25 / 136
第3章 ~よう
起動し②
しおりを挟む
☆sideシン
アピスはグルバンの記憶を所持していた。オレたちがここにくるのも分かっていただろう。しかし、泣きじゃくるグルバン以外に目に見えた異常はない。考えるのをやめるな…。
<オレがヤツだったらどうする……?リンを殺す?いや、メリットが思いつかないし、何と言っても、それ以上にその場を活用しそう。リンを虐めてオレらと交渉?何を求めている?国王宣言などを見るにやはり、権力と異能の独占か?そう仮定すると、どうやって交渉する?……>
長考で分かったことは、特にない。嫌な予感が未だに拭えない…。
〔グルバン。オレはまだ嫌な予感が拭えない…。リンの世界にログインしてくる〕
「………あぁ、そっちは頼む。だが、わしはもしもこの部屋に不審者が来ても」
〔それには考えがある〕
――sideメハ
私は思いつめていた。
<これでいいのかな?いや、これしかない。リンを守らなきゃ>
「メハ…大丈夫?」
「…なんでもないよ。さぁこっちだよ」
リンに心配された。余裕を持たなきゃ。ここなら安全だから、大事なのは、あいつが来てから、そして、リンにアレさえこなければ……。
「着いたよ」
実際ここは私の世界だから、私たちは動かなくても目の前に誕生させることもできるのだが、リンはこっちの方が好きだから。
「わーー!」
棒読みに聞こえるその声は、歓喜と興奮を滲ませているのを知っていた。リンは比較的何も感じはしないが、心が揺さぶられないわけではない。誕生日限定でリンの好きなものを集結させ、私なりにアレンジしたテーマパークを作っていた。これならリンも気に入ってくれると確信して……。
「メハ。一緒いこ」
生きたいのは山々だったが、さっそく来客だ…。
「あぁ…っと、ごめんねリン。ちょっと先に遊ぶ順番決めてて」
「…わかった」
悲し気なリンに背を向ける。
「すぐ戻るから」
「うん」
今思えば、あの時の私はいっぱいいっぱいだったんだと思う。リンの含みのありそうな「うん」の裏を考えることすらできなかった。
私は侵入してきたあいつを睨む。
「帰って」
〔ったく、開口一番がそれかよ〕
「あんたが神だかなんだかしらないけど、要は怪物じゃない。自分のことしか見えなくて、傲慢で、最強の生物。それが人の姿して、なんて言おうが心配して当然でしょ!!」
〔危害を加える気がないのはわかるだろ?〕
「わからないじゃない。龍ならちょっとくしゃみをしただけで、呼吸をするだけで、リンが死ぬかもしれないでしょ?」
〔リンが見える霊は友達でもいいのに、神はだめなのか?〕
「霊はリンに関渉できない!」
〔悪霊やポルターガイストみたくおとなしくない奴が来たらどうする気だ?〕
「リンが本質を見破るから害をなす前に逃げればいいでしょ!」
〔リンはオレを危険視したか?〕
「……」
一番痛いところを突かれた。リンを信じていればいるほど、こいつは限りなく白になる。
「…リンが見えてる世界と私が見てる世界は違う。あの子はあんたと組んで死ぬ未来を見越していたとしても首を縦に振る!そうでしょ!?」
〔…何か、あったのか?〕
私はそれが「オレを疑う証拠があるのか?」とも「君は何かされたのか?」にも聞こえた。
「私はっ!」
寒気がした。何かが起こった。神は両目を見開く。リンのなんとなく全体を見つつ核心をつく知覚とは違って、すべてを覗き見る圧倒的強者と相対したようなものだった。私がどう抵抗しても知ってることも知らないことも抜き取られる感覚……。
〔なんだ〕
その一言で空気が弛緩する。さっきまでは私に敵意を滲ませていたが、無邪気に笑うのだ。強者が弱者の装備を見て、これじゃオレを倒せないと確信したような表情に近い。
〔知っただけか〕
私への見下しを頭がやっと理解する。
「どういう意味よ」
〔気を悪くしたなら謝る。なんかされたんじゃないかって疑っちまってな。動機が分かったから安心した〕
こうやって、私の抵抗できない範疇で物事が進んでいくんだから…溜まったもんじゃない。
