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何を言ってるの?それは今必要な話?
「申し訳ありません。私は同時にいくつもの事をこなせる程器用ではありません。そのお返事はすべてが落ち着いてからにさせて下さい」
何故だろう。すごく腹が立った。
ずっと尊敬しているリカルド様なのに。
「……悪かった、邪魔したな」
そう言って立ち去る姿に飛び蹴りを決めたくなる。さすがに我慢するけど。
……リカルド様は私を好きだった?
こんな時じゃなければ喜べた。なぜ今なの?
ううん、命がかかった今だから、なのかな。でも、それなら私は愛の言葉がほしかった。それも無いのに、なぜ卑怯な聞き方をするの。
上司と部下という関係のまま、私の心を試されるなんて腹が立つ。リカルド様のバカ。
こんな気持ちのまま出発したら駄目な気がする。もう一度話をしよう。
リカルド様を探していると、困ったことに兄と一緒だった。タイミングが悪いな。
「ルシア」
私に気が付いたリカルド様が気まずそうに私の名前を呼ぶ。
「兄様、ごめん。5分だけリカルド様を貸してちょうだい」
「……3分な」
うわ、短くしたな!何よ、その嫌そうな顔は!
「りょーかい。リカルド様いいですか?」
「……あぁ」
兄が去り二人きりになる。リカルド様といて、こんなに気まずいのは初めてだわ。
「時間がないのではっきり言います。先程の質問は不愉快でした。私達は特別な関係でしたか?私が鈍かったのかもしれませんが、本心を伝えずに試さないで」
「……俺が悪かった。もう会えないかもしれないと思ったら……違うな。アルフォンソの為に頑張ろうとする君を見て不安になった」
「私はあなたともアルフォンソ様とも将来の約束などしていません。そして今、誰ともそういったお約束をする気はありません。申し訳ありません」
私はそんなに器用ではない。今考えることは、恋愛じゃない。心にそんな余裕がない。
「わかった。では、必ず無事に帰って来てくれ。その時に俺の気持ちを伝えてもいいだろうか」
「分かりました。絶対に全員無事に戻ってきますよ。リカルド様もお気をつけて」
「ああ。では、行こうか」
振られたばかりの、若干行き遅れの私なんかが辺境伯に思いを寄せられるなんて、本当は喜ぶべきことなんだろう。
ここでもっと可愛らしい女になれたらよかったのかな。
気持ちが嬉しいと、にっこり微笑んで元気付けるような優しい女性。男性はそんな子の方が嬉しいのだろう。
でも無理。すごく腹が立ってしまったのだもの。私はあまり恋愛脳ではないみたい。クラウディア様みたいに恋を一番にはできないわ。
ごめんね、リカルド様。可愛げがなくて。
「るーちゃんとあるはおでかけなの?」
「うん、お城に忘れ物をしちゃったから取りに行くんだ。私ひとりだと危ないからルシアが付いて来てくれるんだよ。ごめんね?」
「だいじょぶ!るーちゃんやさしいもんね」
「ありがとう。帰ったら一緒に遊びましょう」
ラファをぎゅっと抱きしめる。必ず守るから。
「それじゃあ、行ってきます!」
そこからは本当に強行軍だった。休憩の時には足がガクガクしていた。
「ルシアはなるべく体力回復につとめて。手伝わなくていい。じゃなくて手伝ったら罰ゲームだよ」
アルフォンソ様からなぞの命令をされ、火の番や食事の準備等、何一つさせてもらえなかった。もっと体力を付けよう。
「殿下!よくご無事で!」
カハールのご両親は彼に似ず、優し気な方達だわ。殿下の訪れを喜んでくれた。
私達も久しぶりの美味しい食事とお風呂をいただき、本当に感謝しかない。
明日、宰相閣下に会う。お会いするのは初めてなのよね。カハールがいらんことを伝えてないといいけど。
「おう、ルシア。まだ起きてたのか」
「ガランさん」
「お前は本当に根性あるな。よくここまで弱音を吐かずについてきたよ。ありがとうな」
「まだこれからですよ」
「まぁな。ルシアは全部終わったらどうするんだ?そのまま研修続行か?」
「どうでしょう。国がどうなるかで変わりそうですよね」
きっと私の研修どころではないだろう。クラウディア様が無事かどうかでウルタードの対応も変わるだろうし。
「このまま永住しちゃえばどうだ」
「……どういう意味で言ってます?」
「お!なんだ、その反応。リカルド様もやっと告白したのか?おめでとさん!」
何だコレ。もしかしてリカルド様の気持ちを知らなかったのは私だけとか言わないよね。
「……告白されてません」
「え、じゃあどうやって気付いたんだよ」
「教えませんよ!」
恥ずかしい。私ってそんなに鈍いの?
そういえば以前アルフォンソ様に、新しい恋に気づいたら?って言われたわ。まさかアレはラファじゃなくてリカルド様のこと?
いや、分からないわよ。そんな対象として見てなかったもの。優秀な上司。これ一択だった。
だって辺境伯なのよ?男爵令嬢の相手じゃないでしょう。そんなリカルド様はまさかのアルフォンソ様にヤキモチ焼くし。……アルフォンソ様は本当に王子じゃなくなるのかな。
「おい、大丈夫か?」
「あ、駄目ですね。やっぱり今は恋愛関係を考えるのは無理みたいです」
「そりゃそうだな。全部終わったらの楽しみにしておくわ」
いや、なぜあなたが楽しみにするの。
「申し訳ありません。私は同時にいくつもの事をこなせる程器用ではありません。そのお返事はすべてが落ち着いてからにさせて下さい」
何故だろう。すごく腹が立った。
ずっと尊敬しているリカルド様なのに。
「……悪かった、邪魔したな」
そう言って立ち去る姿に飛び蹴りを決めたくなる。さすがに我慢するけど。
……リカルド様は私を好きだった?
