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36「後始末」
しおりを挟む牧瀬詩葉をはじめとした今日ここに来てなかった北関(=北関東)支部の探索者どもは、ひとまずスルーで。あいつらの何人かにも馬鹿にされたから殺したいとは思ってるが、こっちから探し回ってくのはめんどくせぇ。
「あー咲哉さま。言いつけ通り、この雌どもは生かしたままにしてますにゃー」
ジムから出るとミィが長下部のパーティの女探索者どもを指して(血の付いた爪で)、不満そうに言う。
「何だその不満そうな目は。スノウ、テメェまで」
「だってぇ、探索者はみんな殺したのに、どーしてこの雌どもだけは生け捕りにさせてるんですかー!」
「だからさっき言ったろ、面白ェこと思いついたんだよ」
不満そうに見てくるミィとスノウを押しのけて、真っ青な顔でブルブル震えてやがる長下部の女どもに顔を近づけながら話しかける。
「オイ。テメェらから見て、僕はブサイクに見えてるんだろ?」
「い、いえ……、そそんなことは決して!むしろ、凄くイケてるかと―――」
「見え透いたウ・ソ、つくんじゃねェよ!虫唾走るんだよ!いいか、思ってることを正直に言え。でねーとドタマかち割んぞゴラ」
「へあああ……ごめんなさい!しょ、正直、ブサイクでおぞましいですっ」
「だろうなァ。残りもそう思ってんのか?」
残りの二人も壊れた人形みたいにコクコク頷いた。
「僕はなァ、化け物みてぇな力と引き換えに、他人からは醜悪に映って見えるようになっちまってんだわ。ブサイクに見えるが正常なんだよ。
で、そんな僕に抱かれても良いって、テメェらは思うか?言っとくが抱くってのは枕営業の意味だからな?」
僕の質問にミィとスノウがまた過剰に反応して突っかかってきた。それを制しながら女どもの反応を見ると、どれも渋った感じの面をしていた。
「ああ答えなくていい、その面見れば僕に抱かれたくねぇのが丸分かりだ。ハッ、僕だって長下部のモノだったテメェらなんか、指も触れたくねーわ!虫唾が走る!」
そんな罵倒を受けても女どもは相変わらず怯えてるだけだが、心の中では屈辱の怒りで満ちてやがんだろーなァ。
「じゃあテメェらは、僕に殺されない為には、何を差し出せば良いんでしょーかァ!?」
床をダァンと踏み鳴らしながら強い声で問いかける。女どもはびくびくしながらも、振り絞った声で答えを次々告げる。
「お、お金……ですか?」
「そうだ、金だ!全員せいかーい!」
再度床を踏み鳴らして、拍手を送る。
「というわけで、今から一週間までに、これまでの僕にした仕打ちに対する慰謝料…3000万円を、全員で揃えて用意してこいやァ!!」
両手で中指突き立てながら、多額の慰謝料を請求してやった。
「そ、そんな大金……三人でもむ―――」
「ここで無理つったら、即座に銃殺刑に処おぉぉぉす!!今すぐそこら中に転がってる連中の仲間入りにしてやるからなァ!?」
拳銃を見せつけて怒鳴ると、三人とも口を塞いで言葉を飲み込んだ。
「金を短期でがっぽり稼ぐ方法なんざ、世の中腐る程あるだろが!女ならなおさらなァ!金持ちのイケおじもしくはハゲデブオヤジに何発もヤらせるなり、サラ金業者から金借りまくるなり、家族や親せきに金持ちがいるならそいつらを上手く丸め込んで金を引き出すなり、闇バイトなり、金品と家全部売っ払うなり、臓器もいくつか売っ払うなりして、用意してこんかい!!」
女どもは泣きながらこくこく頷いた。
「あ、あの……言われた通りのお金を払ったら、私たちのことは見逃していただけるんでしょうか?殺さないで、くれるのでしょうか?」
「あ?何言ってやがんだ?テメェらが僕に交換条件を言える立場だとでも?やっぱり今すぐぶち殺してやろうかァ!!」
「あああああごめんなさいごめんなさい!!何でもないです!必ず3000万円用意してきます!!」
「ハン、テメェらは僕の命令に従ってれば良いんだよ!ああそうそう、この事を公安とか誰かにチクりやがったら、速攻でテメェを殺してやる。テメェらの匂いはミィが憶えたから、どこに隠れようと無駄だからな?」
こうして多額の慰謝料を条件に、長下部の女どもだけここで殺さないことにした。スノウに超能力を解かせて、館からも出してやった。一週間後にはしばらく生活に困らないくらいの金が入るぜ、やったぜ!
