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第3章 ~よう
心がか⑦
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《sideルピカ
階段は静まり返っていた。リン様がいなくなって、指示は待っておく、のみ。残されたのも、失意の底の『エンターテイナー』と私だけ。付いて来た理由が、肉壁の一つでもいいから役に立ちたい。
<それなのに、頭脳は勝てるわけもなく、メンタルケアができたわけでもない、戦力外通告が一番。……一番>
染みる。何のために来たのか分からなくなる。
「……お前は良いよな」
「はぁ?!」
人が真剣に悩んでる時に横槍入れられたら、キレたくもなる。人形のように小さくなった『エンターテイナー』はこちらを気にせず続ける。
「僕は、楽しいと思っていたことも、七変化も、テレポートも、虚構だった」
眼が虚ろで、声も生気がない、さすがに、無視するのも可哀想だと思ってしまう。
「…正しいと思うことを、したらいいと思う」
自分も強い意志があったわけではなく、カーセ家があったからそれに恥じない生き方をしたいんだ。彼らの進む道に付き添うことが最善。それが、私の原点なんだ。
「フッ…はは…」
「…失礼な」
「あー、悪い。バカにしてるわけじゃない…。羨ましいだけだよ」
「…」
きっと深い意味はないのだろう。だが、私の知らない情報を知っているだけに、薄気味悪さを覚える。
「…リンは…これを見せたかったのかな…」
『エンターテイナー』はリン様と『パーフェクトボディー』の戦闘を『メガネ』越しに見ている。ちゃんとかけるわけでもなく、モダンとも先セルとも呼ばれる部位を人差し指と中指で挟んで揺らしている。
「……」
言いたいことがないわけではないが、仕方なく黙々と『メガネ』をかける。リン様の戦闘はとても割り込めるレベルじゃなかった。夢をずっとみていて、ふと現実に直面したような…。
「…くそっ……」
目頭が熱くなる。無力感が身を包む。
行きたいけど、行けない……!!
行っても誰も得しない。
<クソ……!!>
「……ッ気付かないフリしてんのか?…」
「!!!」
それは小声だった。ポツリと零れた独り言は無視できない深みがあった。
「何が言いたい…!!」
「…ごめん、つい。いや、本気で気付かないのか?」
顔を上げてそっぽを向いたかと思うと、向き直る。ぷらぷらと揺らしていた眼鏡をそっとしまう。冗談で言っているわけじゃないことが伝わってくるが、なんのことか思い当たらない。
「…あ…」
いや、引っかかるところが出てくる。小さな疑問。
ここの拠点の内部を知っているって………私は何をしていた??
ゴクリ……
「潜伏することを心に決めて…ずっと、機を窺って」
「へーー、ここに入った時の記憶は?」
「それは」
《ば、場所なら知ってます…》
〈あれ…?どうやってここに潜入した?〉〈なんで案内できると意気込んだ?〉
〈信頼できる友人から警官の仕事にねじ込んでもらって…〉〈そんな親友いたか?〉
〈記憶の説明がつかないのはいつからだ?〉〈わかんない…〉
「なんで分かんないだよ…!なんで…なんで…」
「お前が…裏切り者…『不義』だから」
ゾクッ....!!!!!
「証拠でもあんのか!?ふざけるなよ!!私はずっと、私だ!」
全身が沸騰するように熱い。視界が滲む。証拠なんて…出てきてほしくない。聞きたくない。
「下の階は4つの部屋がある…。『パーフェクトボディー』、『人間的合理性』、『不死』、そして、『真霊』の部屋、だ」
「はぁはぁはぁ…」
4人
拍動が速くなる。
「上の階の『ジャングル』だけじゃない…。『ジャングル』と『工場』がどっちも半円状で、円形の階層だ…。『エンジニア』と『オリジナル』は、よくここにいたな…」
<知っている…>
6人
息が詰まる。
「知っての通り最下層が…まぁ『最強』で、『理を司る神の申し子』は施設、『エンターテイナー』はフリー…。これでも、分かんないか?」
9人
『ネームド』は10人。残る一人は…。
「分かんないじゃないか…。そんな部屋割り聞かされたって…全然…証明になってない…」
分かっている。思い出した…。『エンターテイナー』が急に記憶が増えたのもこんな感覚だったのだろう。嘘だと思いたいが、急に記憶が湧き上がる。
<私が…目覚めたのは…『工場』だ……>
確信に近い、記憶さえも信じたくない。信じられない。
「…『ジャングル』に来る前の階段…扉を開けた時、リンでさえ僅かに顔を顰めた…。それはアピスの細胞を細分化した…『アピスエアロゾル』が充満しているからだ…」
なんだそれは?となると同時に、嫌な予感しかしない。
「僕たちはそれを感じない…。だって、アピスだから」
「そんなの勝手にお前が言ってるだけかm」
「じゃあなんで神が見えた。『霊』とかも多少見えてただろ?」
<……は??>
「お前がただの人間なら、視えるもんじゃない。僕らは…埋め込まれたじゃないか。『霊』を視るために」
