12 / 17
12
しおりを挟む
全然分からない私は、翌日、咲ちゃんが紹介してくれた男の子とキスとセックスをした。形だけでも、それがなんなのかだけでも、分からないことには自分が諒ちゃんに向けている感情に名前が付かない気がして。
咲ちゃんが紹介してくれた男の子は、酒匂くんという他校の一つ先輩だった。私はそれ以上に、そのひとの情報を知らない。そのひとはなにも言わなかったし、私もなにも訊かなかった。そういう情報は、不要どころか邪魔になる気がした。感情がない、ただのセックスの。
指定されたホテルの天井を眺めて横たわりながら、諒ちゃんもいつも、こんなことをしていたのかな、と思った。大して感情があるとも思えない、一回きりの女のひとたちと。
酒匂くんは、多分悪いひとではなかった。少し伸びすぎた髪から漂う、不摂生な感じが、諒ちゃんになんとなく似ていた。その酒匂くんが、慣れた手つきで私を引き寄せてキスをしてきたとき、内心でほっとした。このひとは、こういう関係に慣れていて、こういう行為にも慣れていて、私はただ任せておけばいいだけなのだと。
キスもセックスも、情報としてはなにをするかくらい知っていたし、酒匂くんはそこから逸脱したりはしなかった。私は本当に、服を脱いで寝ていればよかったのだ。
30分で、全部が終わった。私は、痛かったな、と思った。ひきつれるみたいに脚の間が痛かった。でも、それだけだ。キスもセックスも、別段驚くほど独創的なことではないし、してしまったらなにかが大きく変わるとか、そんなこともない。
諒ちゃんは、これが好きなんだろうか。次々に女のひとを家に入れるくらいに。
全然、分からなかった。諒ちゃんを、こんなふうにさっぱり分からないと思うのが、これまでの人生ではじめてのことだった。
酒匂くんが、シャワーを浴びて、服を着て、部屋を出ていくまで、私はずっと、ベッドの上にひっくり返って天井を眺めていた。酒匂くんは、私のことを、変な女だと思ったかもしれない。でも、それは別にどうでもよかった。どう思われようが、もう二度と会うこともないひとだ。
しばらくそのまま、白い天井をじっと睨みつけていると、枕元でスマホが鳴った。咲ちゃんからの電話だった。
『もしもし? 真希? 酒匂先輩、もう帰ったんでしょ?』
「……うん。」
『先輩、また真希としたいみたいだよ。どうする?』
「……やめとこっかな。」
『なんで? 先輩、下手だった?』
「そういうわけじゃ、ないけど。」
『ないけど?』
「私、セックスってもう、しないかも。」
咲ちゃんが紹介してくれた男の子は、酒匂くんという他校の一つ先輩だった。私はそれ以上に、そのひとの情報を知らない。そのひとはなにも言わなかったし、私もなにも訊かなかった。そういう情報は、不要どころか邪魔になる気がした。感情がない、ただのセックスの。
指定されたホテルの天井を眺めて横たわりながら、諒ちゃんもいつも、こんなことをしていたのかな、と思った。大して感情があるとも思えない、一回きりの女のひとたちと。
酒匂くんは、多分悪いひとではなかった。少し伸びすぎた髪から漂う、不摂生な感じが、諒ちゃんになんとなく似ていた。その酒匂くんが、慣れた手つきで私を引き寄せてキスをしてきたとき、内心でほっとした。このひとは、こういう関係に慣れていて、こういう行為にも慣れていて、私はただ任せておけばいいだけなのだと。
キスもセックスも、情報としてはなにをするかくらい知っていたし、酒匂くんはそこから逸脱したりはしなかった。私は本当に、服を脱いで寝ていればよかったのだ。
30分で、全部が終わった。私は、痛かったな、と思った。ひきつれるみたいに脚の間が痛かった。でも、それだけだ。キスもセックスも、別段驚くほど独創的なことではないし、してしまったらなにかが大きく変わるとか、そんなこともない。
諒ちゃんは、これが好きなんだろうか。次々に女のひとを家に入れるくらいに。
全然、分からなかった。諒ちゃんを、こんなふうにさっぱり分からないと思うのが、これまでの人生ではじめてのことだった。
酒匂くんが、シャワーを浴びて、服を着て、部屋を出ていくまで、私はずっと、ベッドの上にひっくり返って天井を眺めていた。酒匂くんは、私のことを、変な女だと思ったかもしれない。でも、それは別にどうでもよかった。どう思われようが、もう二度と会うこともないひとだ。
しばらくそのまま、白い天井をじっと睨みつけていると、枕元でスマホが鳴った。咲ちゃんからの電話だった。
『もしもし? 真希? 酒匂先輩、もう帰ったんでしょ?』
「……うん。」
『先輩、また真希としたいみたいだよ。どうする?』
「……やめとこっかな。」
『なんで? 先輩、下手だった?』
「そういうわけじゃ、ないけど。」
『ないけど?』
「私、セックスってもう、しないかも。」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる