姉弟

美里

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 シュンの頬と右手を、本当に健少年は離さなかった。
ただ、健康的な少年は、シュンより早くに眠りについた。シュンに折り重なるように、ぐったりと身体を投げ出し眠る少年。
 シュンは少し迷ったあと、そっと彼の肩に腕を回した。暖かな身体を、静かに抱き寄せてみる。
 すうすうと、規則的な寝息が聞こえる。本当にぐっすりと、彼は眠り込んでいるようだった。
 その時シュンは、確かに、後ろめたい、と思った。
 美沙子に対して、後ろめたいと。
 以前、彼女の出稼ぎ中に、戯れに女を抱いたときには、一ミリの後ろめたさも感じなかったくせに、健少年を抱き寄せて眠る夜は、あまりに後ろめたかった。
 いつも、シュンに手足を巻きつけるようにして眠った彼女。
 その肩を抱いた夜は数え切れないほどある。それでも、そこにはなんの情もなければ、主体性もなかった。
 こうやって、自ら腕を伸ばして肩を抱き、眠る美沙子を腕の中に閉じ込めておきたいと願うような、そんな夜はこれまでなかった。
 すぐ側にある健少年の寝顔を、息を潜めて見つめる。
 美沙子によく似た色の白さと、長いまつげ。小さな唇。
 健から逃げたら許さないと、呪いの文句のように言った美沙子の声を思い出す。もう健を抱いたの、と尋ねてきた声も。
 この温度を知ってしまったら、シュンはもう、健から逃げられない。彼を抱くのも、時間の問題かも知れない。健全な少年が、それを望まないにしても。
 シュンは、小動物のような寝息を漏らし続ける小さな唇を、慎重に自分のそれで塞いだ。
 一秒、二秒、三秒、と、時を数える。
 健少年は、呼気まで暖かかった。
 シュンが七秒目を数えたところで、健少年が半分目を開けた。
 ぼうっとした半目のままで、何がおこっているのか把握できていない様子の少年の唇が、かすかに動く。シュンさん、と。
 シュンは、一瞬彼の唇を離しそうになった。それは、怯えるように。
 けれど結局シュンがそうすることはなかった。彼の唇を塞ぎ続けたのだ。それも、怯えるように。
 健少年は、それからまた数秒した後、はっきりと意識を覚醒させた。
 大きく見開かれた両目も、やはり美沙子に似ている、と、シュンは思った。
 目を覚ました少年は、じたばたとシュンの腕の中でもがいた。しかし、シュンのほうが背も高いし体重だってある、抑え込むことは、容易だった。
 

 
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