姉弟

美里

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睡眠

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 厳正なるじゃんけんの結果、本日床に寝るのは健少年に決まった。
 寝室の押入れから夏掛けの布団を引っ張り出し、少年はあっけらかんとそれにくるまった。
 「寒くない?」
 「大丈夫です。」
 「寒いでしょ。」
 「ちょっと。」
 変な意地はらなくてもいいのに、と苦笑したシュンは、冬掛けの布団の下にあった毛布を健少年に与えた。
 「え、でも、これじゃシュンさんが寒いんじゃないですか?」
 「大丈夫。その毛布、いつもは美沙子が使ってるやつだから。」
 「あぁ、姉ちゃんが。」
 そう言えば寒がりだったかもな、姉ちゃん。
 そんなことを、健少年は呟いた。
 そうだね、寒がりだよ、美沙子は。
 そう答えようとしたシュンは、彼女の弟にわざわざ言うような台詞でもないか、と思って黙っていた。
 確かに美沙子は寒がりの末端冷え性だった。毎晩、シュンに冷たい手足を巻きつけるようにして眠った。寝付きの悪いシュンは、いつまでたっても暖かくならない美沙子の手足に身体を冷やされながら、いつも妹たちのことを思い出していた。
 同じ毛布にくるまって暖を取っていた妹たちが、順番に冷たくなっていった真冬の夜。
 美沙子の冷たさは、妹たちの冷たさとよく似ていた。もう今後、温まることなんかないんじゃないかと思うくらいに。
 そう思うと、シュンはなおさら眠れなくなった。だから毎晩、美沙子の寝息を聞きながら、半分覚醒したぼんやりとした意識の中を漂った。その意識の中には、妹たちと母親が住んでいた。毎日、現れてはシュンを呼んだ。こっちの水は甘いぞ、と。
 毛布と夏掛けにくるまった健少年は、静かだった。
 もう眠ってしまったんだろう、とシュンは思う。
 そして、深い睡眠と、死との違いはなんだろうとふと考えてしまう。
 いつか目が覚めるか、永遠に覚めないか。
 分かっている。それが違いだ。なのにまだ認められない自分がいる。
 妹たちは、どこに埋められたのか、それとも捨てられたのかさえ分からない妹たちは、もしかしたら深く眠っていただけなのかもしれない。死と眠りは、とても近いのだから。
 そうすると、ベッドの下で眠っている健少年の生死もあやしく思われてくる。
 彼は、生きているのか、死んでいるのか。
 シュンは、ベッドの上でしばらく身を固くしていた。
 そして、やがて耐えられなくなって、じりじりと音をさせないように、ベッドの端による。そして、右手をうんと伸ばして、眠る健少年の身体に触れた。手触りからして、多分頬だろう、とにかく健少年の身体は暖かかった。ちゃんと生きている温度がした。
 
 
 
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