こんな時じゃなければ喜べた。なぜ今なの?
ううん、命がかかった今だから、なのかな。でも、それなら私は愛の言葉がほしかった。それも無いのに、なぜ卑怯な聞き方をするの。
上司と部下という関係のまま、私の心を試されるなんて腹が立つ。リカルド様のバカ。
こんな気持ちのまま出発したら駄目な気がする。もう一度話をしよう。
リカルド様を探していると、困ったことに兄と一緒だった。タイミングが悪いな。
「ルシア」
私に気が付いたリカルド様が気まずそうに私の名前を呼ぶ。
「兄様、ごめん。5分だけリカルド様を貸してちょうだい」
「……3分な」
うわ、短くしたな!何よ、その嫌そうな顔は!
「りょーかい。リカルド様いいですか?」
「……あぁ」
兄が去り二人きりになる。リカルド様といて、こんなに気まずいのは初めてだわ。
「時間がないのではっきり言います。先程の質問は不愉快でした。私達は特別な関係でしたか?私が鈍かったのかもしれませんが、本心を伝えずに試さないで」
「……俺が悪かった。もう会えないかもしれないと思ったら……違うな。アルフォンソの為に頑張ろうとする君を見て不安になった」
「私はあなたともアルフォンソ様とも将来の約束などしていません。そして今、誰ともそういったお約束をする気はありません。申し訳ありません」
私はそんなに器用ではない。今考えることは、恋愛じゃない。心にそんな余裕がない。
「わかった。では、必ず無事に帰って来てくれ。その時に俺の気持ちを伝えてもいいだろうか」
「分かりました。絶対に全員無事に戻ってきますよ。リカルド様もお気をつけて」
「ああ。では、行こうか」
振られたばかりの、若干行き遅れの私なんかが辺境伯に思いを寄せられるなんて、本当は喜ぶべきことなんだろう。
ここでもっと可愛らしい女になれたらよかったのかな。
気持ちが嬉しいと、にっこり微笑んで元気付けるような優しい女性。男性はそんな子の方が嬉しいのだろう。
でも無理。すごく腹が立ってしまったのだもの。私はあまり恋愛脳ではないみたい。クラウディア様みたいに恋を一番にはできないわ。
ごめんね、リカルド様。可愛げがなくて。
「るーちゃんとあるはおでかけなの?」
「うん、お城に忘れ物をしちゃったから取りに行くんだ。私ひとりだと危ないからルシアが付いて来てくれるんだよ。ごめんね?」
「だいじょぶ!るーちゃんやさしいもんね」
「ありがとう。帰ったら一緒に遊びましょう」
ラファをぎゅっと抱きしめる。必ず守るから。
「それじゃあ、行ってきます!」
そこからは本当に強行軍だった。休憩の時には足がガクガクしていた。
「ルシアはなるべく体力回復につとめて。手伝わなくていい。じゃなくて手伝ったら罰ゲームだよ」
アルフォンソ様からなぞの命令をされ、火の番や食事の準備等、何一つさせてもらえなかった。もっと体力を付けよう。
「殿下!よくご無事で!」
カハールのご両親は彼に似ず、優し気な方達だわ。殿下の訪れを喜んでくれた。
私達も久しぶりの美味しい食事とお風呂をいただき、本当に感謝しかない。
明日、宰相閣下に会う。お会いするのは初めてなのよね。カハールがいらんことを伝えてないといいけど。
「おう、ルシア。まだ起きてたのか」
「ガランさん」
「お前は本当に根性あるな。よくここまで弱音を吐かずについてきたよ。ありがとうな」
「まだこれからですよ」
「まぁな。ルシアは全部終わったらどうするんだ?そのまま研修続行か?」
「どうでしょう。国がどうなるかで変わりそうですよね」
きっと私の研修どころではないだろう。クラウディア様が無事かどうかでウルタードの対応も変わるだろうし。
「このまま永住しちゃえばどうだ」
「……どういう意味で言ってます?」
「お!なんだ、その反応。リカルド様もやっと告白したのか?おめでとさん!」
何だコレ。もしかしてリカルド様の気持ちを知らなかったのは私だけとか言わないよね。
「……告白されてません」
「え、じゃあどうやって気付いたんだよ」
「教えませんよ!」
恥ずかしい。私ってそんなに鈍いの?
そういえば以前アルフォンソ様に、新しい恋に気づいたら?って言われたわ。まさかアレはラファじゃなくてリカルド様のこと?
いや、分からないわよ。そんな対象として見てなかったもの。優秀な上司。これ一択だった。
だって辺境伯なのよ?男爵令嬢の相手じゃないでしょう。そんなリカルド様はまさかのアルフォンソ様にヤキモチ焼くし。……アルフォンソ様は本当に王子じゃなくなるのかな。
「おい、大丈夫か?」
「あ、駄目ですね。やっぱり今は恋愛関係を考えるのは無理みたいです」
「そりゃそうだな。全部終わったらの楽しみにしておくわ」
いや、なぜあなたが楽しみにするの。
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