解放

かひけつ

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第3章 ~よう

止め

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☆sideシン
リンは死んだ。

 <まぁ、平行世界を含めるなら途方もない回数死んでいるが…>

リンの死。これが最後のピースだった。

 《神様、彼女をどうか助けて下さい》

 <……全部……思い出したよ…>

神としての力も、ソウや平行世界のリンとオレから託された想いも、全部全部、受け入れる。

 霊体にならないと、リンは壊れてしまう

  逆に言えば、

 霊体にさえ成れば、条件は揃う……!!

リンが『過去のオレ』と『平行世界で見てきたオレとリンの全て』をって『世界』を識るのも、オレがを取り戻すのも、そして、100%になった『今のオレ』をリンが識るのも、この瞬間じゃないとできなかった。

 これでギリギリ……ギリッギリで成ったのだ

【波紋】の究極系【止波紋】によって『最強ザ・ワン』は無力化。ソレを、自身の『肉体』を構築しながら可能としているのが凄まじい。ちなみに、リンは再生したわけでも、時間を弄ったわけでもなく、物質を繋ぎ合わせて現世に干渉できる『器』を作る御業みわざを披露している。

 リンの【半神化】は、それこそ、ビッグバンの再来と後世に語り継がれるレベルの奇跡始まりなのは間違いないが…

 <完全ではない>

 〔もういくね…あとはお願い〕

ここで抵抗できる者はもう、

 「待てよ!!」

『ザ・ワン』は吠える。

 「おい、勝った気になるなよ?まだ人質なんて腐る程いるんだぞ。見捨てていいのか?」

 〔……〕

 「それとな、俺の眼は誤魔化せねーぞ。もう数秒の命だ。何ができる」

 〔じゃあ、秒読みでもしてろよ…〕

 「トドメをさせよ!!テメーら!」

 「「それは無理あるって~~、勝ち目ないじゃんか」」

 「やりもせずごちゃごt」

……

 「ゼロ」

ケイトはその単語と共に現れる。

 「リンは死んだかのぅ~」

 「…はぁ?!!………てめーか………」

 「、じゃな?」

 「…………」

 「身体の制御を奪われ、異能も機械も使えない…『』も、『エンジニアスペシャリスト』の援護も望めず、残ったのは口だけじゃな………まだ、強がるかえ?」

 「………」

ドドドド!!

『ザ・ワン』は諦めたように項垂れるが、部屋のあちこちから、アピスが湧き出る。

 『ネームド』はいない、な

ケイトは構えもしない。

 「もう、よいぞ」

ドカーーン!!

 「お前をぶん殴らずに…地獄にもいけんわぁ!!!」

 「やっと役に立てます!!」

グルバンは自身のクローンと『不義アウトロー』の名を持つルピカと共闘している。これまでの鬱憤が溜まっていたことは明らかだ。

 異能も使えない上、『ネームド』のいないアピスに、機能しない機械

アピスの武器はだけ。それだけとも言えるが、数が多いのが自爆と噛み合いがいい上、部屋自体も変形する。脅威…だが、まったく怖くない。

 「大人しくせんか!!」

彼らが苦戦なく応戦してくれる安心感。

 <そして…>

人質に近づくアピスは、グルバンのクローンを介してケイトが気絶させる。これが正直デカい。

 「…派手にやってるわね」

 「舐めるなよ小僧ガキが!!ハッキングできるとでも思ったか!!」

一方、ルコたちは『スペシャリスト』の沈静化、そして、ハッキングが目的だったはずだ。

 <アレがそうなんだろう……>

それらしき人影はルコを強く煽るが、クローンに関節技を決められている。痛覚が感じないようだが、完全に無力化されている。

 「…俺にはソイツが正しいこと言ってるように聞こえるが?」

 「もう終わる」

ルコが呼んだもう一人の助っ人である大神。その身体を操るルコは、両方の親指をキーのない位置に置く。

ピーーピロン♪

 「…バ…カ…な……!!」

 「何重にもプロテクトやってたけど、最後の、拍子抜けしちゃった…毎回この粒子作ってるんでしょ?」

 「………!!!」

バタン……

関節技では顔色を変えなかったが、衝撃のあまり泡を吹いて気絶する。

 「グルバン様!見つけました!『オリジナル始祖』だと思われます!!」

アウトロールピカ』がボロボロのアピスを連れてくる。どう見ても被害者だ。これで、不穏分子が無くなった。

 拠点は制圧したと言っても過言ではない

 「『だーかーら、まだ勝ってねーだろーが!!世界規模の災害だって対処できんのか?』っていうつもりだったんでしょ?」

 「………」

『ザ・ワン』は大人しい。何をやっても無駄だと諦めたように傍から見えるが、何を考えているかオレには分からない。

 「…参った。俺ができることはもうない。ここまでメタられたら、誰だって無理だろ」

 <負けを………認めた………??>

 「は、もう何もできやしない」

ゾワワワ……!!!!

