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第3章 ~よう
きめ⑦
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☆sideシン
ルコの感傷的な空気を察して切り出す。
〔…オレらも禍根を残したくないから、全会一致でことをすすめたい。君の懸念点を教えて欲しい〕
「強く賛成しないだけで反対ではない。ただそれだけ。懸念点を明確にするなら、その……」
ルコは俯く。酷く言いずらそうにしている。沈黙となるが、それは穏やかで聞く姿勢を皆がとっていた。ルコは渋々続きを呟く。
「リン。あなたはね」
サァーー
********************
風が吹いた。感覚が研ぎ澄まされたかのように視界の色が消える。厳密に言えば、白と黒だけの世界を垣間見る。そして、オレは直感的に察する。これは、リンのいつも見る景色だったのだと。ルコは静かに顔を上げると、ケイトの方を見る。重々しく口を開く。
「…お母さんと」
色がつく。殺風景な景色が一変し、太陽のような笑顔や暗く自分を責めるといったケイトの様子がルコの背後にホログラムのように表出する。暖色系と寒色系のそれぞれはケイトの人格を擬似的に形成しているように感じた。
「……お父さんが」
またしても、ルコの背後からソレを感じ取る。冷たい印象を与えるグルバンのホログラムが複数パターン現れた後、リン出産時の家族の顔や自分の勘違いに失望しかけた様子、リンがいた部屋で殿を務める様……。
********************
「身体をくれたんだよ。…だから、その、効率を考えてその身を捨てるのはどうしても引っかかっちゃうだけだよ」
リンはルコに抱き着くように手を広げる。当然霊体に触れることはないのだが、誰が見てもルコが抱き着いたと言える状態だった。
「…温かい」
「リンちゃん?」
ルコは戸惑いながらそう言った。
「心配、嬉しいよ。ありがとぅ」
「……」
この場にいた皆が、鋭い胸の痛みに襲われる。同じことを感じ、思っているはずだ。
<こんなに他者を思い、辛い人生を送ったきた少女がさらに試練を受けねばならないのだろうか?そうせざるを得ない世界もおかしいし、これまでの人生もハッキリ言って恵まれていない。親とはほぼ離れ離れ、体温を感じれるヒトとの関りはないに等しい>
ルコが、ケイトが、霊達が、涙を堪えていた。妖精がルコとリンの周りに集まり、より温かい空間を作り出す。
オレは……。オレは何故か感傷に浸っていた。
<オレは神だったハズだ。そんな過去も、異能も、この子を幸せにできるか断言できない。>
不安になってしまった。
<これら全てが前座で、ただただ絶望に堕とす為の一生なのではと……。オレみたいな中途半端な神じゃなくて、世界を完璧にコントロールできる本物の神がいて、そいつがアピスみたいなクソばっか優遇してるんじゃないかと思ってしまう>
馬鹿げたことを考えてしまうほどに運命というのは……。
「そんなことないよ」
この世界と自分に嫌気が差してきた中で凛とした声が響く。声の主は、リンだ。
「…えっと、どうかしたの?」
リンが急にオレを見つめ始めたので、ルコはオロオロする。
〔オレが軽くネガティブな想像をしてただけだよ〕
「大丈夫」
リンは平坦な声でそう応える。リンと関わったものなら感じ取れる自信がそこにはあった。が、そこにこそ不安があった。
〔…〕
何も言わないオレに重ねてリンは発言する。
「…任せて、信じて」
オレは目を閉じる仕草を取る。リンはいわゆる中二病に近い気質がある。決定的な違いは本当に世界一の能力があるのかないのかだと思う。リンは気づいていない弱点、いや、わざと見過ごしているものがあるとオレは感じ取っていた。が、思考にしては読まれてしまうので、この感情を抽象化した状態でリンには見せる。このこと自体をケイトが経験させたいという目的の妨げとなりかねない。
「……?」
リンも流石に、疑問に思ったようだ。が、表情を和らげる。
「わたしのため…でしょ?」
息を飲んだ。すべて分かっているのではないかと錯覚してしまうほどの重みを感じる。
「なにが起きても、大丈夫だから」
絶句してしまう。
<この齢で、なんて思考をしているんだよ…>
リンの最大の強みはその理性である。
「リンちゃん、始めるよ」
「これが電波塔の図面、そして、大まかにわかっている仕掛けがあってのぅ」
「うん」
ケイトとリン、ルコや他の霊が作戦会議を始める。オレは独り思わずにはいられなかった。
<君の弱点は……>
綿密な作戦会議の後、オレはリンの身体を改造する。特に拒絶反応が出ることなく順調にことが進む。
オレは眼を覚ましたリンを覗き込む。静かに起き上がり、眠たげな様子は一切見せず、呟く。
「行くよ」
静かな闘志を持つこの子をオレは利用してしまうことになる。
