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12「最低級探索者の帰還」2
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クエストを始めた当初は、どうせすぐに命を落としてゲームオーバー、死ねるんだろう……と思っていた。ところが最初の関門で超次元の力を手に入れたことで、その考えは完全に変わったのだった。
力を手にしたことで芽生えた、この力を存分に振るいたいという衝動。そしてもうしばらく生きてみようと、生への渇望。
生きて外に出たいと欲を膨らませて、残りの関門に挑むことにした。
第二の関門は「今の己」を倒し続けるという、これまた性格がひん曲がった奴が考えてそうなクエストだった。倒しても倒しても偽者を倒した時点の自分がまた偽者となって表れて、戦わされる。つまり倒す程に敵が強くなるってやつだ。
互いの全力が拮抗するような戦いを何回も繰り返してたら、いずれは体力が尽きてお陀仏になるのがオチだ――普通なら。
「相手が固有スキルを発動してもパワーアップしなかったのが救いだったな。お陰で第二も割と余裕でクリア出来たぜ」
基礎戦闘能力が同じなら、あとは気持ちの強さが勝敗を分けるものだ。実戦でもスポーツでも同じ。そしてその点に関しては、僕は最高の絶好のパフォーマンスを発揮出来たと言って良い。勝因は、僕の固有スキルだ!
固有スキル「卑屈症候群《コンプレックスシンドローム》」は負の感情を呼び起こす程に自身の身体能力が大幅に向上するという、世界規模でも類を見ない異質なスキル。
僕は戦いの度に卑屈さ、怒り、悲嘆などの感情を引き出すと同時に、絶大なパワーも発揮するようになった。そのパワーで偽者を圧倒してみせた!
素の力や戦いの技量は確かに同一で僅差無しだが、気持ちの力まではシンクロしなかったようだな。相手は負の感情を引き出すことが出来なかったのだろう、所詮は人形といったところか。まあお陰で楽に突破させてもらったけど。
問題だったのが、その次であり最後でもある第三の関門。
内容は『どんな死地からでも生き延びてみせよ』、これもやっぱり漠然としたクエストであり、最後に相応しい最も過酷で高難度だった。何より、時間がすごくかかった。
第二でもクリアに三日くらいかかって、しんどかったのに、第三にいたっては一年……いやその何倍もの年月をかけてたと思う。その証拠に髪は伸び放題ぼさぼさ、髭も生えてて、服はぼろっぼろ。まるで浮浪人だ。
で、第三の内容だけど……いたってシンプルで、世にもおぞましい怪物とのひたすら連戦。世界線をころころ変えながら戦い続け、生き延びる。以上!
いやいや期限は?いつまで生き延びればクリアなんだよ。あまりにも不明瞭なクエストに、毎日怨み言を吐き続けながら、デカくて恐怖を煽るビジュアルをした化け物どもと戦っていた。
まあ毎日怨み言を吐いてたお陰で、負の感情もどばどば出てきてパワーアップしまくれたから、命の危機に陥ったことはあまりなかったんだよね。
それに、最後のクエストでは嬉しい成長もあった。化け物との連戦で、僕にもついに汎用スキルが得られたのだ!しかも、今ではほぼ全部レベルMAXになってる!!
スキルにはレベルが存在し、1から最大7(=MAX)まで上げられる。MAXになったスキルはどれも途轍もない力と現象を引き起こす。MAXスキルを一つでも習得していたら、探索者世界ランキングの上位入り確実すら言われている。
そんなレベルMAXスキルを、僕は6つも会得している!外に出たら色々試してやろーっと。
『あなたは難易度:Unknown “超克のダンジョン”を制覇致しました。なので、念じればいつでもご自由に外へ出ることが可能です』
さて……さっきから定期的に告げてくるこのアナウンスも鬱陶しいことだし、そろそろ行くとしますか。
長年望んでいた、外へ…!
『挑戦者のダンジョンからの脱出の意志を確認。まもなく外へ繋がる裂け目が発生します』
そんなアナウンスから間もなくして、虚空にあの時と同じ裂け目が出てきた。中から光が外の世界のものかと思うと、より一層胸が高鳴る…!
『クエスト達成報酬をお渡し致します』
報酬?そう言えば最初にそんなこと言ってたな。確か、このダンジョンからの生還と、このダンジョンで得たもの全て…だったか。んー何だかなー。何年もかけて苛酷な戦いを乗り越えたんだから、財宝の一つ二つくれても良いんじゃないのとは思うんだけど……。
ま、ここで得たもの…「力」は、どんな財宝に勝るものになるんだろうから、ありがたく貰っていくけど。
『クエスト達成報酬1:このこのダンジョンからの生還』
気が付くと、僕は鬱蒼と生い茂る森の中に立っていた。ここは……ダンジョンに入る前にいた、Eランクエリアの森か!