これまでで一番……『ぬめり』を感じる。厭らしさと煮え詰めたようなクソの予感。

 「全部知ってんだろ?『世界同時災害』だけじゃなくて『星喰い計画』とか『地球焼却作戦』…あと、『ミラボール電脳神計画』、『沼男スワンプマン世界ワールド計画プロジェクト』の5つだ。どれも簡単に対処できない案件だと思ったが……なぁ、どうやって対処すんだ?」

 「………」

 〔………!〕

まともな単語がない。

 度を越えた狂気

 <世界の敵になるような悪役が、平行サブプランで世界を滅ぼそうとするなんて…そんなのアリかよ……!!!>
 
リンは既にここにいない。これから、世界中に異能を飛ばしアピスの後始末をしなきゃいけない。

 いや、現在進行形のテロを食い止めなければ…

 <できる…か…?>

神の領域にいる今のリンであっても、不可能に思えてくる。アピスの計画を完全に把握したわけではないから断言はできないが、対応はキャパオーバーになる。ほぼ間違いなく。

 個別では可能なレベルだとしても…何と言っても、動力源エネルギーがない

異能を使うにも下準備が必要だ。

 「流行」

 「いつでもいけるよ」

 「お願い」

カタン…パッパパパパパ!

 「放送局とミラボールをジャックしての放送か……俺が根回ししてるのに、よく枠取れましたねって褒めて欲しいのか」

 「世界中継」

 「…どうやった?」

 「『エンターテイナー』くんと『アンバランス』くんが動いてくれてね……アピスがしてきた強請ゆすり、洗脳、陰謀の数々をハイライトで、ね」

 「 で ? それがどうした? 人間はを得てからじゃないと耳を傾けられない。どーーせ、それだけじゃないんだろ?」

 「当たり前じゃな。みなの安全は確保済みじゃ」

 「そっち先に言えよ。説明下手かよ」

 「…アイツ…!!」

 「怒りに指向性ができる」

示す合わせたように声が響く。

 「怒りだけじゃ、誰も救われません」

映像が切り替わる。アイナがリポーターのように映し出される。アイナも『霊』なので、カメラには映るはずがないが、ケイトやルコが調整したのだろう、違和感がない。

 「……なるほどな…」

アイナが続ける。背景が世界各地の海辺や山頂の様子が映し出されているが、高波や火砕流が有り得ない角度で静止しし異様な有様だ。

 「ご覧下さい、災害を一時的に抑えられています。地震や土砂崩れ、今起きる全ての災害を、異能と呼ばれる力で、なんとか静めていますが、長くは持ちません」

 「呼びかけでリンへのヘイトを減らしつつ、異能の依代よりしろでも募ろうってか?」

 「災害を退けるために、皆さんの祈りが必要です。たった一度で構いません。想いがエネルギーになって、そして、力に、未来に繋がっていきます。より、心を込めたお祈りの方が力になるので、ぜひ、強い想いを乗せて祈ってくださいね」

映像は『エンターテイナー』と『アンバランス』がいたスタジオに戻り、アイナの呼びかけについての話を広げている。

 「…信仰心を…異能に転用って…宗教かよ。言うこと為すこと気持ち悪いな」

 「ふざけないで!!アンタが一番言えないでしょ!!」

ルコは手を動かしながらキレる。

 「第一、あんな呼びかけぽっちじゃ、信用できるかよ」

 「アレだけなら…ちと弱いな」

 「……なんかあるならさっさと言えよ。時間稼ぎでもしてんのか?」

 「故人と言われる『わてら』が、言葉を送ったり、会話できる時間を設けたり、まぁ…それだけじゃ」

 「……祈りの『感情』はどうなる」

 「リンが回収する」

 「おいおい…異能は効果範囲とか、射程とかあったろ、ルールは守るんだろうな?そんで、他人の『感情』なんだろ?簡単に回収できたら、バグだろ」

 「射程を広げるためにを活用したら?」

 「…始めから、そうやりゃよかったじゃねーか」

 「回収するエネルギーが多くて成り立つ技とだけ言っておこうかの~」

 「なんで、他人の『感情』を奪い取れるかの説明はどうしたよ」

 「色々、前準備したからじゃな」

 「おい、まだ終わってねーぞ」

 「終わりじゃよ。お帰り、リン」

 〔ただいま…〕

存在感こそ全く違うのだが、いつものリンが戻って来た。

 赤子を抱きかかえて

 <なんで…?>

皆、そんな顔をしている。

 「えっと…リン、助けた赤ちゃん連れてきたの?」

 〔これ、『アピス』の生みの親〕

 「あむあむあむぅ…」

 「………………」

広大な部屋で、こんなに大勢の人がいるのに、一瞬の間ができる。赤ん坊が、生みの親なんて聞いたことないから当然だ。噓偽りのない喃語を前にされたら、なおさら困惑する。最初に声を上げたのは『ザ・ワン』だ。

 「誰だ…そのガキ」

 <…こいつは本当に…>

 かき乱してくれる

『ザ・ワン』は、ほぼ確実に記憶をイジっている。心が読めても、知らないことは炙り出せない。

 〔静かにしてて…〕

 「…ク……ソ……」

バタン……

最後まで足掻いた『最強ザ・ワン』すら静かになり、誰も何も言わなくなる。オレは声を上げる。

 〔…説明してくれ〕

 「わかった…」

そうして、リンはと弟の壮絶なを教えてくれる。
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