異世界転生したので念願の魔法使いになるぞ! けれど現実は……甘くなかった。いや、こうじゃないだろう……

踊りまんぼう

文字の大きさ
10 / 11

第十話:杖のメンテナンスと選定

しおりを挟む
第十話:杖のメンテナンスと選定


 今日の座学の終わり際、教官が唐突に免許取得後のことを話し始めた。
 授業の範囲には入っていないが大事なことらしい。

「お前たちがどこの杖で何のタイプを購入するかは解らないが、しっかりとメンテナンスはしておけ。……メンテナンス不全による事故多発を受けて、年に一度の公認整備工房による整備が義務づけられるようになった」

 車検制度みたいなのが、杖にもどうやら導入されたということみたいだ。
 いや、まあ、道具のメンテナンスは大事だけれど、こういう所まで同じにならなくてもいいのに、などと心の中で愚痴る。

 だが、それはそれとして公認整備工房とか、裏で結構な金が動いているのかな、とかぼんやり考えつつ話に耳を傾ける。

 誰の言葉だったか定かではないが、『権利は発生した瞬間から腐敗していく』といったことを聞いた覚えがある。
 きっと、この裏にも色々ときな臭い思惑が渦巻いているのだろう。

 とはいえ、仕方ないと思う。
 オートマ杖とか、一度教習所の備品の奴を使わせてもらったが、予備詠唱の自動化とか、手にしても見ても何がどうなってそれが実現されているかさっぱり解らなかった。
 そんな複雑な内部機構を持っているものも出てきた以上メンテナンスなしで運用するのは危険というのも当然の話である。

「整備証がない状態で魔法杖を運用していたのが発覚した場合、最悪免許取り消しになるからしっかりと覚えておくように。定期整備を怠って事故を起こした場合、事故の責任だけでなく、違反で逮捕されることだってあるからな、覚えておけ」

 そんな教官の言葉で今日の座学は終了となった。

「……にしても、メンテナンス義務化ってなー」

「しょうがないんじゃない。暴発事故で腕を失った魔法使いとかみたことあるし。俺の知り合いも、杖の魔力漏れで服焦がしてたぜ。まさか、杖にも『リコール』があるとは思わなかったが」

 わいわいと今日の話について口にしている。
 メンテナンス云々はよく解らないが、杖の種類によっては色々あるようだ。
 整備工房に任せるだけでなく、自分でも杖に異常がないか確認するのが大事と教官はいってたな。

 ……けれど、故障率の低下もあいまって前世の自動車教習所でも習ったような、出発前点検とかしっかりとするようなことはした記憶がないな。
「杖のコアよし! 杖のゆがみや汚損なし! 杖の魔力経路よし!」と、いちいち指差呼称で確認する魔法使いなんて、想像するだけで笑える。

 しかし、だ。
 ……本当に笑い飛ばしていいことなのだろうか?

 大丈夫、大丈夫で運用して暴発しても、誰かが責任を取ってくれるわけでもない。
 馬鹿にせずに、しっかりと点検項目については後で教科書などを確認しておこう。
 まぁ気をつけただけで回避できるのか解らないけどさ。

 そんな感じでみんなで色々雑談しながら教室を出る。

 もうそろそろ座学も実技も終盤だ。となれば、どんな杖を手にしたいか、というのも気になってくる。
 いくつもの工房がありマニュアルだったりオートマだったり畜魔力タイプだったりという機構の違いもある。
 予算の都合もあるし、選択肢は多くはないだろうがいよいよ魔法使い免許が取得できそうになっている今、少し見てみたくなったのだ。もちろん受講後に時間があるときに限定ではあるが。

「杖か……さすがに新品は難しいか」

 それにいくつもの杖を見る場合は工房直営の店よりも、街の中古店の方がいいだろうと思い足を運んでみる。複数の工房の杖が、管理されて店に並んでいる。
 店内は、木材と魔石の独特な匂いが混じり合い、どこか骨董品店のような雰囲気が漂っている。
 ショーケースの中には、使い込まれて手垢のついた杖から、まるで新品のように磨き上げられた一品まで、様々な杖が並んでいた。。

「リーライフィの頑丈さが売りの奴はさすがに高いな……サンバスは近頃評判が落ちてるが、中古だとまだそこまでではないか。レイアスの軽モデルがちょうどいいくらいかもしれないな」

 予備詠唱による魔力のめぐりは、各工房によってクセがあって、最高速が凄いのだったり、注ぎ込める魔力容量だったり、用途によって使い分けるのが常識らしい。
 加えて、近頃は繰り返し作業向きのオートマ杖や、魔力量が少なくても畜魔石から魔力を引き出して魔法を撃てる畜魔力杖なんてのも出てるしな。

 どれも一長一短で、一概には決められない。いや、畜魔力タイプは過充魔力による爆発が怖いからもう少し安全性が確保されてからの方がいいだろう。
 前世と違って、そういう安全弁なところはまだまだ発展途中で、事故率も高いようだ。

「中古市場だと一番評判いいのはリーライフィか?」

 居並ぶ杖を眺める。

「値段的にレイアスでいいかなぁ……いやちょっと待て」

 店員の説明を聞きつつ、色々と品定めをしていく。
 杖の種類は様々で用途ごとに特化したものが多い印象だ。
 ついでに言うと、免許も特化タイプが存在する。大規模魔法になればなるほど、専用の免許が必要になってくるのだ。

 軽自動車、普通車、大型トラック、戦車などで分かれているようなものだ。
 店頭に並んでいるのは普通車や軽自動車みたいなイメージの杖ばかりだったが。

 大規模魔法対応の杖はそもそも高価なこともあり展示されていないようだ。

 しかし、ここに並ぶのは基本メーカー製だが、レトロ杖、ではないが、ダンジョンから発見される杖もあるらしいけど、あれは何処に分類されるんだろう。杖検とか、メンテナンスとか、色々考えさせられるところであるが、後で教官に聞いてみよう。

「第三詠唱まで対応のレイアスの軽モデルが一番無難っぽいな……潤沢な購入資金を持つお貴族様はともかく、一般庶民の私には、これくらいがちょうどいいだろう」

 総ては免許を取得してからだろうけど、居並ぶ杖を見てやる気が出てきた。明日からの講習も頑張ろう。

 ちなみにダンジョン産の杖に関しては、ケースバイケースで一概には言えないそうだ。

 現代とは違う理論で造られた物もあったりして、しっかり分析してからでないと結論が出ないそうだ。きっと、「現行の杖検基準では判断できない」とか、「メーカー保証外」とか、厄介な代物なのだろう。

 ダンジョンのロマンも、安全基準の前では形無しのようである。残念。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

処理中です...