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49「最強騎士との遭遇」②
しおりを挟むあれはキャロルさんのお見舞いに家を訪ねた日のこと(その前に協会で誰かとひと悶着あったような気がするけど、思い出せないしどうでもいいや)。
あの人の家にお邪魔させてもらい、色々話し込んでお茶までご馳走してもらった。そしてお暇ししたすぐ後、フィナーシェの街の雑踏で水色の髪の女の人とぶつかりそうになったんだ。ちょうど今、目の前にいる人と。
しかもその女の人は見ての通り、キャロルさんと似た感じの顔立ちをしていたのだ。
ついでに彼女からちょっと辛辣な言葉をかけられた気もしたけど、不思議と嫌味が感じられなかったのも何となく思い出してきた。
「僕も、前にあの都会街で誰かとぶつかりそうになったこと憶えています。その時の人の顔も、今のあなたと記憶が一致しているんですよね」
「やっぱり、きみはあの時の。じゃあ、この手配書の写真も、きみのことで良いんだよね」
「………はい。僕はラフィ。傭兵協会から除籍処分を受けた元Ⅾ級の傭兵です」
僕は正直にそう答えてしまった。何故だろう、彼女には嘘をついたり白を切ったりすることが憚られた。彼女にキャロルさんの面影を重ねてしまっているからだろうか。
「ん、確認しておいて良かった。人違いだったら上司たちから叱られちゃうから。ラフィ………王宮が指名手配し私たち王国騎士団が追っている国家級の重罪人。私が今こうして立ち会っているきみが、その本人」
前に進むことはおろか、後退する意思すら阻まれてしまっている。その場から一歩も動けずにいる……。まるで蛇に睨まれた蛙。もちろん僕が蛙の方だ。
「ここにはあなた一人しかいないんですか?他の騎士さんはどこか近くで待機していたりとかは?」
「いないよ。この道には私以外の騎士は一人もいない。私がそう指示しておいたから。標的がここに現れたら、私一人で対処することにしている」
「それは……どうして?」
「その方がやりやすいから」
ここまでの話で、僕はようやく気付かされた。僕はここへまんまと誘導させられていたのだ。何もかもが王国騎士団の掌の上だったということ。
違和感を感じたのは王国東部に着いた時。東部の地を奔走する間遭遇した王国騎士のどの部隊も、深追いしてこなかったのだ。僕が大門の外へ出ることを諦めるのを把握した途端、追跡の手をあっさり緩めたのは、気のせいじゃなかったんだ。
大門に部隊をいくつか配置させ、僕が大門を突破しようものなら必死に応戦し、増援を寄越して確実に僕を捕まえるもしくは仕留める。
反対に僕が大門の突破を諦めて別ルートでの脱国を図った場合、無理に追うことはせず、むしろ僕の逃走ルートを誘導する策をとるようにさせていた。
僕を港町に……そこに辿り着く為のこの断崖の道に行くよう、知らぬ間にそうさせられていた……!
そして……僕を確実に止められ、無力化させられるだけの戦力を、この断崖の道にどんぴしゃで配置させていたというわけだ。
この見事なまでの兵の配置、対応策を考えた指揮官は凄い人だな。会ったことのない僕の行動を何もかも予測し対処するなんて、非常に頭の切れる人なんだろうな。完全にこちらの思考・行動パターンを読まれた気分だ。
この見事なまでの采配を行った優秀な指揮官様が誰なのか気になるところだが、今はそれよりも優先すべきことがある。
「色々教えていただき、ありがとうございました」
「別に、構わない」
「お礼ついでに、一つご提案というか、お願いがあります」
「お願い?」
それは………
「はい――どうかここは一つ、僕を見なかったことにして、そこを通していただけないでしょうか」
一等騎士ミラ・リリベルとの戦闘回避を試みること―――――
こうして対面した時点で、僕は戦わずして悟ってしまった………どう足掻いても今の僕では彼女に敵わないと。
だから、出来ることならこの戦闘、避けられるなら避けたい。ここまでの会話で、彼女からは話が通じる、分かってもらえるという手応えが感じられた。悪い人ではないのも確かだ。
何より彼女は………あの人の実の妹。あの人の大切な家族を傷つけることは、出来れば避けたい。
故にここは正直に、愚直に、見逃してもらえないか頼んでみる!
いけるか―――――?
「それはダメ」
答えは、一瞬で返ってきた。
「総指揮官《だんちょう》からはきみの身柄を拘束するか討伐をせよとしか命じられていない。作戦の変更が通達されてない以上、その命令を忠実に遂行しなくちゃいけない。騎士の任務とはそういうもの。
だから、きみの頼みは聞き入られない」
僕のわがままに満ちた懇願は、彼女に通じなかった。聞き入れてはもらえなかった……。
「そうですか………非常に残念です」
話し合いで丸く収めるという作戦は失敗だ。どうあっても彼女は僕を見逃してはくれないだろう。
「なら……やることは一つ」
僕は双剣を鞘から抜いて、構えをとった。
「力づくであなたを退けて、そこを押し通る……!」
魔力を流し込んだ双剣を同時に振り切って、先制攻撃を仕掛けた!
「―――っ」
王国騎士団最強級の騎士に、僕は真っ向から勝負を挑んだ―――――
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