「………………」
知りたくない事実は…もう否定できないとこまで来ていた》
階段は静まり返っていた。リン様がいなくなって、指示は待っておく、のみ。残されたのも、失意の底の『エンターテイナー』と私だけ。付いて来た理由が、肉壁の一つでもいいから役に立ちたい。
<それなのに、頭脳は勝てるわけもなく、メンタルケアができたわけでもない、戦力外通告が一番。……一番>
染みる。何のために来たのか分からなくなる。
「……お前は良いよな」
「はぁ?!」
人が真剣に悩んでる時に横槍入れられたら、キレたくもなる。人形のように小さくなった『エンターテイナー』はこちらを気にせず続ける。
「僕は、楽しいと思っていたことも、七変化も、テレポートも、虚構だった」
眼が虚ろで、声も生気がない、さすがに、無視するのも可哀想だと思ってしまう。
「…正しいと思うことを、したらいいと思う」
自分も強い意志があったわけではなく、カーセ家があったからそれに恥じない生き方をしたいんだ。彼らの進む道に付き添うことが最善。それが、私の原点なんだ。
「フッ…はは…」
「…失礼な」
「あー、悪い。バカにしてるわけじゃない…。羨ましいだけだよ」
「…」
きっと深い意味はないのだろう。だが、私の知らない情報を知っているだけに、薄気味悪さを覚える。
「…リンは…これを見せたかったのかな…」
『エンターテイナー』はリン様と『パーフェクトボディー』の戦闘を『メガネ』越しに見ている。ちゃんとかけるわけでもなく、モダンとも先セルとも呼ばれる部位を人差し指と中指で挟んで揺らしている。
「……」
言いたいことがないわけではないが、仕方なく黙々と『メガネ』をかける。リン様の戦闘はとても割り込めるレベルじゃなかった。夢をずっとみていて、ふと現実に直面したような…。
「…くそっ……」
目頭が熱くなる。無力感が身を包む。
行きたいけど、行けない……!!
行っても誰も得しない。
<クソ……!!>
「……ッ気付かないフリしてんのか?…」
「!!!」
それは小声だった。ポツリと零れた独り言は無視できない深みがあった。
「何が言いたい…!!」
「…ごめん、つい。いや、本気で気付かないのか?」
顔を上げてそっぽを向いたかと思うと、向き直る。ぷらぷらと揺らしていた眼鏡をそっとしまう。冗談で言っているわけじゃないことが伝わってくるが、なんのことか思い当たらない。
「…あ…」
いや、引っかかるところが出てくる。小さな疑問。
ここの拠点の内部を知っているって………私は何をしていた??
ゴクリ……
「潜伏することを心に決めて…ずっと、機を窺って」
「へーー、ここに入った時の記憶は?」
「それは」
《ば、場所なら知ってます…》
〈あれ…?どうやってここに潜入した?〉〈なんで案内できると意気込んだ?〉
〈信頼できる友人から警官の仕事にねじ込んでもらって…〉〈そんな親友いたか?〉
〈記憶の説明がつかないのはいつからだ?〉〈わかんない…〉
「なんで分かんないだよ…!なんで…なんで…」
「お前が…裏切り者…『不義』だから」
ゾクッ....!!!!!
「証拠でもあんのか!?ふざけるなよ!!私はずっと、私だ!」
全身が沸騰するように熱い。視界が滲む。証拠なんて…出てきてほしくない。聞きたくない。
「下の階は4つの部屋がある…。『パーフェクトボディー』、『人間的合理性』、『不死』、そして、『真霊』の部屋、だ」
「はぁはぁはぁ…」
4人
拍動が速くなる。
「上の階の『ジャングル』だけじゃない…。『ジャングル』と『工場』がどっちも半円状で、円形の階層だ…。『エンジニア』と『オリジナル』は、よくここにいたな…」
<知っている…>
6人
息が詰まる。
「知っての通り最下層が…まぁ『最強』で、『理を司る神の申し子』は施設、『エンターテイナー』はフリー…。これでも、分かんないか?」
9人
『ネームド』は10人。残る一人は…。
「分かんないじゃないか…。そんな部屋割り聞かされたって…全然…証明になってない…」
分かっている。思い出した…。『エンターテイナー』が急に記憶が増えたのもこんな感覚だったのだろう。嘘だと思いたいが、急に記憶が湧き上がる。
<私が…目覚めたのは…『工場』だ……>
確信に近い、記憶さえも信じたくない。信じられない。
「…『ジャングル』に来る前の階段…扉を開けた時、リンでさえ僅かに顔を顰めた…。それはアピスの細胞を細分化した…『アピスエアロゾル』が充満しているからだ…」
なんだそれは?となると同時に、嫌な予感しかしない。
「僕たちはそれを感じない…。だって、アピスだから」
「そんなの勝手にお前が言ってるだけかm」
「じゃあなんで神が見えた。『霊』とかも多少見えてただろ?」
<……は??>
「お前がただの人間なら、視えるもんじゃない。僕らは…埋め込まれたじゃないか。『霊』を視るために」
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