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ちとせ、15歳<1>
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官公庁の御用納めが終わると、僕の勤める「ヨコザワ文具店」では忘年会を兼ねた慰労会が開かれる。
ホテルの宴会場を借り切って各店舗から集まる盛大な宴会だ。
今年も僕は参加した。
「ここ、空いてるかしら?」
声を掛けられて見上げるとウエノさんだった。
「空いてますよ、どうぞ」
ウエノさんは筆記用具メーカーから出向してきているベテランだ。
「ヨコザワ文具店」ではかなり高級な万年筆やボールペンを取り扱っているのだが、どんなに古い物でもウエノさんは替え芯や替インクを把握しているので重宝されている。
みんなで賑やかに盛り上がっているとウエノさんが切り出した。
「けんごくん、あなた写真好きだって言ってたよね」
「えぇまぁ」
「うちの息子中二なんだけど、兄貴からお古のカメラもらって写真にハマっちゃって、高校行ったら写真部入るんだって」
僕と全く同じだ…
僕が中学2年の時、伯父から少し古いコンパクトカメラをもらった。
それから僕はそのカメラを持ち歩いてお小遣いをやりくりしてフイルムを買って撮り歩いていた。
いわば僕の写真の原点と言えた。
「そうなんですか」
「写真ってお金かかるんでしょ」
「まぁそれなりに…」
写真は機材も高価だがフイルムも必要だしそれ以外にもこまごまとお金はかかる、そのために僕はここで高校三年間アルバイトしていたのだ。
「今度よかったら息子に写真教えてあげてもらえるかしら?」
「もちろん、いつでもオッケーですよ」
と言ったあとに僕はふと思いついた。
「一度僕の入ってる写真サークルの展示見にきませんか?高校生のメンバーもいるからいい刺激になると思いますよ」
「そういうのがあるのね、知らなかったわ」
「予定がわかったらお知らせしますよ」
「そうね、ありがとう」
ウエノさんは笑顔で言った。
「そう言えば、けんごくん彼女いたっけ?」
突然、ウエノさんが話題を変えた。
「えぇまぁいますよ、いちおう…」
「どんな子?」
ウエノさんは興味津々に身を乗り出した。
「アルバイト先で知り合って、息子さんと同じで今中学二年生です…」
「ずいぶん若い子ね、まぁでも大人になると10歳くらいの歳の差は誤差の範囲だものねぇ」
そう言ってウエノさんは大笑いした。
「うちだって旦那とはひとまわり違うのよ」
「そうなんですか?」
ウエノさんのご主人はバツイチで、最初の結婚の時、相手方の親戚筋の干渉が酷くてすぐに離婚してしまったそうだ。
田舎の古いしきたりがどうのと何かにつけて干渉されることにうんざりしてしまったらしい。
その後今の奥さん、20歳になったばかりのウエノさんと知り合って結婚したそうだ。
「そのくらい歳が離れてた方がなにかと喧嘩にならなくていいわよ」
「そんなものですか?」
「そういうものよ、うちの旦那は基本優しいからね」
「優しい…ですか」
「そうね、でもけんごくんも優しいじゃない、それに小さい子の扱いも上手だしね。」
「そうですか?」
「いつだったか店頭で迷子の子保護したとき、小さい子の目線までしゃがんで話聞いてたよね、あれ見て思ったの」
確かにそんなことがあった、3歳くらいの男の子がお店に迷い込んで来たのを保護した、すぐに商店街のインフォメーションで放送してもらってお母さんに引き渡せたのだった。
子供の目線まで下がるというのは中学生の頃好きだった俳優さんが出ていたドラマで主人公の熱血教師が子供と話をする時しゃがんで聞くシーンがあった。
雑誌のインタビューでその俳優さんいわく「上から見下ろすのではなくしゃがんで目線を合わせることで子供は安心してくれる」というものだった
それを読んで以降僕も実践するようになった。
「だからけんごくんの彼女もそういうのにひかれたんじゃない?」
「そういうものですかね」
「安心感を得られる相手って大事よ、優しさだけでも強さだけでもそれは成立しないのよ」
