10 / 17
10
しおりを挟む
諒ちゃんは、びくりと肩をすくませた。まるで私に、怯えるみたいに。すぐに振り払われるかと思ったけど、諒ちゃんは固まったまま動かなかった。だから私は、頭の中で、1、2、3、と数えて3つめで唇を離した。
至近距離で目と目を見て、また3つ分の沈黙。
「……今の、キス?」
諒ちゃんが、ぎこちなく私から視線をそらしながら訊いてきた。
「違う。ただの腹いせ。」
私がそう答えると、諒ちゃんは、安心したみたいに長く息をついた。その息は、私の前髪を揺らした。
「ごめん。」
ぽつん、と、諒ちゃんが言った。
「子どもだからとか、女だからとか、そういうことが言いたかったんじゃなくて、真希だから、心配だから、よく分かんない男とセックスしないで。」
うん、と、私は頷いた。今度の諒ちゃんの台詞は、私を子ども扱いするものではなかったし、腹も立たなかった。
「明日、セックスしない。咲ちゃんに、男の子紹介しなくていいって、電話する。」
「ん。」
ふう、と、諒ちゃんはまた息をつく。よかった、と、唇だけで呟いて。
その様子を見ていたら、今度は腹いせじゃなくて、本当に諒ちゃんにキスがしたくなった。時も相手も、正しくなくても。だから私は、身を乗り出した。ほんの少し乗り出せば、私と諒ちゃんの隙間は埋まる。びくりと、諒ちゃんが肩をすくませたのはさっきと一緒。でも、一瞬の膠着の後、今度は諒ちゃんの手が、私の腰に回った。そのことに私はびっくりして、思わず身を引きそうになったけれど、うんとお腹に力を入れてそのままの体勢を保った。1、2、3、と数えて、今度も身体を離そうとすると、諒ちゃんのてのひらに後頭部を包まれた。え、と思ったと同時に、唇に軽く諒ちゃんの舌先が触れる。それは、唇を開けて迎え入れるのが自然と思わせられるくらい、優しく。
諒ちゃんは、あのころころ変わる女のひとたちと、いつもこんなふうにキスをしていたのか。
そう思うと、急に怖くなった。諒ちゃんの女の一人になるような気がして。そうしたら、私もあっさり諒ちゃんに捨てられる気がして。
諒ちゃんの胸に手をついて、本気で抵抗すると、諒ちゃんはあっさり私を離した。離してくれてよかった、という気持ちと、離さないでくれたらよかったのに、という気持ちがごっちゃになって胸に押し寄せてきた。
「……真希?」
私を呼ぶ諒ちゃんの唇が、濡れている。それを見ているのがなんだか辛くなって、伸ばした指で拭った。
至近距離で目と目を見て、また3つ分の沈黙。
「……今の、キス?」
諒ちゃんが、ぎこちなく私から視線をそらしながら訊いてきた。
「違う。ただの腹いせ。」
私がそう答えると、諒ちゃんは、安心したみたいに長く息をついた。その息は、私の前髪を揺らした。
「ごめん。」
ぽつん、と、諒ちゃんが言った。
「子どもだからとか、女だからとか、そういうことが言いたかったんじゃなくて、真希だから、心配だから、よく分かんない男とセックスしないで。」
うん、と、私は頷いた。今度の諒ちゃんの台詞は、私を子ども扱いするものではなかったし、腹も立たなかった。
「明日、セックスしない。咲ちゃんに、男の子紹介しなくていいって、電話する。」
「ん。」
ふう、と、諒ちゃんはまた息をつく。よかった、と、唇だけで呟いて。
その様子を見ていたら、今度は腹いせじゃなくて、本当に諒ちゃんにキスがしたくなった。時も相手も、正しくなくても。だから私は、身を乗り出した。ほんの少し乗り出せば、私と諒ちゃんの隙間は埋まる。びくりと、諒ちゃんが肩をすくませたのはさっきと一緒。でも、一瞬の膠着の後、今度は諒ちゃんの手が、私の腰に回った。そのことに私はびっくりして、思わず身を引きそうになったけれど、うんとお腹に力を入れてそのままの体勢を保った。1、2、3、と数えて、今度も身体を離そうとすると、諒ちゃんのてのひらに後頭部を包まれた。え、と思ったと同時に、唇に軽く諒ちゃんの舌先が触れる。それは、唇を開けて迎え入れるのが自然と思わせられるくらい、優しく。
諒ちゃんは、あのころころ変わる女のひとたちと、いつもこんなふうにキスをしていたのか。
そう思うと、急に怖くなった。諒ちゃんの女の一人になるような気がして。そうしたら、私もあっさり諒ちゃんに捨てられる気がして。
諒ちゃんの胸に手をついて、本気で抵抗すると、諒ちゃんはあっさり私を離した。離してくれてよかった、という気持ちと、離さないでくれたらよかったのに、という気持ちがごっちゃになって胸に押し寄せてきた。
「……真希?」
私を呼ぶ諒ちゃんの唇が、濡れている。それを見ているのがなんだか辛くなって、伸ばした指で拭った。
1
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる