三親等

美里

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三親等とは結婚できない

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 三親等とは結婚できない。はじめてそれを知ったのは、小学校5年か6年の授業で習ったんだったと思う。とにかくそのとき、私は心底びっくりして、その場で凍り付いてしまったくらいだった。だって、そんな。だって、そんな。そんなことになったら、私は、諒ちゃんと結婚できないってことになる。私は放課後、友達の誘いには目もくれず、学校を飛び出した。そして、諒ちゃんのアパートにいっさんに駆けて行った。
 インターフォンを立て続けにならすと、諒ちゃんはゆっくりした動作でドアを開けてくれた。諒ちゃんは、私のピンポン攻撃くらいでは、今更全然動じないのだ。
 「どうしたんだ、真希。」
 お母さんの歳の離れた弟である諒ちゃんは、そのとき20代の後半だったはずだ。私の家から徒歩5分のアパートで独り暮らしをしていて、私が部屋を訪ねると、いつでも快く迎え入れてくれた。仕事はなんだかよく分からないけれど、難しそうな図面に向かい合っていることが、時々あった。
 「私、私、」
 「なに?」
 「諒ちゃんと、結婚してあげられない!」
 「え?」
 諒ちゃんは、完全に虚を突かれた、という感じで、一瞬固まった。そして、数秒の後、諒ちゃんは笑った。声を立てて、さもおかしそうに。
 「なに、真希は、俺と結婚してくれるつもりだったの?」
 笑われた私は、かなり頭にきた。ぶるぶる震えてしまうくらい。
 「諒ちゃんなんて、もう知らない! 一生一人でいればいいんだ!」
 駆け出して行った私を、諒ちゃんはびっくりしたみたいに呼び止めた。でも私は、振り返りもせずにめちゃくちゃに走った。息が続く限り走って、たどり着いた土手の草むらに、ぺたんと腰を下した。ぜいぜいと息が切れていたけれど、それ以上に、悲しかった。三親等とは結婚できないって知ってしまったことよりも、諒ちゃんに笑われたことが悲しかった。いつも、どんなときでも、諒ちゃんは私を笑ったりしなかった。どんな子供じみたことを言っても、ちゃんと話を聞いてくれた。なのに、あんなふうに笑うなんて、ひどい。
 ひどいひどいひどい、と口に出して呟きながら、私は膝を抱えて川の流れを睨みつけた。自分が今、どこにいるか分からない。むちゃくちゃに走ってきたので、家の方向が全然分からない。それに気が付いてしまうと泣いてしまいそうで、必死で気をそらしていた。
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