解放

第3章 ～よう

■⑤

《sideメハ
思い出したと言いたげな顔でアピスが口を開く。

　「ここで教えてやるよ。ケイトが死んだのも、カプセルができたのも、グルバンの王の座も、リンの目も全部俺のおかげなんだぜww」

スーーーｯ

私は感情が熱を失っていくことを客観視しながら、アピスのキメ顔を目に焼き付ける。

　「『遺伝性の難病』？笑えるよな～～～。俺が毒仕込んだだけなのにwww」

イラァｧ……!!!

これを見るのは、二度目。だから、ずっと、向き合える。まだ冷静だ、私は。

　「カプセルの普及でさ、子供と大人の精神的、肉体的距離が離れるのは明白だろ。管理しやすくて助かったよ。ど の バ カ も。リンが元気だと、グルバンの暴走を止めかねない。殺そうにも上手く避けてきやがるから、ケイトのための毒でリンまで弱体化できたのは大きかった。まぁ、病気という名目で『安静に衰弱して』くれたのも、グルバンの面会も少なくできたし、いいことづくめさ。ここまで言えば俺が何を言いたいか分かるよな？」

　[みんな俺の思った通りに動いてくれて、あ り が と～～～～～ｗ]

　「最っ高に笑えるよなｗ。自分で、最善を尽くした気でいるんだぜ？？？俺が描いた未来とも知らずによぉｗｗｗ」

腹を抱えて嗤うアピスが自然に画面外へと消える。初めて見た時、に理解していいなかったことが色々見つかる。

　「⑥、俺がこの話を聞かれるかもしれないやつにいった理由。そして、施設で実際に『神子』に歩み寄った理由。それは……」

ゆっくりと、画面の中央に収まる。

　「負ける気がしなかったそれだけだ。だってよーーー、直近の二戦が、こ れ だぜｗｗ」

要点だけまとめた小説のような、映画のような二人の主人公男女の一生。最後の神子と『ケイト様』の器に選ばれたルコ。どちらの功績も他ではなし得ないことをしている。

　「リンの闘争心が煽れたとして、才能を限界まで生かしたとして、俺に勝てるのかなwwwま、せいぜい頑張ってくれよ」

趣味の悪い動画はそこで終わる。あまりに濃い。ゆっくり咀嚼することで、やっと理解できた。理解すれば、するほど殺意を超えた破壊衝動が爆発しそうになる。ただ、冷静な意見が内から出る。

　これに勝てるものなど存在しうるのか

そういうわだかまりを残して、この話に続きはないのが、本当に救いようがない》