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「久しぶりだな、ルシア」
「ええ、やっとお会い出来て嬉しいです」
やっぱり疲れた顔をしている。
「……眠れないのですか?」
「いや……少し眠りが浅いだけだ」
「これ、リラックス効果のある茶葉なんです。よかったらお入れしてもいいですか?」
「……ありがとう。頼んでもいいかな」
「もちろん!少しだけお待ちくださいね」
何故だろう。初めて会った時の事を思い出す。
長旅でボロボロの状態を揶揄われてムカついた。でも、見上げた先にある金色の瞳に見惚れてしまった。
素直に格好いい人だと思った。
辺境の地は楽しくて。リカルド様は外見だけで無く、中身も素敵な男性だった。
セシリオと婚約していなければ、きっと私は彼を好きになっていただろう。
ううん、たぶん好きになりかけてた。リカルド様とラファとの穏やかな暮らしは本当に幸せだったから。
「どうぞ。お口に合うといいのですが」
「覚悟が決まった顔だな」
「……はい」
もしもあの時。
「ルシア、君の事が好きだ。妻になって欲しい」
王宮に向かう前。私を試さず、愛の言葉を囁いていてくれていたら!
「ごめんなさい。リカルド様を尊敬しています。でも……これは愛ではない」
後ほんの少し、私達は何かが足りなかった。
「……そうか」
「私達は何時も何処かタイミングが合わなかった。それがすべてです」
だって愛すべき人だった。ただ、いつもタイミングが悪くて。
「……俺は、いつも遅かったのだな。ラファの様にもっと早くに勇気を出して告白していれば。
あの、一緒に酒を飲んだ日を覚えているか?」
「はい」
「もしあの時、ルシアに告白していたらどうなっていたかな」
あの時?セシリオの浮気を知って傷付いて。でも辺境に戻って来れて嬉しくて。
「……もし、あの時に告白されていたら……たぶん、お受けしていたと思います」
だってあの頃は本当にリカルド様のことを……たぶん、好きだったから。
「……そうか。俺は本当に……タイミングが悪いのだな。
……アルフォンソが好きか?」
聞かれると思っていた問い。後から気が付いた。セシリオが聞きたかったのはこの事だと。
「正直分かりません。ただの同情なのか、吊橋効果なのか……本当に愛しているのか。
ただ、あの人を一人にしておきたくない。側に居てあげたい。本当にそれだけで。だって、彼の気持ちすら聞いていませんし」
そうなのだ。アルフォンソ様への気持ちが分からない。
私は憐れんでいるの?吊橋効果で戦場でのドキドキを勘違いしているの?それとも本当に……好き……なの?
分からない。ただ、会いたい。
彼を癒やしたい。体の傷も心の傷も全部。
そんな思いが溢れてしまう。
「俺はアルフォンソの功績を総て奪う。それでも、君がアルフォンソの手に残るなら……許されるかな」
「アルフォンソ様が貴方を恨むなんてありえないわ」
「…アイツは本当にお人好しだからな」
「同じ事をアルフォンソ様も仰っていました。あの方はリカルド様のことが本当に大好きで。何度もお勧めされましたよ」
「……本当に?」
「はい」
あれが彼の事が気になった切っ掛けだったもの。
「そうか……俺は本当にチャンスを逃し捲っていたのだな」
たらればを言い出すと本当に切りがない。でも、もしかしたら私が辺境で笑って過ごす未来が……
「俺は宰相閣下の令嬢と結婚することになる」
「……決められたのですね」
「尊敬する閣下のご令嬢ならば……きっと上手くいくだろう」
「イメルダ嬢も同じ事を仰っていたそうです。父親が認めた数少ない人物ならば安心だと」
「そうか。ありがたいことだな」
「……どうか、お幸せに」
「君もな。……だがまだ最後では無いだろう?このまま別れたらラファが悲しむ」
ラファ。本当に、今、会いたい。
この悲しみも全部あなたに癒やされたい。
どうしてこんな……ままならない事ばかり起こるの?
幼い貴方に縋りたい私は本当に愚かね。
「そうですね。ラファに会いたいです」
「ぜひ辺境に寄ってやってくれ」
「はい。ありがとうございます。……これで失礼しますね。茶葉は置いていくのでよかったらお飲みになって下さいませ」
「ありがとう、ルシア。またな」
「はい、また」
……エスカランテ様に報告は必要だろうか。
いえ……何と伝えたらいいか分からない。
申し訳ないけれど、リカルド様にお任せしよう。
何となく部屋に戻る気にもならず、適当に歩を進める。誰かと話がしたい。誰?セシリオにはあった。カハールやエスカランテ様には話せない。
……オフェリア様はもういない。困ったな。私ったら友達がいないわ。
「ルシア?」
どうして……確かに図書室の入り口には見張りがいた。でもアルフォンソ様がいるなら止めてよ!
