解放

かひけつ

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第3章 ~よう

余談~あの日を続け~④

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《side???
幼い頃、ジャンケンに納得がいかなかった。

 三竦みってなんだ?

 パーに勝てるのにグーに負けるってなんだ?

って思っていた。思わずにはいられなかった。

 

そんな子供らしからぬ考えが払拭できなかったからだ。

 成長すると考えも変わる

三竦みとまで分かりやすい関係は、実際少ない…が、相性として優劣が付くことはよくあることだ。

ポタ…ポタ……

 「はぁ…はぁ…あの…そろそr…」

 「まだだ」

 相手が選択肢を同じ数持っていることなんて、ない。選択肢の多さは、強さに直結する

 「ガハッ……グゥ………ま…まだです…か…」

ボトトト……

 俺がやった

会長お偉いさんが薬に悶え苦しみながら、四つん這いになって『椅子役割』を全うする。どれくらいが限界か、どんな感情を抱いているか、をデータ化してる。忠義の指標になるからだ。

 選択肢がないやつはこうなる

もっと頭がよければ、もっと創造力があれば、もっと用心深ければ…

 こんな搾取されずに済んだだろうに

バタン!!!…ットン

 〈おっと…〉

 「ヒュー……ヒュー…スミマセン………スミマセン……」

 「お疲れ……娘さんは…ってことだな」

 「そ!!…それだけは…!!お願いしますお願いします!!」

 「なんだ。元気じゃないか」

 「…!!」

 「ま、

 「まってくだ…s……」

バタン……。

そして、相手の選択肢を奪うことも、そりゃあ重要だ。人質弱みで制限するのは勿論、過ち弱点を作り出すのもケースバイケースで有効と言える。

 <データ収集は完了したな…>

 目立つことによるメリットは少ない。水面下で支配の輪を広げ、明るみに出ることなく勝ち逃げするがベスト

 「失礼します」

 「あとは頼んだ…」

 「ハッ!」

この会長無能は今の出来事を忘れる。記憶操作で出来事を無かったことにできても、違和感を覚えさせないことは本来不可能だ。違和感は真相に迫るきっかけになる。

 だが、規模を大きくすれば違和感を払拭できる

自身システム仕様を知り尽くしていたから、医者すら欺いて『盲目キャラ』を貫けた。ガキから虐められることで惨めに演じれる。親を洗脳して不気味がらせでもすれば、兄としての庇護欲は簡単に強まった。

 『社会的弱者』と『頼れる有能な兄』

作りたい人間関係は簡単に再現できたし、将来の安泰な生までの道のりは早い段階から確立できた。

 スペック、立場、コネ

この3つが程良くあるだけで、生きていける。

 さらに、洗脳で立場も、コネもどうとでもなる状況ともなれば、恐れるものなどないと思っていた

何より、大きな夢ではなく安泰。競争も起きにくく、恨まれる可能性も低いのがだった。


 さえなければ!!!


兄と自身の身に異常が起こった。

 不思議な超常現象、俗に言う『超能力』

夢じゃない。一瞬、興奮してしまった。まず、兄より力が弱い『風』。

 これは許せる

実力隠して手品のようなことができる。問題は、他の人の手段スキルが増えていること。

 非常にマズい

個人の力が極大化しうる。これは疑念から確信に変わった。

 個人の力で星が塵と化す

そうともなれば、これまでの価値観が崩れ落ちる。洗脳による人生設計なんてただのお山の大将でしかなくて、ただのモブ。

 しょうもない揉め事いざこざの飛び火で死ぬ

許せるわけないだろ。

 <人生設計を組み直そう…>

 なら、成るしかないじゃないか

『肉体』や『精神』、『心』を研究し尽くしたように、『異能』を解体するしか道はない。

 さもなければ…俺は、誰かに殺される

目標が決まれば逆算は簡単だった。自称『アピス』を作りだし、兄を洗脳し……

 『アピス』を王にした

最後の希望である神子リンは、特別だ。これまでの神子とは環境から何まで、全然違う。

 この前とはまるで別人

スペック、立場、コネが最大値と言っても良い。

 正直、ここまでとは思っていなかった

リンの実力は底が知れない。でも、もう心配事はない。だって……》



――side『最強ザ・ワン
死ぬ未来が見えない。圧倒的優勢。現状、リンが勝ちうる手札がないと断言できる。

 だとしても、ここが正念場。

エレベーターで降りているのは把握している。ここまで来るようなやつだ。【テレポート】で即死技か、【アクセル・バーニング・ソウル】以外では簡単に死なない怪物だ。リンが着地と同時に『スマート』を弾き飛ばす。

 「Welcomッておい!」

フォオオン!!!!