『クエスト達成報酬2:このダンジョンで得たもの全て』
体中に力が漲ってきた!?あれ、ボロボロだった服が元通りになってる!化け物との戦いで折れた剣も盾も元に戻ってる!自分の顔も…髪もさっぱり、髭も無くなってる!もしかして、ダンジョンに入る前の見た目に戻ったのか?
だけど、力はダンジョンにいた時と同じ、満ち満ちている感じだ。念の為、ステータスを確認してみよう。意識を集中させると虚空に自身のステータスが記載されたウィンドウが表示された。ちなみにステータスは本人の目でしか認識出来ないとか。
***
霧雨咲哉 17才 男
称号 弱者男性
汎用スキル
「感知/特定」レベルMAX
――自身の周囲に潜む生物の気配を感知する。探しているもしくは見つけたい人物の居場所を突き止める。スキルレベルが上がる程、適用範囲が広くなる。スキルレベルMAXになると、適用範囲が無限となる。また、捜索対象の筆跡・電子を媒体にした文字からでも特定が可能。
「召喚」レベルMAX
――スキル「眷属」で契約した眷属獣を、自身のもとに自在に呼び出せる。また、スキル「特定」で居場所を突き止めた人物を自身のところに引きずり出すことも可能。
「転移」レベルMAX
――自身が行きたいと思うところに瞬時に行ける。また、自身が触れた人・物も一緒に転移させることも可能。
「錬成」レベルMAX
――あらゆる物質をつくりだす。スキルレベルが上がる程、複雑な機器や重火器が錬成可能。スキルレベルMAXで、どんな物も瞬時に錬成が可能。
「眷属」
――知能を持った生命体と契約を交わし、服役させる。契約の際は、両者の同意が必要となる。
「収納」レベルMAX
――物を自在に出し入れする空間収納機能が追加。スキルレベルが上がる程、収納の限度数が増える。レベルMAXで、無限に収納が可能となる。
「鑑定」レベルMAX
――人物名、生物の識別名、物の価値が分かる。スキルレベルが上がる程、詳しい情報を知ることが出来る。レベルMAXで、この世のあらゆる生物と物の情報と相場の価値(値段)の判明が可能。
***
とまあこんな感じで…。よかった。ダンジョン内で得た汎用スキル全部あるし、レベルMAXに到達したやつもちゃんとそのままだ。
残念ながら魔術スキルや強い生物に変身するスキルなんかは、ダンジョンでのサバイバルでは得ることが出来なかった。この先もっと色んな汎用スキルが得られるといいな!
『特別報酬―――』
……ん?まだアナウンスが続くのか。特別報酬……?
『あなたの称号が「無敵の人」に変更されました』
「しょ、称号の変更…!?」
称号とは、18歳になる年になるとステータスに追加される、個人に対する指標みたいなもの。探索者業界では「証」と呼ばれてもいる。
称号は特殊な条件を満たせば勝手に変更されもする。例えば剣の扱いが上手ければ「剣の達人」って感じに。
そんな称号だが僕に関してはこれまで不名誉極まりない称号だった。それがなんということでしょう、「無敵の人」に変わりました!