「……」
「返事をしてくれないの?」
「……お久しぶり、です」
「うん、そうだね」
「ええ、やっとお会い出来て嬉しいです」
やっぱり疲れた顔をしている。
「……眠れないのですか?」
「いや……少し眠りが浅いだけだ」
「これ、リラックス効果のある茶葉なんです。よかったらお入れしてもいいですか?」
「……ありがとう。頼んでもいいかな」
「もちろん!少しだけお待ちくださいね」
何故だろう。初めて会った時の事を思い出す。
長旅でボロボロの状態を揶揄われてムカついた。でも、見上げた先にある金色の瞳に見惚れてしまった。
素直に格好いい人だと思った。
辺境の地は楽しくて。リカルド様は外見だけで無く、中身も素敵な男性だった。
セシリオと婚約していなければ、きっと私は彼を好きになっていただろう。
ううん、たぶん好きになりかけてた。リカルド様とラファとの穏やかな暮らしは本当に幸せだったから。
「どうぞ。お口に合うといいのですが」
「覚悟が決まった顔だな」
「……はい」
もしもあの時。
「ルシア、君の事が好きだ。妻になって欲しい」
王宮に向かう前。私を試さず、愛の言葉を囁いていてくれていたら!
「ごめんなさい。リカルド様を尊敬しています。でも……これは愛ではない」
後ほんの少し、私達は何かが足りなかった。
「……そうか」
「私達は何時も何処かタイミングが合わなかった。それがすべてです」
だって愛すべき人だった。ただ、いつもタイミングが悪くて。
「……俺は、いつも遅かったのだな。ラファの様にもっと早くに勇気を出して告白していれば。
あの、一緒に酒を飲んだ日を覚えているか?」
「はい」
「もしあの時、ルシアに告白していたらどうなっていたかな」
あの時?セシリオの浮気を知って傷付いて。でも辺境に戻って来れて嬉しくて。
「……もし、あの時に告白されていたら……たぶん、お受けしていたと思います」
だってあの頃は本当にリカルド様のことを……たぶん、好きだったから。
「……そうか。俺は本当に……タイミングが悪いのだな。
……アルフォンソが好きか?」
聞かれると思っていた問い。後から気が付いた。セシリオが聞きたかったのはこの事だと。
「正直分かりません。ただの同情なのか、吊橋効果なのか……本当に愛しているのか。
ただ、あの人を一人にしておきたくない。側に居てあげたい。本当にそれだけで。だって、彼の気持ちすら聞いていませんし」
そうなのだ。アルフォンソ様への気持ちが分からない。
私は憐れんでいるの?吊橋効果で戦場でのドキドキを勘違いしているの?それとも本当に……好き……なの?
分からない。ただ、会いたい。
彼を癒やしたい。体の傷も心の傷も全部。
そんな思いが溢れてしまう。
「俺はアルフォンソの功績を総て奪う。それでも、君がアルフォンソの手に残るなら……許されるかな」
「アルフォンソ様が貴方を恨むなんてありえないわ」
「…アイツは本当にお人好しだからな」
「同じ事をアルフォンソ様も仰っていました。あの方はリカルド様のことが本当に大好きで。何度もお勧めされましたよ」
「……本当に?」
「はい」
あれが彼の事が気になった切っ掛けだったもの。
「そうか……俺は本当にチャンスを逃し捲っていたのだな」
たらればを言い出すと本当に切りがない。でも、もしかしたら私が辺境で笑って過ごす未来が……
「俺は宰相閣下の令嬢と結婚することになる」
「……決められたのですね」
「尊敬する閣下のご令嬢ならば……きっと上手くいくだろう」
「イメルダ嬢も同じ事を仰っていたそうです。父親が認めた数少ない人物ならば安心だと」
「そうか。ありがたいことだな」
「……どうか、お幸せに」
「君もな。……だがまだ最後では無いだろう?このまま別れたらラファが悲しむ」
ラファ。本当に、今、会いたい。
この悲しみも全部あなたに癒やされたい。
どうしてこんな……ままならない事ばかり起こるの?
幼い貴方に縋りたい私は本当に愚かね。
「そうですね。ラファに会いたいです」
「ぜひ辺境に寄ってやってくれ」
「はい。ありがとうございます。……これで失礼しますね。茶葉は置いていくのでよかったらお飲みになって下さいませ」
「ありがとう、ルシア。またな」
「はい、また」
……エスカランテ様に報告は必要だろうか。
いえ……何と伝えたらいいか分からない。
申し訳ないけれど、リカルド様にお任せしよう。
何となく部屋に戻る気にもならず、適当に歩を進める。誰かと話がしたい。誰?セシリオにはあった。カハールやエスカランテ様には話せない。
……オフェリア様はもういない。困ったな。私ったら友達がいないわ。
「ルシア?」
どうして……確かに図書室の入り口には見張りがいた。でもアルフォンソ様がいるなら止めてよ!
「……」
「返事をしてくれないの?」
「……お久しぶり、です」
「うん、そうだね」
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