花嫁は猫又⁉︎

龍神の子＜2＞

「心を磨く…か、そうだね」

翠明すいめいさんの言葉に僕は頷いた。

「貴方と猫又…にあさんとは一心同体、二人が心を合わせれば大きな力となるでしょう」
「その…にあの事なんですけど」

そこでみどりさんが言葉を繋いだ

「彼女は貴方が生み出した存在、いわば貴方の分身とも言えるでしょうね、彼女はおそらく最期の力をふりしぼって貴方の力を受け取って今の姿を現実のものとした」
「…ということは、いつかは？」
「貴方から命を分け与えた形ですから貴方の生命が尽きれば彼女も…と言うことになりますね」

なんとなく今までにあと僕の間に起こった不思議な出来事の理由わけが分かったような気がした。

だけど僕はこれからにあと生きていくためにどうすれば最善なのかまだ考えが及ばずにいた。

それを見透かされていたのかみどりさんが言った。

「心配せずとも道は開けます、そのために貴方は修行なさっているのだから」

確かにそうだ、僕にはこれからまだ学ばなければいけないことがたくさんある。

「ありがとうございます！」

「貴方とわたくしたちは同じ龍神の眷属、その力を正しきことに使うためには心正しくあることです」

そう言ってみどりさんはにっこりと笑った。

そして僕たちは翠明すいめいさんとみどりさんに見送られてお寺をあとにした。

帰りの列車の中で考え事をしているとにあが言った。

「たける、焦らないことだよ」
「うん、わかってる、話を聞いて少し気持ちが晴れたよ」
「わたしはずっとたけるのそばにいるから…」

人とあやかし、どちらにも近い立場の僕たちにできること、これから少しづつ探していくしかない。

まずは学ぶこと、そして見聞を広めること、今の僕にできることはそれしかない。

長い列車の道中、緊張が解けたふたりは身体を寄せて眠っていた。

にあやみんなが幸せそうに笑っている夢を見た。

気がつくともうすこしで降りる駅だった、寝ぼけ眼のにあをうながして降りる用意をする。

明日からまた修行に日々が始まる、僕自身のため、そしていつまでもみんなが笑顔でいられるよう頑張ろう、そう気持ちを込めた。

それ以来僕と翠明すいめいさんは頻繁に連絡を取り合うようになった。

同じ龍神の眷属というだけでなく、歳の近い友人として、そして神仏の守り人としてお互いを磨き合う存在として。