「無敵か……デカく出た称号になったな。ま、弱者男性なんかよりはずっとマシだから良いけど。
さて………これでアナウンスは今度こそ終わったかな?」
そのまま十秒以上待ったが、もう何も声は来なくなった。
「ふう………やぁ~~~~~っっっと!外に帰ってこられたぁ!この森も、何年ぶりに見るだろう!前は夜で真っ暗だったけど、今は明るいな」
明るさ的に今はまだ昼頃だろうか。ここは隠れスポット的な所だから、他の探索者は見かけない。
「今が何年の何日かも気になるし、状況整理しに一旦家に帰ろうか」
来た道を戻ろうという考えのもと、広がった空間の先にある一本の小道を辿って、ひたすら進む。しばらくしてさっきよりも明るい光が見えてきて、そこへ進むとさっきよりも広がったところに着いた。
「あれ、違う!魔物じゃなかった!貧相な格好の人間だぞ!?」
すぐ傍で、声が上がった。振り向くと僕と同じ年くらいの男が数人、こっちに武器を向けていた。
「あ!?お前は………」
驚きの声を上げて、こちらを指差している。向こうは僕のことを知ってるようだった。何なら僕も、彼らのことを知ってるんだが。
力を手にしたことで芽生えた、この力を存分に振るいたいという衝動。そしてもうしばらく生きてみようと、生への渇望。
生きて外に出たいと欲を膨らませて、残りの関門に挑むことにした。
第二の関門は「今の己」を倒し続けるという、これまた性格がひん曲がった奴が考えてそうなクエストだった。倒しても倒しても偽者を倒した時点の自分がまた偽者となって表れて、戦わされる。つまり倒す程に敵が強くなるってやつだ。
互いの全力が拮抗するような戦いを何回も繰り返してたら、いずれは体力が尽きてお陀仏になるのがオチだ――普通なら。
「相手が固有スキルを発動してもパワーアップしなかったのが救いだったな。お陰で第二も割と余裕でクリア出来たぜ」
基礎戦闘能力が同じなら、あとは気持ちの強さが勝敗を分けるものだ。実戦でもスポーツでも同じ。そしてその点に関しては、僕は最高の絶好のパフォーマンスを発揮出来たと言って良い。勝因は、僕の固有スキルだ!
固有スキル「卑屈症候群《コンプレックスシンドローム》」は負の感情を呼び起こす程に自身の身体能力が大幅に向上するという、世界規模でも類を見ない異質なスキル。
僕は戦いの度に卑屈さ、怒り、悲嘆などの感情を引き出すと同時に、絶大なパワーも発揮するようになった。そのパワーで偽者を圧倒してみせた!
素の力や戦いの技量は確かに同一で僅差無しだが、気持ちの力まではシンクロしなかったようだな。相手は負の感情を引き出すことが出来なかったのだろう、所詮は人形といったところか。まあお陰で楽に突破させてもらったけど。
問題だったのが、その次であり最後でもある第三の関門。
内容は『どんな死地からでも生き延びてみせよ』、これもやっぱり漠然としたクエストであり、最後に相応しい最も過酷で高難度だった。何より、時間がすごくかかった。
第二でもクリアに三日くらいかかって、しんどかったのに、第三にいたっては一年……いやその何倍もの年月をかけてたと思う。その証拠に髪は伸び放題ぼさぼさ、髭も生えてて、服はぼろっぼろ。まるで浮浪人だ。
で、第三の内容だけど……いたってシンプルで、世にもおぞましい怪物とのひたすら連戦。世界線をころころ変えながら戦い続け、生き延びる。以上!
いやいや期限は?いつまで生き延びればクリアなんだよ。あまりにも不明瞭なクエストに、毎日怨み言を吐き続けながら、デカくて恐怖を煽るビジュアルをした化け物どもと戦っていた。
まあ毎日怨み言を吐いてたお陰で、負の感情もどばどば出てきてパワーアップしまくれたから、命の危機に陥ったことはあまりなかったんだよね。
それに、最後のクエストでは嬉しい成長もあった。化け物との連戦で、僕にもついに汎用スキルが得られたのだ!しかも、今ではほぼ全部レベルMAXになってる!!
スキルにはレベルが存在し、1から最大7(=MAX)まで上げられる。MAXになったスキルはどれも途轍もない力と現象を引き起こす。MAXスキルを一つでも習得していたら、探索者世界ランキングの上位入り確実すら言われている。
そんなレベルMAXスキルを、僕は6つも会得している!外に出たら色々試してやろーっと。
『あなたは難易度:Unknown “超克のダンジョン”を制覇致しました。なので、念じればいつでもご自由に外へ出ることが可能です』
さて……さっきから定期的に告げてくるこのアナウンスも鬱陶しいことだし、そろそろ行くとしますか。
長年望んでいた、外へ…!
『挑戦者のダンジョンからの脱出の意志を確認。まもなく外へ繋がる裂け目が発生します』
そんなアナウンスから間もなくして、虚空にあの時と同じ裂け目が出てきた。中から光が外の世界のものかと思うと、より一層胸が高鳴る…!
『クエスト達成報酬をお渡し致します』
報酬?そう言えば最初にそんなこと言ってたな。確か、このダンジョンからの生還と、このダンジョンで得たもの全て…だったか。んー何だかなー。何年もかけて苛酷な戦いを乗り越えたんだから、財宝の一つ二つくれても良いんじゃないのとは思うんだけど……。
ま、ここで得たもの…「力」は、どんな財宝に勝るものになるんだろうから、ありがたく貰っていくけど。
『クエスト達成報酬1:このこのダンジョンからの生還』
気が付くと、僕は鬱蒼と生い茂る森の中に立っていた。ここは……ダンジョンに入る前にいた、Eランクエリアの森か!
