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う~、朝日がまぶしい……
結局昨日はなかなか眠れなかった。
たかだかあの程度の接触にここまで翻弄されるなんて私は乙女か!でも、これでも貴族子女なのよ。お付き合いはセシリオとしかしたことがないし。まぁ、彼とはキスくらいはしてたけど。そうよ、それに比べたら手のひらが何だと言うの。
……でも、何かが違ったのよ。あの時の笑顔が、その想いを込めたような口付けが、すごく…、そう、心がグワッ!て掴まれたような。いや、違うわ。あれはただの感謝の気持ちよ。恥ずかしい勘違いはしちゃ駄目。
だから勘違いって何!
あ~だめだ。またループしてる……
落ち着こう。まずやらなきゃいけない事を考えて。それはこんなことじゃないでしょう!
今日は兄様と一緒に伝染病の経過観察と、病以外の可能性を調べに現地に向かう。こんな浮かれた気持ちでいたら大変な事になるわ。
約束したじゃない。幸せになりましょうって。問題解決が第一条件よ。
うん、やっと落ち着いてきた。頑張ろう!
「おはようございます!すみません、集合時間を間違えましたか?」
食堂にはラファ以外の男性陣が集まっていた。
「おはよう。大丈夫、皆なんとなく早起きしてしまっただけだよ」
アルフォンソ様はすっきりした顔をしてる。ちゃんと寝れたのかしら。
思ったより恥ずかしくもなく、ゆっくり休めたようなのが嬉しくてつい微笑んでしまう。
「それならよかったわ。さあ、兄様。今日は忙しくなるわよ!」
「おう?えらい張り切ってるな」
うん、張り切るよ。頑張りたい理由が増えたもの。
「やっぱりルシアは格好いいね」
「私は嬉しいですが、女性への褒め言葉としては不適切ですよ?」
格好良い女性は憧れるから私は嬉しいけど。
「ふふ、そうか?」
「はい」
二人で笑っていると、リカルド様が怪訝な表情で見てくる。
「……二人はそんなに仲が良かったか?」
「妹は人と仲良くなるのが得意ですからね。でも程々にな。一応王子だろ」
「兄様の発言の方が問題でしょう」
しまった。釘を刺されてしまったわ。距離感に気を付けなきゃ。つい王子だって忘れちゃうのよね。
食事をしながら今後の方針を話し合う。私と兄様は伝染病対策。ただ、私を不貞相手だと公表されると治療にも回れなくなりそうで大変困る。どうやったら陛下を止められる?
「そういえば兄様。陛下はどうやって子を成すつもりか分かったの?」
「あぁ、やたらと禁忌魔法に詳しいだろ?それならアレかなって。──クローンだ」
うわ、自分のコピーを仕込むの?きも!
「なるほど……だが可能なのか?」
「人間のクローンは禁止されてはいますが、理論上は可能です。同じ魂かどうかは分かりかねますがね」
「でも……うん、やるかな。あの人なら」
それなら本当に時間の猶予がない。すでに準備ができているかもしれないのだ。どうしよう、間に合わないかもしれない。
「すまない、作戦を変更させてほしい」
アルフォンソ様?
「私は国王を倒したい。だが、それには私達だけでは力不足だ。だから宰相エスカランテ公爵に協力してもらうことになっていた。
だが、彼が協力するだけでは動かない貴族も多い。何故なら私を次期国王にすることに反対しているから。
もっと時間があれば変えていけたかもしれないが、彼らを説得していては間に合わない。
だから、次期国王には宰相に立ってもらおうと思う」
「何を言うんだ!そうしたらお前はどうする?!今までの苦労を無駄にするのか!」
次期国王が宰相閣下?そうしたらアルフォンソ様はどうなるの?
「今、一番大切な事はどうしたら皆が幸せな生活を送れるか、だろう?残念ながら私には力も、味方も、何もかもが足りない。だが宰相なら、彼なら国王さえ消えれば貴族達を纏める事ができる!この国を守れるんだ!
そうだろ?リカルド」
「……じゃあ、お前は?国王を倒して、その罪を被って……その後どうするつもりだ!」
「どうだろう。宰相殿なら国外追放くらいにしてくれるんじゃないかな」
「どうして笑うんだ!俺は!お前が王になれるように……そのために!」
リカルド様……本当にアルフォンソ様に賭けていたのね。学生の頃からずっとの思いだ。聞いているだけで胸が苦しい。
「リカルドは本当に馬鹿だな。お前くらいだよ、俺を王にしたがるのは。その期待に答えたかったけど……すまない。残念だけど時間切れだ」
アルフォンソ様の穏やかな笑顔が哀しい。リカルド様が泣いてるよ?どうしても?どうやっても無理なの?
「情けない王子ですまない。私は自分の命を守るのに精一杯で、国の為に動くのが遅すぎたんだ。未だ呪われた王子という名も払拭出来ていない。
いくら国王を倒しても、次が私では皆不安でしかたがないだろう。国を捨てて出て行く者が増えては困るし、クーデターでも起こされたら本当に国が潰れてしまう。
でも、ずっと国王の悪政を防ぐ為尽力してきた宰相なら。皆きっと希望を持てる。
私はこの国を幸せにしたいんだ。王にならない事が幸せに結びつくなら……喜んでこの国から去るよ」
「……友の俺を捨てていくのか」
「お前はこの国に必要だよ。ラファを守らなくちゃいけないだろ?」
ラファの名前を出されたら、リカルド様は何も言えない。
「あと、母上に会いに行こうと思う」
結局昨日はなかなか眠れなかった。
たかだかあの程度の接触にここまで翻弄されるなんて私は乙女か!でも、これでも貴族子女なのよ。お付き合いはセシリオとしかしたことがないし。まぁ、彼とはキスくらいはしてたけど。そうよ、それに比べたら手のひらが何だと言うの。
……でも、何かが違ったのよ。あの時の笑顔が、その想いを込めたような口付けが、すごく…、そう、心がグワッ!て掴まれたような。いや、違うわ。あれはただの感謝の気持ちよ。恥ずかしい勘違いはしちゃ駄目。
だから勘違いって何!
