おべっかも、謙遜も、必要ない。神さえいなければ本人とはってところがネックだが、欠点がない。

 ほんの少し…むず痒い……

こんな状況、こんな出会い方でなかったら、良いビジネスパートナー友達になれたのに。

 「あなたはどうする?」

 「オレは死に洗脳されたくないから、それはしない」

裏の意図まで汲み取ってくれるからリンは優秀だ。




少し全身に疲労感こそあれど、儀式が終わる。

 「さすがに、ずっと座ってたら疲れるな…」

 「あ、あぁ」

 「リン様!今すぐにでも、地上に行きたいです!!」

 「落ち着いて…」

エンの様子が少しおかしい。『アンバランス死にたがり』はマイナスに向いていた突進が、プラスに強制されたような眩しさがあった。

 「ここでもたもたしてる暇はありませんし、行っちゃいますよ!?」

 「少し、静かに、待て」

リンが暴れる犬と散歩してるようにも思えて少し笑える。

 「…スー君はさ。下に。行くんだよね?」

 「あぁ…プッ。そんな深刻そうな顔すんなって…w」

慣れたパターンだ。お別れは茶化した方が…。エンは真剣な眼差しを向けていた。

 「…僕は、スー君ほど頭が良くない!」

 <急にどうした…?>

たまにいる、別れ際に激情に任せるパターンかと思った。リンと目が合う。

 「君はすぐ、着飾る!」

これまでバレたことがない。確信する。リンがなにかした。

 <あいつ…!>

 「でも、ある言葉に救われた…」

 《全部含めて、キミだろ?》

 「……」

エンが思い描いている情景は、エン視点で、私がそれを言った時。ありふれた言葉だ。誰かの言葉を流用したに過ぎないし、他の人にも言ったと思う。でも、何も思わないわけじゃなかった。

 「着飾らなくても、分かり合えると思うんだ!着飾るなってわけじゃない…。その…全部含めて…スー君だ」

 《…色んな人格してたら、自分を見失った。を見てくれる人なんていなかった。あくまで、アピスか『エンターテイナー』。エゴがでた。違いを作りたくなった。観察や再現に磨きをかけるほど、『エンターテイナー』として認められるだけ。じゃない…》

 「………」

エンの感情がダイレクトに伝わる。『演出家エンターテイナー』としては、特に最後がダメダメだった。

 <やっぱり、向いてないだろ>

 「……そ、そう?」

心の声を垂れ流しにされていることを察する。心が読める相手対策で無心の行動を心がける。




リンとシンと私だけが残る。エンと死にたがり二人は上に行った。理由は聞かない。、アピスに伝わりかねない。それはそれとして…

 「なぁ、なんでした?」

作戦や勝敗に関係ないことを聞く。それは、『エンターテイナー』になぜ私の本心を伝えたか、だ。

 「…したがいいと思ったから」

 「…秘密とか守れないやつだろ、リン」

 「結果オーライ」

 「おいおい…」

少し、話が通じない。前言撤回かもしれない。友達になれたか怪しいな…コレ。

 「とりあえず、行こうか?先へ」

 「だね」

上の階からの階段のすぐそばに足場だけのエレベーターがある。でしか、下へはいけない。

 「レディファーストってやつだよ」

 「ありがと」

レディファーストの本来の意味も重ねてのブラックジョークだったが、リンは笑ってくれない。ツれないなと思いながら私も乗り込む。

 「ま、降りるぞ?」

 「ん」

シンがいるから余計な会話芝居をさせられたし、雑談だってした。ずっとずっと、何分も下降していくが、そろそろ到着だ。

ガクンッ……

 誰も、穏やかな到着は想定していなかった

アピスの仕業ではない。リンが足場を傾け、私の手を引く。眼がいいので全て見えてしまう。

ーーーーー~~~~!!!

幾本もの極太雷が通り過ぎ、落雷が真横に落ちたような振動が取り残される。映画みたいだと感心する。

ドンッ………!

リンは私の手を引いて着地するも、即座に手を離し怪我しないように遠ざけてくれる。【流弾】でも使っているのだろう、ふわふわ浮きながら数メートル離されている。ちょっと面白い。

 さ て と

 <ほぼ仕事終わりだな>

地下は広く、観戦する場所に困ることはない》
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...