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ちとせ、11歳<3>
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そして「はるかぜ光画部」の撮影会の日がやってきた。
お店に集合して、みんなで街の光景を撮り歩いて行くのがこのサークルのスタイルらしい。
お互いに撮り合いっこしたりしてみんな和気あいあいで歩いていく。
みんなで賑やかにお昼ご飯を食べたり、素敵なカフェで休憩がてらお喋りしたりと楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。
そして最後は居酒屋で打ち上げというのがいつもの流れらしい。
いちおう僕もお酒が飲める歳になっているけれど今回は初めてでさすがに疲れたので帰らせてもらうことにした。
帰り際にようこさんが今回の撮影会の写真展の展示に誘ってくれた。
みんな優しくしてくれるし、楽しい集まりだなと思った。
それから僕は時々「はるかぜ」へ行ってようこさんやメンバーのみんなからいろいろな事を教わった。
仕事にも慣れ、「はるかぜ光画部」の活動も続いていたが、ちぃちゃんとも定期的に会っている。
やがて出会って二年目の夏がやってきた。
5年生になったちぃちゃん、相変わらず天真爛漫だけど少しずつ大人への階段を登っている。
成長期に入ったみたいで最近会うたびに背が伸びているような気がする。
身体つきもだんだん変わってきて、少しふっくらしてきた感じだ。
ひとりでバスも乗れるようになって行動範囲も広がったらしい。
そんなある日、ちぃちゃんが
「島の外へ遊びに行きたい」
と言い出した。
僕の住んでいる街の雰囲気を味わいたいというのだ。
これは僕一人では決められないのではるかさんに相談してみたが、
「いいんじゃないの?」
それがはるかさんの答えだった。
とりあえず連絡船に乗るまでは自力でできそうだということだ。
そして当日、港で待っていた僕の心配をよそにちぃちゃんは満面の笑みで船から降りてきた。
「お兄ちゃん、来たよー!」
「よかった、ちゃんと来れたね」
「ひとりでお船乗るのはじめてだったけどおじさんがていねいに教えてくれたの」
僕たちは船着き場から駅まで手を繋いで歩き出した。
電車で隣町まで行こうとするとちぃちゃんが言った。
「わたし電車に乗るのはじめて…」
たしかに島に鉄道は無い…券売機で切符を買って改札を通ろうとすると、
「お兄ちゃんこれどうやるの?」
当たり前だが自動改札機も初めてだ。
「ここに切符を入れるんだよ」
「うん、やってみる」
恐る恐る切符を入れると勢いよく切符が吸い込まれた。
「わっ!吸い込まれた!」
ちぃちゃんは驚いて声をあげた。
「大丈夫だよ、ほらあそこに切符が出てきただろ、忘れずに取ってね」
こうしてちぃちゃんは初めて電車に乗ることができた。
隣町の駅で降りて繁華街へ行ってみる。
「すごいねー、人がいっぱいだ!」
ちぃちゃんは興奮気味だ。
見るものすべてが初めての彼女にとっては情報量が多すぎるようだ。
大きなデパートの屋上のレストランでお昼ごはんを食べ、商店街を歩いた。
少し疲れたと言うので公園のベンチで休むことにした。
やがてちぃちゃんは僕の肩にもたれ掛かってうとうとしはじめた。
はじめて二人でアイランドパークへ行った時バスで起きなくて抱きかかえて帰ったなぁ…身体が大きくなってるから流石にもう無理かもな。
ちぃちゃんの寝顔を眺めながらそんなことを考えていた。
ちとせ、11歳 <了>
お店に集合して、みんなで街の光景を撮り歩いて行くのがこのサークルのスタイルらしい。
お互いに撮り合いっこしたりしてみんな和気あいあいで歩いていく。
みんなで賑やかにお昼ご飯を食べたり、素敵なカフェで休憩がてらお喋りしたりと楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。
そして最後は居酒屋で打ち上げというのがいつもの流れらしい。
いちおう僕もお酒が飲める歳になっているけれど今回は初めてでさすがに疲れたので帰らせてもらうことにした。
帰り際にようこさんが今回の撮影会の写真展の展示に誘ってくれた。
みんな優しくしてくれるし、楽しい集まりだなと思った。
それから僕は時々「はるかぜ」へ行ってようこさんやメンバーのみんなからいろいろな事を教わった。
仕事にも慣れ、「はるかぜ光画部」の活動も続いていたが、ちぃちゃんとも定期的に会っている。
やがて出会って二年目の夏がやってきた。
5年生になったちぃちゃん、相変わらず天真爛漫だけど少しずつ大人への階段を登っている。
成長期に入ったみたいで最近会うたびに背が伸びているような気がする。
身体つきもだんだん変わってきて、少しふっくらしてきた感じだ。
ひとりでバスも乗れるようになって行動範囲も広がったらしい。
そんなある日、ちぃちゃんが
「島の外へ遊びに行きたい」
と言い出した。
僕の住んでいる街の雰囲気を味わいたいというのだ。
これは僕一人では決められないのではるかさんに相談してみたが、
「いいんじゃないの?」
それがはるかさんの答えだった。
とりあえず連絡船に乗るまでは自力でできそうだということだ。
そして当日、港で待っていた僕の心配をよそにちぃちゃんは満面の笑みで船から降りてきた。
「お兄ちゃん、来たよー!」
「よかった、ちゃんと来れたね」
「ひとりでお船乗るのはじめてだったけどおじさんがていねいに教えてくれたの」
僕たちは船着き場から駅まで手を繋いで歩き出した。
電車で隣町まで行こうとするとちぃちゃんが言った。
「わたし電車に乗るのはじめて…」
たしかに島に鉄道は無い…券売機で切符を買って改札を通ろうとすると、
「お兄ちゃんこれどうやるの?」
当たり前だが自動改札機も初めてだ。
「ここに切符を入れるんだよ」
「うん、やってみる」
恐る恐る切符を入れると勢いよく切符が吸い込まれた。
「わっ!吸い込まれた!」
ちぃちゃんは驚いて声をあげた。
「大丈夫だよ、ほらあそこに切符が出てきただろ、忘れずに取ってね」
こうしてちぃちゃんは初めて電車に乗ることができた。
隣町の駅で降りて繁華街へ行ってみる。
「すごいねー、人がいっぱいだ!」
ちぃちゃんは興奮気味だ。
見るものすべてが初めての彼女にとっては情報量が多すぎるようだ。
大きなデパートの屋上のレストランでお昼ごはんを食べ、商店街を歩いた。
少し疲れたと言うので公園のベンチで休むことにした。
やがてちぃちゃんは僕の肩にもたれ掛かってうとうとしはじめた。
はじめて二人でアイランドパークへ行った時バスで起きなくて抱きかかえて帰ったなぁ…身体が大きくなってるから流石にもう無理かもな。
ちぃちゃんの寝顔を眺めながらそんなことを考えていた。
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