ルルちゃん

美里

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 朝、意識が覚醒しても、目を開けるのが怖かった。昨晩、自分がらしくないことをしてしまった自覚はあったし、どんな顔をしてルルちゃんに会えばいいのか全然分からなかった。一晩泣き続けたから、きっと両目が腫れているだろう。
 目を閉じたままじっとしていると、隣でルルちゃんが起き上がるのが分かった。そのまま足音が部屋から出ていく。そこで私は、さっと身体を起こした。今の内にこの家から逃げ出せないかと思ったのである。そして、情けなくも、自分が服を着ていないことに、おたおたと慌ててしまった。元彼とのときは、セックスが終わったらすぐに服を着ていたから、眠ってしまって裸のまま目が覚める、なんてことはなかった。
 服はどこだろう、と辺りを見回すと、ベッドの横に私の服が、きちんと畳んでおかれていた。ということは、ルルちゃんは私が眠った後も、しばらく起きていたんだろう。
 自分でもよく分からない感情になった。私のことを、はじめてかわいいと言ってくれたひと。そのひとが、私のためにしてくれたこと。
 感情の片づけ方が分からなかったけれど、とにかく私は、ベッドから下りて服を着た。そして、服を着終わって、髪を手櫛で梳いたとき、ルルちゃんが寝室の扉を開けて入ってきた。
 「おはようございます。」
 ルルちゃんは、ドアのところで立ち止まってにっこり笑った。朝の陽ざしによく似合う、爽やかな笑顔だった。このひととセックスしたんだ、と、私はなんだか不思議な気分になった。
 「コーヒー、飲みますか?」
 ルルちゃんは白い丸いお盆に、白とピンクの二つのマグカップを乗せていた。
 「私、お酒作るのより、コーヒー淹れる方が得意なんですよ。」
 冗談めかした言い方をして、私の緊張をほぐしてくれようとしているのだろう。ルルちゃんは、私を怯えさせないように、ゆっくりとベッドに歩み寄ってきた。
 私は、全身に走る緊張をなんとか隠そうとしつつ、ベッドに腰掛け直した。ルルちゃんは、私の隣に、少し距離を置いて座った。
 「どうぞ。」
 渡されたピンクのマグカップからは、芳しい香りが立っていた。お酒作るのより、コーヒー淹れる方が得意。あながち冗談でもないのかもしれない。
 私はルルちゃんの様子を片目の端で伺いながら、ゆっくりとコーヒーを啜った。普段、コーヒーを飲む習慣はないのだけれど、その一杯は朝の身体に染みわたるくらい美味しかった。
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