最低級の探索者 幻のダンジョンを制覇し無敵の人と化す

カイガ

文字の大きさ
56 / 60

54「四人目の眷属獣」

しおりを挟む

*公安が咲哉の旧住宅地を突撃する二日前―――


――咲哉視点――


 スキル「転移」を発動した直後、ボゴォと重くて大きなものを引っこ抜いたような音が鳴り、そのすぐ後にズウゥンと重い地響きが鳴った。

 「にゃにゃ!?今の音は?というかここどこにゃ?」 
 「じ、地震みたいな揺れも感じましたね。それにここは、さっきまでいた住宅街ではありませんね」
 「こ、ここは……主と共に飛んで来た場所だ。さっきのところからここまで飛ぶのに15分近くかかったのに、なんとたった一瞬でこの場所に移っている!?」

 ミイ、スノウ、ジェット皆驚きの声を上げながら辺りを見回していた。

 「着いたぞ、京都に」
 「にゃあ!?本当にもう京都に着いたのかにゃ!?」
 「私たちだけでなく咲哉様のお家まで、700㎞近く離れた地へ一瞬で転移させた…。レベルMAXの転移スキルはここまでのことも可能にさせるのですね……」
 「移動速度においては主の眷属獣の中ではこのジェットが一番と自負していましたが、主と比べると…いえ比べることすらおこがましく思われますね」
 「ところで咲哉さま、今の一瞬でいったい何が起きたのかにゃ?」
 
 ミイが今回の「転移」の経緯について尋ねる。残りの二人も同じこと考えてたらしく、こちらに注目する。

 「いやいや別に複雑で面倒で難しいことは一切してないよ。僕たちと一緒にこの家もここに転移させた、それだけだ。まあその際さっきまでいたとこの地盤までくり抜いて、こんな感じになっちゃったみたいだが………」

 そう言ってこの地に転移させた家のありさまを見る。家自体は何ともないのだが、問題は家の下…土地部分だ。地盤ごと家を転移させたせいで地盤がこの土地の上に乗っかってしまい、玄関の位置が僕らの目線よりも上にある状態だ。
 こうなることを想定して、予めここに家の面積分の大穴を掘っておくべきだったな。いやー失敗しちゃった、はは

 「うーん、力づくでやろうとすると今度は取り返しのつかない失敗をしそうだなあ。俺には土壌除去とかの知識なんて無いから、どうすりゃ良いか分からん」
 「あたしも同じくだにゃ」
 「ミイは当然として、私もこの手の処理に関してはお力添え出来そうにありません……」
 「二人に同じにございます。申し訳ございません、主」

 あたしは当然ってどういう意味にゃーとスノウに突っかかるミイをよそに、僕はスキル「召喚」の発動を進めていた。

 「主、この場で召喚をなさるということは、“彼”を使うのですか?」
 「ああ。俺もここにいるお前らも無理となると、もうあいつを呼ぶしかないだろ」

 ジェットに頷きつつ僕は虚空に手を掲げる。

 「スキル「召喚」――眷属獣シュンメーを、主人たる僕のもとに呼び出す!」

 直後、虚空から2mを超える筋骨隆々の黄色髪の大男が、僕たちの前に現れた。

 「我が主咲哉さまの忠実なる眷属獣シュンメーが、参上つかまつったぜ!おお、咲哉さま!久しぶりなんだぜ!」

 召喚早々その男…シュンメーはよく通る声で名乗り、僕に挨拶をした。こいつもミイたちと同じ僕の眷属獣で、今までの眷属獣と同じく、Unknown幻級のダンジョンでクエストをこなしていた時にであった馬の獣人だ。
 人間形態だというのに、変身前の僕が見上げる程に大きい。ジェットもなかなかの高身長のはずだが彼さえも見上げるくらいだ。

 「久しぶりだな。既に呼び出しておいてなんだけど、仕事中のところを邪魔しちゃったかそれとも副業の最中だった?」
 「ワハハハ、何を言ってるんだ咲哉さま!本業の雇い主も副業の運営局も、咲哉さまがどちらも滅ぼしてくれたではないか!お陰で俺は職無しだ!」
 「あーそうだったっけ?でもあれって途中から化け物どもが暴れたせいで滅んだんじゃなかったか?」
 「おお、そうだったな!いやーあの時咲哉さまと共に奴らと戦った時のことが昨日のことのように感じられるなあ!今までにない高揚感をおぼえたものだ!」
 「そうか。じゃあ昔話はこの辺にしておいて、早速だけどお前にやってもらいたい事があるんだわ」

 話を本題に変えて、お引越しのことをシュンメーに説明してやる。

 「なるほど分かった!そういうことならこの俺に全て任されよ!」

 相変わらずデカい声で快諾するとシュンメーは全身に自然エネルギーっていうの?そんな感じの変わったエネルギーを漲らせて、我が家とその下の地盤の下敷きとなっている元の土地に両手をズンと置く。
 すると地盤の真下の土壌がズズズと沈みはじめ、前住んでいた場所から引っこ抜いてきた地盤も段々地下に、本来正しい位置へ下降していく。

 「にゃ~~~、凄いにゃ。何をやってるのか分かんにゃいけど、とにかく凄いにゃ」
 「相変わらず声が無駄に大きく騒がしい人ですが、土壌のことになるとその腕前は繊細かつ正確、そして速い。咲哉様のお家に何の損傷も与えることなく、邪魔な土壌だけを的確に除去していますね」
 「これを見ると改めて認めざるを得ないな、大地の分野において奴の右に出る者はいないと。
 あ、いや……今のは決して主が奴より劣っていると言ったわけではなくてですね」
 「いいよ。僕もみんなと同じこと思ってるから」

 シュンメー…というか馬獣人には大気中に存在する自然エネルギーとやらを扱い、その身に宿すという特殊能力が、生まれながらに備わっている。
 そのエネルギーを普段の生活…特に農耕やこういった土壌除去に活かしているというわけだ。
 シュンメーはこんな見た目で声もデカい奴だが、こういう土壌作業に関しては一族の中でも一番の技量と繊細さを誇っている。

 そうやってシュンメーと出会った時のことや馬獣人の特徴について振り返っていると、僕の家の位置が正しいところに落ち着いた。

 「よおし、こんなもんと言ったところかあ!どうだい咲哉さま、ここに元あった土地・土壌以外は何も動かしてないから、この家に何か傷や破損をつけてはないと思うが」
 「おお……!玄関ドアがちゃんとほぼ同じ目線の位置になってる。周辺の土も違和感が全然無い、何なら視察に来た時よりも綺麗になってる!
 さすがは大地の馬獣人族、持つべきは専門家だわ」

 シュンメーの絶妙な土壌コントロールのお陰で引っこ抜いてきた地盤もこの新しい土地に馴染み、水道も繋がっているようだ。

 その後は今回引っ越してきた地の住所確認、光熱でんき・ガスの通電・開栓、ネット接続など生活のインフラ整備をみんなでこなしていった。
 地図アプリを開いたらここが京都の京丹後市…その最北部であることが分かった。市の中でもかなり僻地なのか、周りには僕と同じような一戸建てや賃貸マンションといった民家はあまり見られず、寂れた区域となっている。
 僕にとってはありがたいことだった。前から僕は人気が無い寂れた空間にいる方が落ち着くタイプだから。
 
 とはいえこんな寂れた住宅街でも、いるにはいるわけで、さっきからこちらを見ている住民が何人かいる。さっきのシュンメーの土壌作業を見ていたからかもしれない。
 目立ちたくないのでさっさと家に入ることにした。東京と比べて京都は湿度が高く、若干蒸し暑いな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...