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Long goodbye<1>
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ある日の昼下がり、ランチタイムのピークも落ち着いた頃。
「翔ちゃん居るかい?」
顔馴染みのタクシードライバー、弦《ゲン》さんがやってきた。
「いらっしゃい弦さん、日替りでいい?」
「今日は違うんだ、このお客さんがジンさんに用があるらしくてさ、他のクルマに乗ろうとしたけど話が通じなくて俺が引き受けたんだ」
金髪碧眼の青年がそこにいた、歳は僕より少し若いくらいか…
『僕はフィリップと言います、オーナーのジンサンにお会いしたいです』
『オーナーは引退してもうお店には出てこないんだ、電話するから直接話してみるかい?』
『もちろんです』
僕はオーナーの携帯電話に掛けてみた。
発信するとすぐに出てくれた。
「やぁ翔太郎くん、どうかしたかね?」
「実は外国からのお客さまがオーナーにお会いしたいと…電話変わりますね」
フィリップと名乗る青年に携帯電話を渡した。
オーナーはもともと名の知れたホテルの料理人を経て公邸料理人になった人で海外にも友人が多い。
本名は仁の一文字で「ひとし」と読むのだが、音読みのジンのほうが外国の人には発音しやすいとかでジンさんと呼ばれることが多い。
まだお店に立っていた頃も海外からのお客さまがオーナーを訪ねて来ることが多かった。
海外の在外公館に赴任していた頃の人脈は驚くほど幅広く、ある時など外交官ナンバーを付けた黒塗りの大型セダンが店に横付けしたと思ったら、煌びやかな勲章をたくさん付けた制服姿の軍人が降りてきてオーナーとチェスに興じて帰っていったこともあった。
だいたい外国からオーナーを訪ねて来る人は年配の人で、たいていお茶を飲みながらチェスとお喋りをして帰っていくことが多かった。
オーナーとの通話は終わったようでフィリップが携帯を返してきた。
「翔太郎くん、すまないが今日はそちらへ行けないから明日あらためてフィリップくんと店で会うことにしたよ、駅前のホテルに滞在してるらしいから弦さんに送らせてもらえるかな?」
「わかりました」
僕は弦さんに説明してフィリップを駅前のホテルまで送ってもらうことにした。
お店のあるオフィス街は外資系の会社も多いので外国の人は珍しくないが、観光客はほとんど来ないので英語のできるタクシードライバーはそう多くない、弦さんはオーナーから英会話の手ほどきを受けていたので界隈では重宝されているようだ。
「ショウタロウサン、アリガトゴザイマシタ」
フィリップは片言の日本語でお礼を言うと弦さんの車に乗りこんだ。
「じゃあ弦さん、お願いします」
「まかせといて、明日も俺が連れてくるから」
そう言って弦さんが駅のほうへ向けて車を走らせるのを僕は店の前で見送った。
入れ代わるようにありすが出勤してきた。
「おはようございまーす、さっきタクシーに乗っていった金髪の男の人誰ですか?」
「おはよう、オーナーの知り合いらしいよ」
「ふーん、ちょっとカッコよかったですね」
「ありすちゃんあんな感じが好みなんだ」
「えへへっ」
ありすは照れくさそうに笑った。
「翔ちゃん居るかい?」
顔馴染みのタクシードライバー、弦《ゲン》さんがやってきた。
「いらっしゃい弦さん、日替りでいい?」
「今日は違うんだ、このお客さんがジンさんに用があるらしくてさ、他のクルマに乗ろうとしたけど話が通じなくて俺が引き受けたんだ」
金髪碧眼の青年がそこにいた、歳は僕より少し若いくらいか…
『僕はフィリップと言います、オーナーのジンサンにお会いしたいです』
『オーナーは引退してもうお店には出てこないんだ、電話するから直接話してみるかい?』
『もちろんです』
僕はオーナーの携帯電話に掛けてみた。
発信するとすぐに出てくれた。
「やぁ翔太郎くん、どうかしたかね?」
「実は外国からのお客さまがオーナーにお会いしたいと…電話変わりますね」
フィリップと名乗る青年に携帯電話を渡した。
オーナーはもともと名の知れたホテルの料理人を経て公邸料理人になった人で海外にも友人が多い。
本名は仁の一文字で「ひとし」と読むのだが、音読みのジンのほうが外国の人には発音しやすいとかでジンさんと呼ばれることが多い。
まだお店に立っていた頃も海外からのお客さまがオーナーを訪ねて来ることが多かった。
海外の在外公館に赴任していた頃の人脈は驚くほど幅広く、ある時など外交官ナンバーを付けた黒塗りの大型セダンが店に横付けしたと思ったら、煌びやかな勲章をたくさん付けた制服姿の軍人が降りてきてオーナーとチェスに興じて帰っていったこともあった。
だいたい外国からオーナーを訪ねて来る人は年配の人で、たいていお茶を飲みながらチェスとお喋りをして帰っていくことが多かった。
オーナーとの通話は終わったようでフィリップが携帯を返してきた。
「翔太郎くん、すまないが今日はそちらへ行けないから明日あらためてフィリップくんと店で会うことにしたよ、駅前のホテルに滞在してるらしいから弦さんに送らせてもらえるかな?」
「わかりました」
僕は弦さんに説明してフィリップを駅前のホテルまで送ってもらうことにした。
お店のあるオフィス街は外資系の会社も多いので外国の人は珍しくないが、観光客はほとんど来ないので英語のできるタクシードライバーはそう多くない、弦さんはオーナーから英会話の手ほどきを受けていたので界隈では重宝されているようだ。
「ショウタロウサン、アリガトゴザイマシタ」
フィリップは片言の日本語でお礼を言うと弦さんの車に乗りこんだ。
「じゃあ弦さん、お願いします」
「まかせといて、明日も俺が連れてくるから」
そう言って弦さんが駅のほうへ向けて車を走らせるのを僕は店の前で見送った。
入れ代わるようにありすが出勤してきた。
「おはようございまーす、さっきタクシーに乗っていった金髪の男の人誰ですか?」
「おはよう、オーナーの知り合いらしいよ」
「ふーん、ちょっとカッコよかったですね」
「ありすちゃんあんな感じが好みなんだ」
「えへへっ」
ありすは照れくさそうに笑った。
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