『Welcome to our home』って言いたかっただけなのに、警戒されすぎている。

 〈いや…だけじゃない〉

 本気だ。本気で殺す気なんだ

俺を囲うように肥大化した圧は、檻…

 〈いや、入道雲だろコレ〉

不敵な笑みを浮かべる。それが一番効果的だって知っているから、反射で口角を上げていた。

 「………」

圧は、リンが溜めたエネルギーからだ。エネルギーの種類を観察する。

 <『気』、『霊気』、『生気』、etc...>

妨害したいが、今近づくのはマズそうだ。リンの気迫が少々異質だ。それはリンsideの特別なターンを意味する。

 〈最初か…最後…だな〉

 〔リン!!〕

 「に相応しく…」

余分だった分のエネルギーをまとめ、異能で極限まで編み込んだような、効率化と幾何学的を極めて、神話の域に踏み込むエネルギーの塊は、殺意を形にしたようなものだった。

 <その上に…>

リン自身にも異能とエネルギーに満ち溢れ【テレポート】がしにくく、俺のトラップから無駄ない動きで避けた上での最短ルートで接近する歩法。何と言っても、全力で俺の『時間』を遅くして抵抗させないようにと…。

 <分かりやすい総括は、バフもデバフメタもバッチリってか>

選択肢未来』でも見たのだろう。最善を尽くしている。

 「飾ろ」

シュン!

 「残念だったね」

俺自身への【テレポート】を『時間』を遅くすることでしか邪魔できていない。『時間』を遅くされても、【アクセル】で足掻ける打ち消した上で【テレポ】は使える。大した妨害になっていない。【アクセル・バーニング・ソウル】の対策が出たとは思えない、人質だっている。

 <勝ちは揺るがな…>

ボト…ズザァ……!

 <…カスったか>

膨大でしつこいタイプのエネルギーだ。掠らせるだけでその個体を侵食し、破壊しようとする剝き出しの執念。大概の怪物であっても、等しく劇毒。

 <そう誰にでも等しく…>

リンは…くるくると宙を回ってそのエネルギーを解き放つ。

 「【乱渦】」

俺は体がボロボロになっていくのなんて気にしない。リン可能性が自壊する。その予兆を感じ取る。

 【乱渦】とリンは言っているが、ただエネルギーを暴発、発散させているだけ

部屋を満たす勢いで展開しているが、異常に速い。【アクセル】をかけているようだ。

 <ほんと…>

部屋全体に侵食していくそのエネルギーは、配置された俺の細胞を悉く破壊していく。

 <100点をあげたいくらいだよ>

よく創作物では『核』を最上級に起きがちだが、『水素爆弾』は『原子爆弾』を起爆剤にして威力は倍どころではない。それからも研究が進んで、小さめの惑星を破壊するくらいはできる科学水準だ。

 リンのソレは爆発速度、飽和密度、精密さにおいて、それらを凌駕りょうがする

爆発速度は言わずもがな、だが、飽和密度はこの世のものとは思えない禍々しさすら秘めているにも関わらず透き通った見た目をしている。

 部屋に雑に散らかした一部の人質には当たらないように制御してると来た

この光景は少々奇妙なもので、視認困難である透明なエネルギーが爆発しているんだから、空気の屈折率などにはさほど影響しないんだが、どうにもエネルギーが通りやすい道と浸透しずらいとこの差で亀裂の入った画面のように見える。

 この部屋にあのエネルギーが満ちるのは時間の問題

 <人質を使えば爆発を止めることだってできるだろう。でも、しない>

何と言っても、想定済み、だ。【テレポート】した先は『スマート』の真横。

 「ほいっ」

 「おわっ!」

『スマート』。もちろん、『毒』なんて切り離してだ。『スマート』に対してリンは仲間意識がある時点で、まず攻撃対象にならない。『アピス』であるから『同化』だってできる。アピスはアピスだ。異物じゃないから『スマート』から俺を離すこともできないし、『スマート』が俺を弾くことはない。

 「これで満足したか…?」

 「まだ」

リンはまだ強がる。逆転の芽などないと言うのに…だ。俺だけが持つ異能のtier0最強…『possible』。可能性の糸を、1%に満たない『可能』を『現実』にし得る正真正銘のチート、バグ技にして、『異能』への対抗手段切り札となるものだ。

 「俺にも、『未来』が見える。とうに勝ち筋などないだろ」

 「…まだ…まだ」

 「何と言っても…さっきの技死ぬだろ?」

 〔……っ!!〕

こういう時の神の反応はやはり分かりやすい。

 あんなもの人間が出せるレベルをギリ超えている

味方である『霊』とか『ケイト』とか『神』からの援助があったのかもしれない。それでも、あの技には明らかにリンの『生気』が込められていたし、『possible』も1分後にリンが生きている未来を描いていない。

 <……観戦の予定だったんだが?>

『スマート』と体を共有しており、支配権は完全に奪っていた。『スマート』の内心の呟きは俺にだけ聞こえる。あくまで邪魔する気はないし、リンを殺すのも止めない、そんな意思を感じ取る。

 「…そうだな。最後なんだろ?盛大に祝ってやるよ」

パチン!

