普通になれない私たちは

たけのこの子

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こうしてボランティア団体ARTに所属することになった私は次の日、早速事務所に向かうことになった。

小さなビルの一角に構えられた事務所は整理されていたし、部屋が複数ある。お金ももらっていないのにこんなお大きいところ使ってて大丈夫なのか・・?

「一応こうして事務所は構えていますが基本的には生徒さんの方に行かせてもらってるので、ここは基本何してもいいです、なんなら部屋は余ってるので奥の部屋の余っているところで寝てもらっても構いませんし自由にしてください」

「わかりました・・」

「そんなに気を張ることはないですよ、それぞれの部屋に鍵がついているので宮野が入ってくることはありませんし、家賃がないので私もここに住んでいます」

そう微笑んだ田川に思わず聞いてしまった。

「ボランティアでお金はもらっていないんですよね?どうしてこんなに大きい事務所なんか・・」

「このビル全体が宮野の持ち物なので好きに使えるんです。」

宮野さん、、前から少し独特だなと思ってはいたが何者・・!?
思考を巡らせながら宮野を睨みつけていると、少し困ったように話し始めた。

実は宮野の父は有名な貿易会社の社長らしく、このビル自体もその資産の一部らしい。元々宮野は父の会社で跡取りとして働く予定だったが、ADHDが発覚してからはその話がなくなり、このビルと毎月多額の生活費が入る代わりに自分の息子だと公言しないこと、実家には顔を出さず毎年一月に近況報告のみをすることなどの条件を契約したという。
有り余る生活費を元手に宮野はメンタルサポート一本の会社を立ち上げたが、今は社長を引き継ぎ、表向きは代表取締役という肩書きなのだそうだ。
幸か不幸か何とも言い難いエピソードに言葉を詰まらせていると宮野が口を開く。

「家族に会えないのは辛いですが、僕の会社の社員たちや二人みたいに、家族のような人たちができました。僕はそれで十分です」

そう目を伏せる宮野の表情がなんとも言えなかった。
そんな空気を断ち切るように宮野はルームツアーを始めた。一通り部屋紹介が終わりみんなで一息つきながら話をする。

「それで川本さんどうしますか?こっちに住まれます?この建物が嫌であれば他の建物準備しますけど」

「ちょっと考えます・・」

生活が今の時点でカツカツなのはあるが、流石に組織に入ったとはいえ住むのは抵抗がある。

「わかりました、住みたくなったらいつでも言ってくださいね、それとこれは僕から二人への提案なんですけど、ボランティア活動とは言え時間を使ってもらっていて給料が発生しないのもどうかと思うんです。なのでこのボランティア団体自体を僕の会社の部にしてしまうのはどうかなと」

「部ですか?」

「はい、その場合は固定給で、部長には田川についてもらいたいと思っていますが、この3人の中で序列を作っていないので給与は一律で総支給30万、業務としては今までと変わりません。私は部署に所属はしませんが、業務はいつも通りします。元はボランティア活動なのでノルマはないしもちろん福利厚生はつきます。悪い話ではないと思うのですがいかがですか?」

「でもそうなれば生徒さんからお金を取ることにはならないんですか?」

本来の目的から外れるのではないかと危惧した田川が口を開く。

「そこは安心してください、今まで通り生徒さんからお金はいただきません。会社経営の上での複雑な話が絡んでくるので割愛しますが、会社の利益から給料が支払われるので生徒の方から報酬をいただくことはしません。」

難しい話だが相当儲かっているんだな・・改めて宮野の立ち位置の凄さに驚いた。

「総支給が30というのは少し高いように思うのですが給与設定は」

「普通の業務ならもう少し下げてもいいとは思うのですが、私たちが請け負うような仕事は人の負の感情の影響をダイレクトに受けます。なかなか心労の大きい仕事でもあるのでこの給与設定にしてあります。他に何か質問はありますか?なければこのまま話を進めて、問題点があれば進めながら添削していきましょうか」

二人から異論は出ず、流れるままに就職先が決まった。

というか、今の時点で業務内容の説明もされてないけど大丈夫か・・?_________
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