「咲哉さまー、ホントにこれで良かったのかにゃー?そんな額のお金で、あいつらを見逃すにゃんて……」
「ばっかテメェ、誰が見逃すし殺さないって、約束したよ?面白れぇこと思いついたって何度言わせんだ。
一週間後、言った通りの金を僕のところに持ってこさせ、ああこれで助かるって奴らが安堵したところを、まとめてぶち殺してやるんだよ!」
喉元を掻っ切る仕草をして、そう答えてやる。
「にゃ~~るほど!?さっすがは咲哉さま!えげつない外道っぷりだにゃ!」
「はい、私たちが考えもつかないような外道な筋書きでございます。人間の恐ろしさと醜さを十分に理解されている咲哉様だからこそ思いつかれる、最悪で胸糞なシナリオでございますね」
「絶対褒めてねーよな、オイ。それよりもだ、ちと証拠隠滅をしておかねーとな。まず死体を全部、ばっちぃが空間収納に移動させて―――」
地下には長下部、浦辺など北関の人間の死体がたくさんある。それら全部を異次元の中に一旦しまい込む。
「で、次はそこら中に飛び散ってる血と脂の除去だ。スノウ、魔術で全部洗い流せ。設備は壊しても構わねぇ。今後僕がこんなところを使うことは、もう無いだろうしな」
「ご命令のままに―――」
スノウの水や熱を使った魔術で、地下の至る所の血と脂と肉片など……僕と眷属獣がここでの殺しの限りを尽くした証拠を洗い流し、焼き払わせた。
「……よし。思った以上に綺麗になったな。これなら万が一ここを訪ねた奴が来ても、すぐには気付くまい。
あとは、ここを完全に封鎖して、何かしらの証拠隠滅と偽装工作は完了だ」
一階に上ったところで、館内の地下直通エレベーターを破壊し、地下へ続く階段も塞いでやった。これで僕の犯行が知れ渡るまでの時間はそれなりに稼げるだろう。どうせすぐにバレるだろうが、今日明日くらい隠せてれば、それで良い。
「それまでの間で、今まで踏み入れられなかった探索エリアの探検をしてやるぜ!」
この前はⅮランクの草原まで行って終えたが、当然まだまだ物足りねー。C→B→Aの難易度の順にエリアを回って、幻のダンジョンに入る前の頃では出来なかった充実した探索活動をするのさ!
「そうと決まれば、ここの金品全部回収し、死体もテキトーな場所にとっとと捨てに行かねーとなァ!」
一階から三階全部回って、現金と金品を全部回収。現金だけでも数百万円ゲットしたぜ!
死体は近場のゴミ処理場に、どばーっと捨ててやった。ざまぁみやがれ!テメェらの骨を埋める場所なんざ、悪臭放つゴミ溜めの中がお似合いなんだよ!
やる事を終えたところで、改めて探索者の醍醐味である探索活動へ、いざ。
「そういうわけだから、探索は僕一人でやる。二人はもう帰ってろ」
「えぇ~~~!?一人で行くならアタシたちも連れてってにゃー!」
「そうです!咲哉様の足を決して引っ張らないと誓いますので、どうか――」
「うるさい黙れ!僕に探索パーティなんて、必要無いんだよ!
慰みのつもりで同行を提案してんだったら、いくらお前らでもぶち殺すぞ?」
「う………ごめんにゃさい、にゃ……」
「申し訳、ございません。どうか、お気をつけて………」
黙らせた眷属獣たちを帰してやったところで、まずはCランクの探索エリアの探検を始めた。
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