僕とちぃちゃんもそういう感じでいられるのだろうか…今の僕には全く想像がつかないでいた。
ホテルの宴会場を借り切って各店舗から集まる盛大な宴会だ。
今年も僕は参加した。
「ここ、空いてるかしら?」
声を掛けられて見上げるとウエノさんだった。
「空いてますよ、どうぞ」
ウエノさんは筆記用具メーカーから出向してきているベテランだ。
「ヨコザワ文具店」ではかなり高級な万年筆やボールペンを取り扱っているのだが、どんなに古い物でもウエノさんは替え芯や替インクを把握しているので重宝されている。
みんなで賑やかに盛り上がっているとウエノさんが切り出した。
「けんごくん、あなた写真好きだって言ってたよね」
「えぇまぁ」
「うちの息子中二なんだけど、兄貴からお古のカメラもらって写真にハマっちゃって、高校行ったら写真部入るんだって」
僕と全く同じだ…
僕が中学2年の時、伯父から少し古いコンパクトカメラをもらった。
それから僕はそのカメラを持ち歩いてお小遣いをやりくりしてフイルムを買って撮り歩いていた。
いわば僕の写真の原点と言えた。
「そうなんですか」
「写真ってお金かかるんでしょ」
「まぁそれなりに…」
写真は機材も高価だがフイルムも必要だしそれ以外にもこまごまとお金はかかる、そのために僕はここで高校三年間アルバイトしていたのだ。
「今度よかったら息子に写真教えてあげてもらえるかしら?」
「もちろん、いつでもオッケーですよ」
と言ったあとに僕はふと思いついた。
「一度僕の入ってる写真サークルの展示見にきませんか?高校生のメンバーもいるからいい刺激になると思いますよ」
「そういうのがあるのね、知らなかったわ」
「予定がわかったらお知らせしますよ」
「そうね、ありがとう」
ウエノさんは笑顔で言った。
「そう言えば、けんごくん彼女いたっけ?」
突然、ウエノさんが話題を変えた。
「えぇまぁいますよ、いちおう…」
「どんな子?」
ウエノさんは興味津々に身を乗り出した。
「アルバイト先で知り合って、息子さんと同じで今中学二年生です…」
「ずいぶん若い子ね、まぁでも大人になると10歳くらいの歳の差は誤差の範囲だものねぇ」
そう言ってウエノさんは大笑いした。
「うちだって旦那とはひとまわり違うのよ」
「そうなんですか?」
ウエノさんのご主人はバツイチで、最初の結婚の時、相手方の親戚筋の干渉が酷くてすぐに離婚してしまったそうだ。
田舎の古いしきたりがどうのと何かにつけて干渉されることにうんざりしてしまったらしい。
その後今の奥さん、20歳になったばかりのウエノさんと知り合って結婚したそうだ。
「そのくらい歳が離れてた方がなにかと喧嘩にならなくていいわよ」
「そんなものですか?」
「そういうものよ、うちの旦那は基本優しいからね」
「優しい…ですか」
「そうね、でもけんごくんも優しいじゃない、それに小さい子の扱いも上手だしね。」
「そうですか?」
「いつだったか店頭で迷子の子保護したとき、小さい子の目線までしゃがんで話聞いてたよね、あれ見て思ったの」
確かにそんなことがあった、3歳くらいの男の子がお店に迷い込んで来たのを保護した、すぐに商店街のインフォメーションで放送してもらってお母さんに引き渡せたのだった。
子供の目線まで下がるというのは中学生の頃好きだった俳優さんが出ていたドラマで主人公の熱血教師が子供と話をする時しゃがんで聞くシーンがあった。
雑誌のインタビューでその俳優さんいわく「上から見下ろすのではなくしゃがんで目線を合わせることで子供は安心してくれる」というものだった
それを読んで以降僕も実践するようになった。
「だからけんごくんの彼女もそういうのにひかれたんじゃない?」
「そういうものですかね」
「安心感を得られる相手って大事よ、優しさだけでも強さだけでもそれは成立しないのよ」
僕とちぃちゃんもそういう感じでいられるのだろうか…今の僕には全く想像がつかないでいた。
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