解放

かひけつ

文字の大きさ
29 / 136
第3章 ~よう

確かめ③

しおりを挟む
――sideメハ
私が作った、ほぼ意味がないカード。勝つカードとは言えない。ただのカードゲームだと飽きてしまいかねないからこそ、加えたカード。

 代り映えのある毎日を送らせたい。

そんな想いから作られた結果、その日によって出る効果が違う。そのレベルで細分化されているのだ。フィールドから電脳世界までの色を変化させる。色の変化だけで1億はある。風景と香りを混ぜて5億。音楽を使ったものが3億の確率で。他にも罰ゲーム系4000万、執事さんにちょっとしたイタズラをする600万と、兎に角戦う気がないのだ。そんな中、唯一、魔法カードの効果らしい効果がある。約10億分の1の確率で追加2ターン得ることができる。

 <一回しか出たことないけどね>

初めて、[the best]をリンとやった時に、よりにもよってソレが出て「しまった」と心の底から思った。

《フーッ》

僅かに口角を上げて、ほんの少し鼻息を荒くした。ただそれだけだった。聞き逃してしまってもおかしくないような微妙な変化で、当の本人もケロッとしてるから、困ったものだった。あの時、私は初めて涙を流した。認めて貰えた気がしたからだろう。それからなんだかんだで今日まで[the best]を気に入ってくれたから本当に良かった。

 ……その目が出た。

 抽選結果:2ターン追加

 「出ちゃった……」

わいわい楽しめたら良かっただけの私にとって予想外だった。確率としてはあっても感覚的にないに等しかったから、油断していたという感覚に近い。

 「続けて」

リンはまるで想定してたかのように動じない。AI人間リンのリアクションが逆に思えてしまうが、仕方ない。これがリンの個性だ。次のターンになり、カードを引く。眉がぴくっと動いてしまう。引いたのは魔法カード[スパイの鎖]一筋縄ではいかないカードである。

 「…[戦車]、進軍」

手札を見る。三枚だ。[スパイの鎖]と[記憶喪失]、[科学兵器]全て魔法カード。魔法は発動で1ターンに一回だけ。相手のターン中にも発動できるが、リンにその様子はない。

 <先に仕込もう…>

 「…魔法[敵に塩を送る・・・・・・]で[塵も積もれば]を敵の前衛に」

発動した魔法カードは[スパイの鎖]。プレイヤーの宣言とカードが一致しないことがある。これはわざと、だ。表向きは相手に兵をあげているが、スパイを送り込みたいからこその嘘である。常に相手がどこでどんな嘘をついているか見極めなければならない。

 「次のターン行くね…」

だが、まだ終わらない。カードを引き、攻撃を仕掛ける。そのことだけを考えていた。このデッキの肝となる[怨霊]が来てしまったのだ。

 「……」

普通なら喜んでいた。いや、タイミングは最高だ。良すぎる。

 「…[戦車]で[巫女]破壊」

[戦車]の現在の位置は自陣の前衛。だが、届いてしまう。相手の後衛まで。

 「[戦場での慈愛慈愛]」

[巫女]が墓地に送られると複数の効果から一つを選び発動する。魔法の無効化、味方デバフ無効、国王暗殺の伏兵。

 pig退場効果があるから、罪悪感が少なくていい。

頬が緩む。リンは勝負事でブースカ拗ねることなんてない。分かっていても、除去は辛い。折角の好きで強いカードだと尚更。どことなく漂う嫌な空気の中にお気に入りの蕾を見つけたようなものだ――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...