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いくらセックスするためにしか使えない部屋だとしても、まさかセックスをしなければ犯罪になるわけでもあるまい。
シュンはそう思って、部屋に入るとすぐに、健少年にシャワーを浴びてくるように促した。自分は、その間にソファで寝てしまうつもりだったのだ。それができるくらいには、くたくたに疲れ切っていた。
疲れているのは肉体だけではなくて、もっと決定的なところが疲れ切っているのだという気がした。その決定的なところの疲れは、いくら眠ったところでリセットされないのも、なんとなく理解していて、そのことが絶望的に頭を離れなかった。
それでもとにかく、身体の疲れだけでも癒そうと、シュンはソファに横になった。小さなソファだったので、脚がはみ出したけれど、そんなとこはどうでも良かった。
健少年は、素直にバスローブを持ってシャワーブースに入っていった。そのバスローブだけが、オンボロホテルに不似合いなほど真っ白くて、シュンはなぜだかそれを、虚しいと思った。
シャワーの音が、薄い壁を伝って聞こえてくるまでに、シュンは浅い眠りに落ちた。そして、目を覚ましたのは多分それから10分もしないうち。誰かに顔を覗き込まれている気配がしたからだった。
シュンの顔を覗き込んでいるのは当然ながら健少年で、彼は顔覗き込んだだけではなく、もう少しでシュンの唇に自分のそれを押し当てようとしていた。
シュンは驚いて一気に覚醒し、健少年からとっさに顔をそらした。少年の水分をたっぷりと含んだ唇は、シュンの顎をかすかにかすめた。
「え……なんで、」
シュンが驚きを引きずったまま問うと、健少年は当たり前みたいに、だって、シュンさんが寝ているから、と言った。
「こういうホテルに来たってことは、そういうことするって意味じゃないんですか?」
シュンは唖然とし、少年の線の細い小さな顔を凝視した。
「……そういうつもりじゃ、なかった。」
もうきみを抱く気はないんだよ。
シュンが言うと、健少年は芯から驚いたように目を見張り、なぜ、とそれだけ問うた。
「なぜって……、」
シュンは言葉に詰まった。
この少年に嘘を付きたくないという気持ちはあった。だから、もうきみの身体に興味がないと、そういちばん簡単な方法で健少年を引き下がらせることはできそうになかった。
シュンはそう思って、部屋に入るとすぐに、健少年にシャワーを浴びてくるように促した。自分は、その間にソファで寝てしまうつもりだったのだ。それができるくらいには、くたくたに疲れ切っていた。
疲れているのは肉体だけではなくて、もっと決定的なところが疲れ切っているのだという気がした。その決定的なところの疲れは、いくら眠ったところでリセットされないのも、なんとなく理解していて、そのことが絶望的に頭を離れなかった。
それでもとにかく、身体の疲れだけでも癒そうと、シュンはソファに横になった。小さなソファだったので、脚がはみ出したけれど、そんなとこはどうでも良かった。
健少年は、素直にバスローブを持ってシャワーブースに入っていった。そのバスローブだけが、オンボロホテルに不似合いなほど真っ白くて、シュンはなぜだかそれを、虚しいと思った。
シャワーの音が、薄い壁を伝って聞こえてくるまでに、シュンは浅い眠りに落ちた。そして、目を覚ましたのは多分それから10分もしないうち。誰かに顔を覗き込まれている気配がしたからだった。
シュンの顔を覗き込んでいるのは当然ながら健少年で、彼は顔覗き込んだだけではなく、もう少しでシュンの唇に自分のそれを押し当てようとしていた。
シュンは驚いて一気に覚醒し、健少年からとっさに顔をそらした。少年の水分をたっぷりと含んだ唇は、シュンの顎をかすかにかすめた。
「え……なんで、」
シュンが驚きを引きずったまま問うと、健少年は当たり前みたいに、だって、シュンさんが寝ているから、と言った。
「こういうホテルに来たってことは、そういうことするって意味じゃないんですか?」
シュンは唖然とし、少年の線の細い小さな顔を凝視した。
「……そういうつもりじゃ、なかった。」
もうきみを抱く気はないんだよ。
シュンが言うと、健少年は芯から驚いたように目を見張り、なぜ、とそれだけ問うた。
「なぜって……、」
シュンは言葉に詰まった。
この少年に嘘を付きたくないという気持ちはあった。だから、もうきみの身体に興味がないと、そういちばん簡単な方法で健少年を引き下がらせることはできそうになかった。
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