『クエスト達成報酬2:このダンジョンで得たもの全て』
体中に力が漲ってきた!?あれ、ボロボロだった服が元通りになってる!化け物との戦いで折れた剣も盾も元に戻ってる!自分の顔も…髪もさっぱり、髭も無くなってる!もしかして、ダンジョンに入る前の見た目に戻ったのか?
だけど、力はダンジョンにいた時と同じ、満ち満ちている感じだ。念の為、ステータスを確認してみよう。意識を集中させると虚空に自身のステータスが記載されたウィンドウが表示された。ちなみにステータスは本人の目でしか認識出来ないとか。
***
霧雨咲哉 17才 男
称号 弱者男性
汎用スキル
「感知/特定」レベルMAX
――自身の周囲に潜む生物の気配を感知する。探しているもしくは見つけたい人物の居場所を突き止める。スキルレベルが上がる程、適用範囲が広くなる。スキルレベルMAXになると、適用範囲が無限となる。また、捜索対象の筆跡・電子を媒体にした文字からでも特定が可能。
「召喚」レベルMAX
――スキル「眷属」で契約した眷属獣を、自身のもとに自在に呼び出せる。また、スキル「特定」で居場所を突き止めた人物を自身のところに引きずり出すことも可能。
「転移」レベルMAX
――自身が行きたいと思うところに瞬時に行ける。また、自身が触れた人・物も一緒に転移させることも可能。
「錬成」レベルMAX
――あらゆる物質をつくりだす。スキルレベルが上がる程、複雑な機器や重火器が錬成可能。スキルレベルMAXで、どんな物も瞬時に錬成が可能。
「眷属」
――知能を持った生命体と契約を交わし、服役させる。契約の際は、両者の同意が必要となる。
「収納」レベルMAX
――物を自在に出し入れする空間収納機能が追加。スキルレベルが上がる程、収納の限度数が増える。レベルMAXで、無限に収納が可能となる。
「鑑定」レベルMAX
――人物名、生物の識別名、物の価値が分かる。スキルレベルが上がる程、詳しい情報を知ることが出来る。レベルMAXで、この世のあらゆる生物と物の情報と相場の価値(値段)の判明が可能。
***
とまあこんな感じで…。よかった。ダンジョン内で得た汎用スキル全部あるし、レベルMAXに到達したやつもちゃんとそのままだ。
残念ながら魔術スキルや強い生物に変身するスキルなんかは、ダンジョンでのサバイバルでは得ることが出来なかった。この先もっと色んな汎用スキルが得られるといいな!
『特別報酬―――』
……ん?まだアナウンスが続くのか。特別報酬……?
『あなたの称号が「無敵の人」に変更されました』
「しょ、称号の変更…!?」
称号とは、18歳になる年になるとステータスに追加される、個人に対する指標みたいなもの。探索者業界では「証」と呼ばれてもいる。
称号は特殊な条件を満たせば勝手に変更されもする。例えば剣の扱いが上手ければ「剣の達人」って感じに。
そんな称号だが僕に関してはこれまで不名誉極まりない称号だった。それがなんということでしょう、「無敵の人」に変わりました!
「無敵か……デカく出た称号になったな。ま、弱者男性なんかよりはずっとマシだから良いけど。
さて………これでアナウンスは今度こそ終わったかな?」
そのまま十秒以上待ったが、もう何も声は来なくなった。
「ふう………やぁ~~~~~っっっと!外に帰ってこられたぁ!この森も、何年ぶりに見るだろう!前は夜で真っ暗だったけど、今は明るいな」
明るさ的に今はまだ昼頃だろうか。ここは隠れスポット的な所だから、他の探索者は見かけない。
「今が何年の何日かも気になるし、状況整理しに一旦家に帰ろうか」
来た道を戻ろうという考えのもと、広がった空間の先にある一本の小道を辿って、ひたすら進む。しばらくしてさっきよりも明るい光が見えてきて、そこへ進むとさっきよりも広がったところに着いた。
「あれ、違う!魔物じゃなかった!貧相な格好の人間だぞ!?」
すぐ傍で、声が上がった。振り向くと僕と同じ年くらいの男が数人、こっちに武器を向けていた。
「あ!?お前は………」
驚きの声を上げて、こちらを指差している。向こうは僕のことを知ってるようだった。何なら僕も、彼らのことを知ってるんだが。
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