指を鳴らす。リンは見るからに満身創痍。

 <異能を使う未来すらないが、念には念を、だ>

量産型を呼ぶ。部屋の至る所からアピスが人質を抱えたり、武器を携えたりして出て来る。そして、本命。『真霊』を入れた棺桶が現れる。

 「スマート」

 <……生きるためだし、仕方ないね>

『スマート』の精神体を『真霊』に引っ越し。これがもう一つの切り札。

ゴトッ……

 「「慣れねーわ。人の体はよ……」」

意志が弱い『真霊』をフル活用するには、『スマートブレイン』が操縦すればいいじゃないかという至極単純な作戦。ちゃっかり、『スマート』の身体を人質に被弾を避けられるのも評価できる。

 「いいかぁ~~よーーく、聞け。少しでも抵抗してみろ。即座に人質を殺す」

 「……」

神が暴れてもなんら不思議ではない。そうする未来があれば、即座に【テレポート】で確殺するだけだ。ここまで上手くすんなりいくとは正直、想定外だ…。

 <油断する気はない…>

 「「恨むなよ?」」

 「待て」

『真霊』の体に精神だけ入った『スマート』が、とどめを刺そうとするが、静止する。何度確認しても、『幻』の類でもないし、『possible』は放っておいても死ぬと言っている。万が一にも、復活を恐れるなら…

 「四肢を削げ」

 「「…オッケーボス」」

ザン!!……ド…ドド!

あっさりと切断される手足。『真霊』の異能には、『酸化腐敗』がある。

 「『酸化』も忘れるな」

 「「はいはい…」」

手足だった肉塊は胴体同様、失血のあまり死斑が生まれ、黒ずんでいく。再生も簡単じゃないだろう。

 「首を切断しろ」

『スマート』は無言で従う。顔も、胴体も黒ずんでいく。肉は腐敗し、骨が見え隠れしている。『幻』ではないし、『possible』の示す未来は変わらない。絶命したと言っても過言ではない。

 <この程度なのか……?>

アピス細胞は再度展開したから、今も尚、リンの周囲を埋め尽くし、死角もない。完全に掌握している。小さな違和感を見逃してはいない。突然、『スマート』に裏切られても、対応できるように【テレポート】を準備する。

 「魂の灯火を…消せ」

『真霊』ならば『霊体』に干渉し、グルバンやルコのように邪魔されるリスクも減らせる。

 <さぁ……れ>

リンの死体は黒ずみ、アピス細胞は浸透し復活しようとしたら爆散させることもできる。もう復活は考えにくい。

 「「さよなら…リン」」

 「…」

!!!!!!!

 ま ず い

身体を二分する。即座にリンを殺しに行く速攻重視、そして、【アクセル・バーニング・ソウル】の準備をする俺。

 〈異能や科学兵器じゃ、支配権を奪われかねない。信じられるのは身体だけ。これが最善〉
 〈リンは死んでな…い...!!〉

バ タ ン ………

突然、地面が迫ってきた。倒れた。なぜ??

 なにが起こった???

全身が痺れたように動かない。筋が働かない。が、なんとか顔を上げる。人の形を成したリンと眼が合う。

 間違いなくリンの仕業だ

だが、その眼に敵意や意思を感じない。異質さに磨きがかかっている。測れない実力に別人じゃないかとすら疑う。注目していたリンの口が動きだす。

 〔…お待たせ…みんな〕

それは…神の発言や…『真霊』が『霊体』の時に話すソレと同じ理屈もの

 確定だ、リンが覚醒した

溢れんばかりの荘厳そうごんさは……人間の域をどこか逸脱したでも持ち出されたような異質感を強く覚えさせる。

 〈ここまで丁寧にったのによ…〉

もう、死にたいのくせに気圧される。一周回って笑いそうになるが、そんな場合ではない。

 まだ可能性はある終わりじゃない

『possible』はまだ誰の勝利も確定させていない――
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