64 / 136
第3章 ~よう
塵モ⑩
しおりを挟む
――sideアピス
怪しいところは色々あった。オレは対戦相手を見つめながら考察を深める。
<そもそもの行動原理は「メハを救いたい」だが、それのために簡単に他の人や自分の命がどうなってもいいかっていうのは、割り切れないのが普通だ。ネジがとんだ『カーセ家』なら異常こそ普通とも言えてくるが、人が死ぬのを初めて目にして動揺しないだろうか?>
「s」
「魔法[SAD]。[神童]を登場前に破壊」
「…」
相手が登場させようとしていた[神童]を潰す。読めていた行動である。
<ゲームで予習していようが、現場なれした刑事でも眉の一つは歪むだろう。なにより凄惨でフレッシュな死体だ微動だにしないのがおかしい>
指をトントンと頭につつきながら考える。
<リンが死体を見えていない?>
少々飛躍した推理が浮かび上がる。
〈いや、目で見えなくても高すぎる空間把握能力ゆえに常人以上に鮮明に視える〉〈見ないように異能を?〉〈俺の従えている妖精は異能は使っていないと言っている〉〈リンの反応を何らかの方法で殺してる?〉〈異能の線は薄い。もし直視を免れても俺が虐殺しているのはわかっていただろうし、あれ以上殺していてもおかしくない状態で止めすらしないのは、明らかに異常だった〉
「もう終わりか?」
「……」
あと、リンの手札は4枚。[戦車]や設置と言ったコストが掛かるやつは出せないし、魔法は一度使っている。まだ、終わりじゃないな。
<プレイに違和感がある。速攻で倒そうと思っていても不思議ではない状況で、そもそもこれまでのお遊びデッキ使うなんてあまりにもナンセンスだろ。祖国を守るための戦争で水鉄砲を持っていくような場違いさはある>
「……[塵も積もれば]」
なんてことない、[塵も積もれば]。ナニがしたいんだ…??
<目的が別にあるのだろうか?別動隊がいるとか?囮か?>
「[決意の魔法]」
<いやいや、リアルでの活動時間が短いから友達が外にいるとは思えねぇ>
なにかに掠る感覚がした。が、それ以上の衝撃をリンから受ける。
「[啓蒙]」
「!!」
<この盤面からの起死回生。いや、待て待て待て>
「おい、おかしいだろ?初めに渡したデッキにコレはなかったぜ」
完全に暗記しているデッキだった。だからおかしいと気づいた。だが、ゲームシステムからの反応は、
[開始のデッキ認識時からありました。あとからの不正はありません]
「か~~~~っ。最近のガキはこうも擦れちまったもんなんか!悲しいものだねぇ。人の善意を無下にするは、嘘は吐くは、あーー嫌いになりそうだ」
自然な嫌味を放つ。結論。リンはゲームを開始する直前で、デッキを編集していた。
「……」
リンは何も言わなかった。その背後からは、過保護なやつの圧を感じる。
「あーー冷たい」
そんな軽口でさえも場の圧が強まる。
<つくづくバカだな>
そう見下しながらも現状を整理する。
俺の山札は元々40枚。散々引いて残りの山札は11枚
開始時のデッキ枚数を参照して、ダイスで出た割合で減らす。最高が6割だが、[確証と嘲笑を呼ぶ愉悦]で効果は半減。そして、山札がゼロになったら、負ける。次の俺のターンのドローも含めると、10枚落とせばリンの勝ち。
ダイスで、5か6で敗北
<3分の1か…>
よくここまで追い詰めたものだと敵ながらに感心する。だが、嗤う。
こちらは、10億分の1を勝ち得てるんだぞ?必勝法とは言えないだろ
どう見ても、苦肉の策。負けはしないことを確信しているから、尚、勝利の違和感を微かに覚える――
怪しいところは色々あった。オレは対戦相手を見つめながら考察を深める。
<そもそもの行動原理は「メハを救いたい」だが、それのために簡単に他の人や自分の命がどうなってもいいかっていうのは、割り切れないのが普通だ。ネジがとんだ『カーセ家』なら異常こそ普通とも言えてくるが、人が死ぬのを初めて目にして動揺しないだろうか?>
「s」
「魔法[SAD]。[神童]を登場前に破壊」
「…」
相手が登場させようとしていた[神童]を潰す。読めていた行動である。
<ゲームで予習していようが、現場なれした刑事でも眉の一つは歪むだろう。なにより凄惨でフレッシュな死体だ微動だにしないのがおかしい>
指をトントンと頭につつきながら考える。
<リンが死体を見えていない?>
少々飛躍した推理が浮かび上がる。
〈いや、目で見えなくても高すぎる空間把握能力ゆえに常人以上に鮮明に視える〉〈見ないように異能を?〉〈俺の従えている妖精は異能は使っていないと言っている〉〈リンの反応を何らかの方法で殺してる?〉〈異能の線は薄い。もし直視を免れても俺が虐殺しているのはわかっていただろうし、あれ以上殺していてもおかしくない状態で止めすらしないのは、明らかに異常だった〉
「もう終わりか?」
「……」
あと、リンの手札は4枚。[戦車]や設置と言ったコストが掛かるやつは出せないし、魔法は一度使っている。まだ、終わりじゃないな。
<プレイに違和感がある。速攻で倒そうと思っていても不思議ではない状況で、そもそもこれまでのお遊びデッキ使うなんてあまりにもナンセンスだろ。祖国を守るための戦争で水鉄砲を持っていくような場違いさはある>
「……[塵も積もれば]」
なんてことない、[塵も積もれば]。ナニがしたいんだ…??
<目的が別にあるのだろうか?別動隊がいるとか?囮か?>
「[決意の魔法]」
<いやいや、リアルでの活動時間が短いから友達が外にいるとは思えねぇ>
なにかに掠る感覚がした。が、それ以上の衝撃をリンから受ける。
「[啓蒙]」
「!!」
<この盤面からの起死回生。いや、待て待て待て>
「おい、おかしいだろ?初めに渡したデッキにコレはなかったぜ」
完全に暗記しているデッキだった。だからおかしいと気づいた。だが、ゲームシステムからの反応は、
[開始のデッキ認識時からありました。あとからの不正はありません]
「か~~~~っ。最近のガキはこうも擦れちまったもんなんか!悲しいものだねぇ。人の善意を無下にするは、嘘は吐くは、あーー嫌いになりそうだ」
自然な嫌味を放つ。結論。リンはゲームを開始する直前で、デッキを編集していた。
「……」
リンは何も言わなかった。その背後からは、過保護なやつの圧を感じる。
「あーー冷たい」
そんな軽口でさえも場の圧が強まる。
<つくづくバカだな>
そう見下しながらも現状を整理する。
俺の山札は元々40枚。散々引いて残りの山札は11枚
開始時のデッキ枚数を参照して、ダイスで出た割合で減らす。最高が6割だが、[確証と嘲笑を呼ぶ愉悦]で効果は半減。そして、山札がゼロになったら、負ける。次の俺のターンのドローも含めると、10枚落とせばリンの勝ち。
ダイスで、5か6で敗北
<3分の1か…>
よくここまで追い詰めたものだと敵ながらに感心する。だが、嗤う。
こちらは、10億分の1を勝ち得てるんだぞ?必勝法とは言えないだろ
どう見ても、苦肉の策。負けはしないことを確信しているから、尚、勝利の違和感を微かに覚える――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる