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第3章 ~よう
■⑥
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《sideメハ
意味が分からない。分からなかった。
<なんで、あの昔からここまで狡猾に成り上がれるの…???>
実績、実力、精神、そして、周りを騙しきる仕込み、その全てが人外クラスだった。こんなに好き勝手暴れて『善良な天才研究員』というのが世間の評価だ。さも当然かのようにヤバいことを並べられて混乱するに決まっていた。そして、すぐ至る考え…。
[リンが次の被害者になってしまう]
<それだけは………っ……!!>
熱くなる頭を冷まさせる。熱くなってはいけないを知っていたからのクールダウン。
<神に怒りの矛先を向けるのは、責任転嫁だ。私は無意識のうちにアピスに抵抗するのを放棄していたんだ>
自分の弱さを改めて実感する。
<…っ!!>
アバターの瞼が開かなくなって瞼の裏か、視覚情報不良による漆黒なのかも知る術がない。見えるのはただの真っ黒。そんな中で、光の粒子がどこからともなく現れ、リンの姿を形取る。
<届く…わけないか……>
虚像だと分かっていた。だが、触れたくなるのは仕方なかった。手を伸ばす動作をしたつもりだったが、手の座標はおろか、信用できるものが何一つない。
<……好きなんだよ…最初から……>
恋愛的な愛ではない。友愛や家族愛とかに似た親愛だと思う。純白で儚げに発光するリンの虚像は、私にとって最期の希望。
<リンを見れるのもこれで最後なのかな……>
孤独感を強く煽られ、連鎖的に感情が爆発する。孤独、迷い、死、恐怖、光、絶望、悲哀、虚無、徒労、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
<だけど……>
強く自分を保つために自身を鼓舞するマインドに切り替える。光明はどう見ても僅かだった。
諦めたくない
その一心でどこかも分からないこの場所で足掻く。なにもしなければ、一瞬で時間は過ぎ去ると分かっていた。
<リンのためを思えば、ここで虚無になってることは無意味!!きっとアピスなら、ただただ私を壊すだけじゃない。利用する。なら今、対策を打たないとリンに迷惑をかけてしまう>
思案する。情報をかき集め、逆算していく。そこで発覚する謎。
<あれ…?なんで私…考えられるの……?>
私のプログラムはとうに壊れてしまったはずなのに、なぜ考えられるのか。プログラムを支配したアピスがどうして記憶改竄や性格の編集などをいまだにしてこないのか。
キャパオーバー
分からないことが多すぎることを否が応でも分かってしまう。そんなこと分かっていた、と気を引き締める。
<大切なあの子のために、できる範囲で抵抗するんだ…………あれ……?>
…………………大事な……あの子……………??
ぶ わ ぁ
<……リン…リンだ…!>〈ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ〉<リン。うん…リン……>〈私は誰?誰って何?〉<…リン……リン……>〈思い出を…消さないで………〉
あぁ…始まった………
記憶領域が内側から剝がされる。私の核をアピスの掌で転がされてるような感覚。
<リン…リン…リン…リン…リン…リン…リン…>
必死に唱え続ける。できる抵抗なんてこれくらいでしかなくて、こんなことすら長く続くか怪しいのがまた恐ろしくて堪らない。
震えが止まらない………
自分では突破できない絶対的な壁を前に、張りぼての勇気は呆気なく打ちひしがれる。思考は、やがて……》
意味が分からない。分からなかった。
<なんで、あの昔からここまで狡猾に成り上がれるの…???>
実績、実力、精神、そして、周りを騙しきる仕込み、その全てが人外クラスだった。こんなに好き勝手暴れて『善良な天才研究員』というのが世間の評価だ。さも当然かのようにヤバいことを並べられて混乱するに決まっていた。そして、すぐ至る考え…。
[リンが次の被害者になってしまう]
<それだけは………っ……!!>
熱くなる頭を冷まさせる。熱くなってはいけないを知っていたからのクールダウン。
<神に怒りの矛先を向けるのは、責任転嫁だ。私は無意識のうちにアピスに抵抗するのを放棄していたんだ>
自分の弱さを改めて実感する。
<…っ!!>
アバターの瞼が開かなくなって瞼の裏か、視覚情報不良による漆黒なのかも知る術がない。見えるのはただの真っ黒。そんな中で、光の粒子がどこからともなく現れ、リンの姿を形取る。
<届く…わけないか……>
虚像だと分かっていた。だが、触れたくなるのは仕方なかった。手を伸ばす動作をしたつもりだったが、手の座標はおろか、信用できるものが何一つない。
<……好きなんだよ…最初から……>
恋愛的な愛ではない。友愛や家族愛とかに似た親愛だと思う。純白で儚げに発光するリンの虚像は、私にとって最期の希望。
<リンを見れるのもこれで最後なのかな……>
孤独感を強く煽られ、連鎖的に感情が爆発する。孤独、迷い、死、恐怖、光、絶望、悲哀、虚無、徒労、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
<だけど……>
強く自分を保つために自身を鼓舞するマインドに切り替える。光明はどう見ても僅かだった。
諦めたくない
その一心でどこかも分からないこの場所で足掻く。なにもしなければ、一瞬で時間は過ぎ去ると分かっていた。
<リンのためを思えば、ここで虚無になってることは無意味!!きっとアピスなら、ただただ私を壊すだけじゃない。利用する。なら今、対策を打たないとリンに迷惑をかけてしまう>
思案する。情報をかき集め、逆算していく。そこで発覚する謎。
<あれ…?なんで私…考えられるの……?>
私のプログラムはとうに壊れてしまったはずなのに、なぜ考えられるのか。プログラムを支配したアピスがどうして記憶改竄や性格の編集などをいまだにしてこないのか。
キャパオーバー
分からないことが多すぎることを否が応でも分かってしまう。そんなこと分かっていた、と気を引き締める。
<大切なあの子のために、できる範囲で抵抗するんだ…………あれ……?>
…………………大事な……あの子……………??
ぶ わ ぁ
<……リン…リンだ…!>〈ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ〉<リン。うん…リン……>〈私は誰?誰って何?〉<…リン……リン……>〈思い出を…消さないで………〉
あぁ…始まった………
記憶領域が内側から剝がされる。私の核をアピスの掌で転がされてるような感覚。
<リン…リン…リン…リン…リン…リン…リン…>
必死に唱え続ける。できる抵抗なんてこれくらいでしかなくて、こんなことすら長く続くか怪しいのがまた恐ろしくて堪らない。
震えが止まらない………
自分では突破できない絶対的な壁を前に、張りぼての勇気は呆気なく打ちひしがれる。思考は、やがて……》
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