あ~だめだ。またループしてる……
落ち着こう。まずやらなきゃいけない事を考えて。それはこんなことじゃないでしょう!
今日は兄様と一緒に伝染病の経過観察と、病以外の可能性を調べに現地に向かう。こんな浮かれた気持ちでいたら大変な事になるわ。
約束したじゃない。幸せになりましょうって。問題解決が第一条件よ。
うん、やっと落ち着いてきた。頑張ろう!
「おはようございます!すみません、集合時間を間違えましたか?」
食堂にはラファ以外の男性陣が集まっていた。
「おはよう。大丈夫、皆なんとなく早起きしてしまっただけだよ」
アルフォンソ様はすっきりした顔をしてる。ちゃんと寝れたのかしら。
思ったより恥ずかしくもなく、ゆっくり休めたようなのが嬉しくてつい微笑んでしまう。
「それならよかったわ。さあ、兄様。今日は忙しくなるわよ!」
「おう?えらい張り切ってるな」
うん、張り切るよ。頑張りたい理由が増えたもの。
「やっぱりルシアは格好いいね」
「私は嬉しいですが、女性への褒め言葉としては不適切ですよ?」
格好良い女性は憧れるから私は嬉しいけど。
「ふふ、そうか?」
「はい」
二人で笑っていると、リカルド様が怪訝な表情で見てくる。
「……二人はそんなに仲が良かったか?」
「妹は人と仲良くなるのが得意ですからね。でも程々にな。一応王子だろ」
「兄様の発言の方が問題でしょう」
しまった。釘を刺されてしまったわ。距離感に気を付けなきゃ。つい王子だって忘れちゃうのよね。
食事をしながら今後の方針を話し合う。私と兄様は伝染病対策。ただ、私を不貞相手だと公表されると治療にも回れなくなりそうで大変困る。どうやったら陛下を止められる?
「そういえば兄様。陛下はどうやって子を成すつもりか分かったの?」
「あぁ、やたらと禁忌魔法に詳しいだろ?それならアレかなって。──クローンだ」
うわ、自分のコピーを仕込むの?きも!
「なるほど……だが可能なのか?」
「人間のクローンは禁止されてはいますが、理論上は可能です。同じ魂かどうかは分かりかねますがね」
「でも……うん、やるかな。あの人なら」
それなら本当に時間の猶予がない。すでに準備ができているかもしれないのだ。どうしよう、間に合わないかもしれない。
「すまない、作戦を変更させてほしい」
アルフォンソ様?
「私は国王を倒したい。だが、それには私達だけでは力不足だ。だから宰相エスカランテ公爵に協力してもらうことになっていた。
だが、彼が協力するだけでは動かない貴族も多い。何故なら私を次期国王にすることに反対しているから。
もっと時間があれば変えていけたかもしれないが、彼らを説得していては間に合わない。
だから、次期国王には宰相に立ってもらおうと思う」
「何を言うんだ!そうしたらお前はどうする?!今までの苦労を無駄にするのか!」
次期国王が宰相閣下?そうしたらアルフォンソ様はどうなるの?
「今、一番大切な事はどうしたら皆が幸せな生活を送れるか、だろう?残念ながら私には力も、味方も、何もかもが足りない。だが宰相なら、彼なら国王さえ消えれば貴族達を纏める事ができる!この国を守れるんだ!
そうだろ?リカルド」
「……じゃあ、お前は?国王を倒して、その罪を被って……その後どうするつもりだ!」
「どうだろう。宰相殿なら国外追放くらいにしてくれるんじゃないかな」
「どうして笑うんだ!俺は!お前が王になれるように……そのために!」
リカルド様……本当にアルフォンソ様に賭けていたのね。学生の頃からずっとの思いだ。聞いているだけで胸が苦しい。
「リカルドは本当に馬鹿だな。お前くらいだよ、俺を王にしたがるのは。その期待に答えたかったけど……すまない。残念だけど時間切れだ」
アルフォンソ様の穏やかな笑顔が哀しい。リカルド様が泣いてるよ?どうしても?どうやっても無理なの?
「情けない王子ですまない。私は自分の命を守るのに精一杯で、国の為に動くのが遅すぎたんだ。未だ呪われた王子という名も払拭出来ていない。
いくら国王を倒しても、次が私では皆不安でしかたがないだろう。国を捨てて出て行く者が増えては困るし、クーデターでも起こされたら本当に国が潰れてしまう。
でも、ずっと国王の悪政を防ぐ為尽力してきた宰相なら。皆きっと希望を持てる。
私はこの国を幸せにしたいんだ。王にならない事が幸せに結びつくなら……喜んでこの国から去るよ」
「……友の俺を捨てていくのか」
「お前はこの国に必要だよ。ラファを守らなくちゃいけないだろ?」
ラファの名前を出されたら、リカルド様は何も言えない。
「あと、母上に会いに行こうと思う」
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