最低級の探索者 幻のダンジョンを制覇し無敵の人と化す

カイガ

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35「浦辺に復讐する」4

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 「おらァ!今まで僕によくも!散々嫌がらせしやがって!僕の尊厳を踏みにじり!理不尽過ぎる仕打ちをしたことに対する!僕の怒りと憎しみを!その年老いた体で噛みしめろ!!」

 ベチィ!バチィン!ビシャン! セリフと鞭打を交互に浴びせまくり、浦辺を心身ともにより一層追い込む。頭に命中すると頭皮ごと髪がめくれ、体をぶっ叩けば服が破れて皮膚がめくれて、血が飛び散る。

 「~~~っ!~~~!!~~~~~~~っ」

 鞭が命中する度に浦辺の口から汚い絶叫が上がり、痛ましい傷が新たに刻まれていく。

 「げはははァ、さっきから叫んでるだけかよ?万年最低級の僕にいいようにやられて、どんな気分よォ?以前はテメェがこうやって僕のこと、仕置きだと称して理不尽にぶっ叩いてくれたが、今はテメェがぶっ叩かれてるわけだが!どんな気持ちだ?最低か?屈辱か?ええ!?」

 ビシィィィ 「ぐわああああああああ!!」

 「ぎゃははははは、痛すぎて答えるどころじゃなさそうだな!答えずともその面を見りゃ分かるぜ、最低で屈辱でクソっタレな気分だってなァ?
 それ全部、僕が昔からずっと味わい続けたモンなんだよォ!!」

 ベチィィィ! 「がぎゃああああ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーー!!」

 「おらどうしたァ、僕と同じ目に遭うのがそんなに嫌なら、立ち上がって反撃してこいやァ!やれるもんならなァ!
 このギルドのエース探索者だった長下部をぶち殺した僕に、勝てるならなーーーァ!!」



 ――浦辺視点――

 苛烈さを増していく鉄の鞭責めをくらいながら、俺は悟った。こいつはもう俺が知ってる霧雨なんかじゃない、今までのあいつの皮を被った化け物だと。
 長下部の決闘前の時点で気付くべきだった、こいつからさっさと逃げておくべきだって。
 いくら強くなったといっても上位ランカーの長下部には及ぶまいと思い込んでしまった。決闘の場でこのガキが長下部にズタボロにされることの期待ばかりしていた。決闘が終わった後に俺がこいつをたっぷり甚振ってやろうと、そんな後のことばかり考えていた。
 
 そのせいで、俺はこのガキが上位ランカーの探索者すら簡単に食っちまうくらいに強い化け物だってことに気付くことが出来ず、そしていつの間にか俺までこいつの餌食になっちまってた……!

 ああああああああああ!嫌だ!怖い、怖い!今は最低とか屈辱とか胸糞とかよりも、痛くて怖いって気持ちの方が強い……。
 このままだとこの怪物に嬲り殺されてしまう!嫌だ、死にたくない…!

 どうにかして、この怪物に許してもらわないと―――!

 「き、霧雨ぇ……。頼む、俺の話を、聞いてくれぇ…!」





 ――咲哉視点――
 
 「――あ?話だァ?」
 「そ、そうだ……俺と交渉しよう!俺を殺さず、見逃してくれれば、お前をこのギルドの絶対エースにしてやる!俺が上にかけ合って、お前を今すぐ二桁位内の上位ランカーにしてやる!」
 「………はァ?」
 「い、今このギルドで一番ランクが高いのは、牧瀬詩葉だが、それだけの強ければ間違いなく50位内になれるはずだ!し、知ってるか?国内ランキング50位内になれば、素材を通常より高く買い取とってもらえる他、色々便宜が利くようになるんだぞ。あとはパスポートが発行されて、海外の探索エリアに気軽に行けるようにもなるんだ!」

 引きつった笑顔で浦辺はベラベラと喋り続ける。

 「いやそれよりまずは、この惨状の後処理が先だな!もちろん霧雨が犯人だってことは伏せる!そんなことするはずがないだろ!な、何たって俺たち長い付き合いだしな!お前だって、公安に目はつけられたくないだろ?あいつらは今のお前でも敵わないくらい強い化け物が揃ってるって噂だからな!
 それに、お前とお前が従えているあの獣人たちと牧瀬がいりゃあ、ここは日本一の支部の探索者ギルドに成り上がる!お互い、美味い思いだって出来るぞ!」

 僕は鉄の鞭を空間収納にしまい込む。見逃してもらえるのかと思ったのか、浦辺は安堵の表情を浮かべて、さらに口数を増やす。

 「そ、そうだ!それで良いんだ!その……色々悪かったな!霧雨の言う通り、俺はお前に散々酷いことしちまって……うぅ、お前は何も悪くないのに、必死こいて頑張ってたのに………俺は、何てことしちまったんだろうなぁ。
 あ、謝って許されることじゃねーのは分かってる!だから、言葉じゃなくて行動で精一杯償いをさせてくれ!そして今後は、その獣人や牧瀬と一緒に探索者業界で高みを目指して………」

