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河童の里の龍神<2>
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白い煙に包まれて僕は頭の中に色々なものが流れ込んで来るのを感じていた。
人の喜び、悲しみ…様々な感情。
そしてたぶん龍神の目から見た過去の情景…戦争、水害、飢饉。
そして全てが消えて真っ暗な世界の中で僕に囁きかけてくる声がした。
「龍神の子よ、我が眷属よ…」
「あなたはいったい…?」
「我はこの地に住まう古き龍神、其方達の始祖と言っても良いだろうな…」
「僕にいったい何を?」
「我はいささか永く生き過ぎた…」
「それは…」
「人の時の流れとは随分と速さが違うがな…」
そこで目の前に白いぼんやりしたものが現れた。
「我に残された力、此処で余生を送るには過分に過ぎたものだ、この力其方に分け与えよう」
「そんなことが…」
「其方もあの娘に無意識に力を分け与えておるのだよ、それ故に本来の力を出せずにおる…」
「さあ、その手を出せ…」
僕は左手を差し出した…すると白いぼんやりしたものが輝きを増して僕の左手に纏わりついて来た…
「わっ!」
そしてその光が消えていくと僕の左手首に小さな注連縄のようなものが巻かれていた。
「これはいったい…」
「普段人としての生活を送るには過分な力ゆえの封印じゃ、いざという時にはそれを解くが良い…」
「これからどうすれば…」
「人として、そして龍神の子として己の信じる道を進むが良い、その力、そのために大いにふるうが良い…」
「己の信じる道…」
「道は示されるものではない、己が手で切り拓くもの…」
「我は此処で魂が尽きるまで休むとするよ、河童どもによろしくな」
そして身体がふっと浮いた気がして次の瞬間お社の前に立ちすくんでいた。
「たける?大丈夫?」
にあが心配した表情で覗き込んできた。
「急に立ち止まって動かないからびっくりしたわ…」
「どのくらい?」
「10秒ほどかな、まだ疲れが残ってるんじゃないの?」
「ごめん、大丈夫だから」
ふと左手を見るとあの注連縄が目に入った。
「夢じゃなかったんだ…」
昨日の疲れが嘘のように体が軽くなった気がしていた…
「にあ、実はね…」
僕は今起こった事を話して聞かせた。
「それって…」
「これがその証拠さ」
僕は左手首の注連縄を見せた。
「これからどうするの?どうなるの?」
不安気なにあに僕は言った。
「まだ僕にもよく分からない、でもこの力は僕が正しいと思えることに使っていこうと思う」
正直僕自身にも力の正体はわからない、でもむやみに振るってはならないものだというのはなんとなくわかる。
「己が手で切り拓くもの…か」
そう呟いて手首のしめ縄をそっと撫でた。
人の喜び、悲しみ…様々な感情。
そしてたぶん龍神の目から見た過去の情景…戦争、水害、飢饉。
そして全てが消えて真っ暗な世界の中で僕に囁きかけてくる声がした。
「龍神の子よ、我が眷属よ…」
「あなたはいったい…?」
「我はこの地に住まう古き龍神、其方達の始祖と言っても良いだろうな…」
「僕にいったい何を?」
「我はいささか永く生き過ぎた…」
「それは…」
「人の時の流れとは随分と速さが違うがな…」
そこで目の前に白いぼんやりしたものが現れた。
「我に残された力、此処で余生を送るには過分に過ぎたものだ、この力其方に分け与えよう」
「そんなことが…」
「其方もあの娘に無意識に力を分け与えておるのだよ、それ故に本来の力を出せずにおる…」
「さあ、その手を出せ…」
僕は左手を差し出した…すると白いぼんやりしたものが輝きを増して僕の左手に纏わりついて来た…
「わっ!」
そしてその光が消えていくと僕の左手首に小さな注連縄のようなものが巻かれていた。
「これはいったい…」
「普段人としての生活を送るには過分な力ゆえの封印じゃ、いざという時にはそれを解くが良い…」
「これからどうすれば…」
「人として、そして龍神の子として己の信じる道を進むが良い、その力、そのために大いにふるうが良い…」
「己の信じる道…」
「道は示されるものではない、己が手で切り拓くもの…」
「我は此処で魂が尽きるまで休むとするよ、河童どもによろしくな」
そして身体がふっと浮いた気がして次の瞬間お社の前に立ちすくんでいた。
「たける?大丈夫?」
にあが心配した表情で覗き込んできた。
「急に立ち止まって動かないからびっくりしたわ…」
「どのくらい?」
「10秒ほどかな、まだ疲れが残ってるんじゃないの?」
「ごめん、大丈夫だから」
ふと左手を見るとあの注連縄が目に入った。
「夢じゃなかったんだ…」
昨日の疲れが嘘のように体が軽くなった気がしていた…
「にあ、実はね…」
僕は今起こった事を話して聞かせた。
「それって…」
「これがその証拠さ」
僕は左手首の注連縄を見せた。
「これからどうするの?どうなるの?」
不安気なにあに僕は言った。
「まだ僕にもよく分からない、でもこの力は僕が正しいと思えることに使っていこうと思う」
正直僕自身にも力の正体はわからない、でもむやみに振るってはならないものだというのはなんとなくわかる。
「己が手で切り拓くもの…か」
そう呟いて手首のしめ縄をそっと撫でた。
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