〔………〕
後ろめたさからオレは何も言えずにその背中を追いかける。
ルコの感傷的な空気を察して切り出す。
〔…オレらも禍根を残したくないから、全会一致でことをすすめたい。君の懸念点を教えて欲しい〕
「強く賛成しないだけで反対ではない。ただそれだけ。懸念点を明確にするなら、その……」
ルコは俯く。酷く言いずらそうにしている。沈黙となるが、それは穏やかで聞く姿勢を皆がとっていた。ルコは渋々続きを呟く。
「リン。あなたはね」
サァーー
********************
風が吹いた。感覚が研ぎ澄まされたかのように視界の色が消える。厳密に言えば、白と黒だけの世界を垣間見る。そして、オレは直感的に察する。これは、リンのいつも見る景色だったのだと。ルコは静かに顔を上げると、ケイトの方を見る。重々しく口を開く。
「…お母さんと」
色がつく。殺風景な景色が一変し、太陽のような笑顔や暗く自分を責めるといったケイトの様子がルコの背後にホログラムのように表出する。暖色系と寒色系のそれぞれはケイトの人格を擬似的に形成しているように感じた。
「……お父さんが」
またしても、ルコの背後からソレを感じ取る。冷たい印象を与えるグルバンのホログラムが複数パターン現れた後、リン出産時の家族の顔や自分の勘違いに失望しかけた様子、リンがいた部屋で殿を務める様……。
********************
「身体をくれたんだよ。…だから、その、効率を考えてその身を捨てるのはどうしても引っかかっちゃうだけだよ」
リンはルコに抱き着くように手を広げる。当然霊体に触れることはないのだが、誰が見てもルコが抱き着いたと言える状態だった。
「…温かい」
「リンちゃん?」
ルコは戸惑いながらそう言った。
「心配、嬉しいよ。ありがとぅ」
「……」
この場にいた皆が、鋭い胸の痛みに襲われる。同じことを感じ、思っているはずだ。
<こんなに他者を思い、辛い人生を送ったきた少女がさらに試練を受けねばならないのだろうか?そうせざるを得ない世界もおかしいし、これまでの人生もハッキリ言って恵まれていない。親とはほぼ離れ離れ、体温を感じれるヒトとの関りはないに等しい>
ルコが、ケイトが、霊達が、涙を堪えていた。妖精がルコとリンの周りに集まり、より温かい空間を作り出す。
オレは……。オレは何故か感傷に浸っていた。
<オレは神だったハズだ。そんな過去も、異能も、この子を幸せにできるか断言できない。>
不安になってしまった。
<これら全てが前座で、ただただ絶望に堕とす為の一生なのではと……。オレみたいな中途半端な神じゃなくて、世界を完璧にコントロールできる本物の神がいて、そいつがアピスみたいなクソばっか優遇してるんじゃないかと思ってしまう>
馬鹿げたことを考えてしまうほどに運命というのは……。
「そんなことないよ」
この世界と自分に嫌気が差してきた中で凛とした声が響く。声の主は、リンだ。
「…えっと、どうかしたの?」
リンが急にオレを見つめ始めたので、ルコはオロオロする。
〔オレが軽くネガティブな想像をしてただけだよ〕
「大丈夫」
リンは平坦な声でそう応える。リンと関わったものなら感じ取れる自信がそこにはあった。が、そこにこそ不安があった。
〔…〕
何も言わないオレに重ねてリンは発言する。
「…任せて、信じて」
オレは目を閉じる仕草を取る。リンはいわゆる中二病に近い気質がある。決定的な違いは本当に世界一の能力があるのかないのかだと思う。リンは気づいていない弱点、いや、わざと見過ごしているものがあるとオレは感じ取っていた。が、思考にしては読まれてしまうので、この感情を抽象化した状態でリンには見せる。このこと自体をケイトが経験させたいという目的の妨げとなりかねない。
「……?」
リンも流石に、疑問に思ったようだ。が、表情を和らげる。
「わたしのため…でしょ?」
息を飲んだ。すべて分かっているのではないかと錯覚してしまうほどの重みを感じる。
「なにが起きても、大丈夫だから」
絶句してしまう。
<この齢で、なんて思考をしているんだよ…>
リンの最大の強みはその理性である。
「リンちゃん、始めるよ」
「これが電波塔の図面、そして、大まかにわかっている仕掛けがあってのぅ」
「うん」
ケイトとリン、ルコや他の霊が作戦会議を始める。オレは独り思わずにはいられなかった。
<君の弱点は……>
綿密な作戦会議の後、オレはリンの身体を改造する。特に拒絶反応が出ることなく順調にことが進む。
オレは眼を覚ましたリンを覗き込む。静かに起き上がり、眠たげな様子は一切見せず、呟く。
「行くよ」
静かな闘志を持つこの子をオレは利用してしまうことになる。
〔………〕
後ろめたさからオレは何も言えずにその背中を追いかける。
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