 一人で勝手に盛り上がり続ける浦辺に、僕は一つ尋ねる。

 「浦辺、僕が探索活動したことで発生した報酬。探索エリアで採取してきた素材を買い取りに出して、お金に替えてもらったけど、僕が今まで受け取ったあのお金ってよォ、ちゃんと適正価格だったか?」

 どす黒い感情を露わにしながら問うと浦辺は滝にでも打たれたのかってくらいの汗を流しながら「い、いいえと」答えるのだった。

 「き、霧雨が換金に出してもらった素材のほ、ほとんどは………ギルドが定めた適正価格よりも、安く取り引きして、しまいました」
 「だよなあ?てなわけで今すぐ、今までちょろまかしてきた分の金を、利子倍につけた分も足してここに持ってこいや」
 「え………あ………………」
 「今の僕はテメェの髪の毛よりも気が短ェんだ!さっさとしねーとここですぐにぶち殺すぞクソが!!」

 そう怒鳴ってやると浦辺はズタボロの身体を必死に引きずって、ジムからとび出て行った。それから数分後、浦辺は厚みがある封筒を手に僕のところに戻ってきた。

 「ふ、不当に金額を差っ引いてた分に利子分も乗せた分全てにございます!か、確認してください……!」

 怯え切った浦辺を尻目に封筒の中身を確認する。それにしても少ない金額だな……。あの頃はEランク魔物すら倒すのがやっとだったから、こんなもんか。

 「まあいい、金の件はこれでしめェだ。
 じゃあ次、テメェがさっき勝手に盛り上がり、ごちゃごちゃ並べてやがった提案だが………」
 
 再び「収納」で空間収納を出す。取り出したのは拳銃一つだけ。

 「へ……それは何―――」

 ズガァン! 浦辺の膝を撃ち抜いた!

 「答えは全部、ノーに決まってんだろクソボケがぁぁぁぁーーー!!」
 「うぎゃああああああああああああっ!?」

 膝の皿に手をやって転げ回る浦辺。奴のもとに血だまりが出来上がっていく。

 「黙って聞いてりゃあ、好き放題に喋りやがって!テメェのセリフ、ムカつく部分があり過ぎてもうどこにキレりゃあいいか分かんなくなっちまったぜ!
 だがまずは、テメェはいつまで上から目線で口利いてやがんだ!?」

 ドパァン!右手を吹き飛ばした! ズガァン! もう片方の膝も撃ち抜いた!

 「あばあああああ!でぎゃああああああ……!」
 「何が交渉だ!僕とテメェが対等な関係だとまだ思ってやがんのか!要は、この件を公安にチクらないでおいてやるから、自分が出した提案を飲めってことだろ!
 いつまで僕と対等かそれ以上の目線で物言ってやがんだ!今は僕が捕食し蹂躙する側で、テメェはただ頭を垂れて搾取されて嵐が過ぎ去るのを震えて待つだけの存在なの!一丁前に僕と交渉する立場じゃねーんだよ!!」

 ドパァン!ドパァン!両足も吹き飛ばしてやった!

 「あ、ああああ゛あ゛あ゛あ゛…………っ」
 「だからさァ、馬鹿なの?僕がいつテメェを許したって言った?どこまで自分の思うように物事が進んでると思ってやがんだ、アア?
 いい加減、理解しろよ。テメェはさっきからずっと、そのドタマに銃口を突き付けられ続けてることよォ。僕の顔を見て察しろよな、どう足掻いてもテメェを待つのは、絶望しかねぇってことに」

 手足を失い膝も撃ち抜かれ、全身裂傷だらけでボロ雑巾と化した浦辺。顔を引きつらせ、血の気がサァっと引いていき、

 「あ……あ……っ 嫌だ、いやだあああああああああ」

 無様に泣き叫ぶのだった!

 「そうだ、それだよっ!テメェのその絶望で顔を引きつらせるところが見たかったんだよおおおおおっ!」

 ん気持ちぃぃぃぃぃ!!脳汁が出るううううう!!復讐はこうでなくっちゃな!!笑いが、止まらねーーーーー!!

 「くそ、くそぉ!笑うなぁ!?霧雨ごときが、最低級の底辺弱者が、このギルドで一番偉い俺を笑うな――――」

 ガッッ 巨大化した掌で浦辺の喉を引っ掴んで、ギリギリ絞め上げる。

 「うるせェ。黙れ、死にやがれ」

 ゴキャ そのまま浦辺の頸骨をバキバキに砕いてやった。血の泡をぶくぶく吹いて、瞳から生気が失ったのを見て、ニヤッと笑い、
 ドキャ! 〆として固い床に叩きつけてやった!

 「よぉおおおしっ 長下部に浦辺、僕を馬鹿にしやがった探索者は粗方ぶち殺せたな。残りってる連中は、まあ……出くわした時、僕を馬鹿にしやがったらぶっ殺すってことで」
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