アピスはグルバンの記憶を所持していた。オレたちがここにくるのも分かっていただろう。しかし、泣きじゃくるグルバン以外に目に見えた異常はない。考えるのをやめるな…。
<オレがヤツだったらどうする……?リンを殺す?いや、メリットが思いつかないし、何と言っても、それ以上にその場を活用しそう。リンを虐めてオレらと交渉?何を求めている?国王宣言などを見るにやはり、権力と異能の独占か?そう仮定すると、どうやって交渉する?……>
長考で分かったことは、特にない。嫌な予感が未だに拭えない…。
〔グルバン。オレはまだ嫌な予感が拭えない…。リンの世界にログインしてくる〕
「………あぁ、そっちは頼む。だが、わしはもしもこの部屋に不審者が来ても」
〔それには考えがある〕
――sideメハ
私は思いつめていた。
<これでいいのかな?いや、これしかない。リンを守らなきゃ>
「メハ…大丈夫?」
「…なんでもないよ。さぁこっちだよ」
リンに心配された。余裕を持たなきゃ。ここなら安全だから、大事なのは、あいつが来てから、そして、リンにアレさえこなければ……。
「着いたよ」
実際ここは私の世界だから、私たちは動かなくても目の前に誕生させることもできるのだが、リンはこっちの方が好きだから。
「わーー!」
棒読みに聞こえるその声は、歓喜と興奮を滲ませているのを知っていた。リンは比較的何も感じはしないが、心が揺さぶられないわけではない。誕生日限定でリンの好きなものを集結させ、私なりにアレンジしたテーマパークを作っていた。これならリンも気に入ってくれると確信して……。
「メハ。一緒いこ」
生きたいのは山々だったが、さっそく来客だ…。
「あぁ…っと、ごめんねリン。ちょっと先に遊ぶ順番決めてて」
「…わかった」
悲し気なリンに背を向ける。
「すぐ戻るから」
「うん」
今思えば、あの時の私はいっぱいいっぱいだったんだと思う。リンの含みのありそうな「うん」の裏を考えることすらできなかった。
私は侵入してきたあいつを睨む。
「帰って」
〔ったく、開口一番がそれかよ〕
「あんたが神だかなんだかしらないけど、要は怪物じゃない。自分のことしか見えなくて、傲慢で、最強の生物。それが人の姿して、なんて言おうが心配して当然でしょ!!」
〔危害を加える気がないのはわかるだろ?〕
「わからないじゃない。龍ならちょっとくしゃみをしただけで、呼吸をするだけで、リンが死ぬかもしれないでしょ?」
〔リンが見える霊は友達でもいいのに、神はだめなのか?〕
「霊はリンに関渉できない!」
〔悪霊やポルターガイストみたくおとなしくない奴が来たらどうする気だ?〕
「リンが本質を見破るから害をなす前に逃げればいいでしょ!」
〔リンはオレを危険視したか?〕
「……」
一番痛いところを突かれた。リンを信じていればいるほど、こいつは限りなく白になる。
「…リンが見えてる世界と私が見てる世界は違う。あの子はあんたと組んで死ぬ未来を見越していたとしても首を縦に振る!そうでしょ!?」
〔…何か、あったのか?〕
私はそれが「オレを疑う証拠があるのか?」とも「君は何かされたのか?」にも聞こえた。
「私はっ!」
寒気がした。何かが起こった。神は両目を見開く。リンのなんとなく全体を見つつ核心をつく知覚とは違って、すべてを覗き見る圧倒的強者と相対したようなものだった。私がどう抵抗しても知ってることも知らないことも抜き取られる感覚……。
〔なんだ〕
その一言で空気が弛緩する。さっきまでは私に敵意を滲ませていたが、無邪気に笑うのだ。強者が弱者の装備を見て、これじゃオレを倒せないと確信したような表情に近い。
〔知っただけか〕
私への見下しを頭がやっと理解する。
「どういう意味よ」
〔気を悪くしたなら謝る。なんかされたんじゃないかって疑っちまってな。動機が分かったから安心した〕
こうやって、私の抵抗できない範疇で物事が進んでいくんだから…溜まったもんじゃない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる