解放

かひけつ

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第3章 ~よう

余談~あの日を続け~③

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《sideアピス
目が覚めたら、誰もいなかった。

 両親も、弟も

家を出て歩く人はいる。でも、不気味さが街に渦巻いていた…。

ブルッ…

鳥肌が立って、肌を両手をさする。

 <…水飲もう…>

食欲はない。喉が渇く。どこか気が気でないこの焦りが原因かもしれない。

コトッ…

コップを置く。

 <異変の兆候はあった…>

アイドル志望の友人は■■の危険な考えがあるかもと疑っていた。

 ナニかないとあんなことは言わない

他にも、突然使えるようになった雷を操る力超能力も、カーセ家の財団による施設設立も、あのも…

 異常なことは多くあった

 「…ハァハァ……」

ここにいても仕方ないことを悟り、外に駆け出した。超能力で足が速くなることはなく、役に立つ使い方なんて正直思いつかない。

 肝心な友人も、その妹もいない

それどころかいつもは顔もみたくない弟をいじめるやつらの顔すら……いた!!

 「おい!」

弟を虐める三馬鹿の一人を見つける。だが、雰囲気がいつもと違った。

 「…ついて来い」

 「弟をどこにやった…」

 「……」

呼ばれて振り返った時も、コイツの声からも…心を感じない。会話が成立しない。

フーーフーーーッフーーッ

 <…息が上がってるのか?>

様子が少し変だ。鼻息が荒く、眼の焦点があってないような……。

 <度が過ぎた犯罪にでも手を染めたか?>

盗み、暴力、殺害…と列挙すると、■■を間違えて殺してしまったのではと考える。が、少し冷静になる。

 それなら、俺を呼ばれない。

呼ぶなら、拘束した■■人質の前か?

 <いや、にしては現在の行方不明者は多すぎる…>

同一犯とは言い切れないが、繋がってるように思えて仕方ない。

 <単独犯とは考えにくい…。何より、三馬鹿こいつらにそのレベルの悪事はできるものじゃない。協力者がいるのだろうか?>

考えても答えが導き出せない。何と言っても、全ての行方不明者が同一犯であれば、誰が何のためにするか見当がつかない。大人しくついていく。会話はない。追うのを止めようとすると、血相を変えて、「来てくれ」と懇願する。どう考えても、きな臭い。

 「…なんだ…ここは…」

 <町はずれの山には…こんな建物あったっけ?>

 「……」

 「なんか答えろよーーおーーい」

 「……」

三馬鹿の一人は無言で廃墟に入っていく。不穏だ。不穏すぎる。

 こんなとこに人は来ない。

ゴクリ…

 <なのに……なんかいる…>

動物がいる茂みや人がいる建物、稼働する無人工場にさえ、呼吸を感じる。

 断言できる。野生動物が住み着いたソレじゃない。

例えるなら、夜の学校。知らない世界に来たような異質感、振り返れば誰かが立っていそうな不安を煽る空気だ。

 「………」

既に、三馬鹿は廃墟に呑み込まれて俺は独りだ。引き返しても、ここに来れるか怪しい。正直、歯車が壊れた感覚はずっとあった。来てはいけないバグルート。進んでも、戻っても、正規ルートには戻れない詰んでいるって状態かもしれないと口に出したり、言葉に明確にしたくないだけでその一歩手前まで来ている。

 「行こう…」

震える足に言い聞かせて廃墟に踏み込む。中は暗い、非常灯のような緑の光が点在する。

 <電気は通っているん…だな>

埃を被っているし、建物の損壊は見られる。年季を感じるようにも見えるけど、そう偽装していても素人目では分からない。ここが古ければ、電気が通っているのは異常だし、そうでなければ、ここに廃墟を装った建物を作るのも闇しか感じない。

 <怖い…>

こんな経験、したことがない。当たり前の感情だ。でも、進むと決めたから、緑の光を頼りに進む。

パッ!!

 「■■!!」

部屋の奥で照明が付く。椅子で縛り付けられた■■だ。遠目で見ても分かるくらいボロボロで至る所から血が滲んでいる。駆け寄ろうとするが、透明の壁がある。

ガン!!

壊れる気配はない。背後から、三馬鹿が現れる。

 「おい!!お前らか!!」

 「……」

胸倉を掴んで強く揺さぶっても返事がない。本当に意識があるか疑ってしまう状態だ。

 「大人しくし給え」

スピーカー越しに声が聞こえた。同時に、スポットライトが大きくなる。ピンポイントで■■だけを当てていたライトが広がる。

 「……」

家族も、友人も…眠らされて椅子に縛られている。

 「…君のお友達も、家族も、ここにいる君以外。みーーーーんな。洗脳済みだ」

勿体ぶるような間も、声のハリも、抑揚も全てが愉悦に満ちていた。汗が噴き出る。変な感覚だ。とにかく息苦しい。

 「…何がしたい!!解放しろ…!!!」

 「多少は頭が働くと思ったんだけどなぁ~~」

パチンッパッ!!

男が指を鳴らすと、■■の隣の席にも赤色のライトが照らされる。そこにいたのは友人の妹○○ちゃんがいた。■■同様、ボロボロだ。

 「まだ分かんないワケ…ないよね?」

 「……!!」

ぞわぞわと全身に広がる不快感と血が滲むほどの憎悪が、脳から足先まで幾度もなく循環する。

 「自己紹介がまだだったな…『施設』の異能研究のトップ。カーセ家直属の研究者。君の異能を試しに来ただ。よろしく」

 「………」

自分の名前と被ることがあるなんて…とか、正直どうでもいい。こんな初対面で好きプラスから始まるわけがない。最悪の始まりにして、終わりの始まり。ここから呪われた日々があんなに続くなんて、思うわけがない。いや、もっと前からだったかもしれない》
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