私はあなたの何番目ですか?

ましろ

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「ようこそオルティス家へ!」
「君はただいまだろう?」


アルに笑われてしまった。でも。
久しぶりの我が家。全然変わってない。
使用人達もそのままだ。エルディアでの出来事が夢だった気がするほどの、懐かしい日常。


「いらっしゃい、疲れたでしょう?」
「お母様!」


嬉しくて抱きついてしまう。
お母様の顔を見たら本当に戻れたのだと実感できた。


「お帰りなさい、ルシア。さあ、私達に彼のことを紹介してちょうだい?」
「うん。アル、来て!」


アルを紹介すると、予想通り歓迎された。
私達を巻き込んだことを謝罪しようとするアルをお父様が優しく止める。


「私は子供達を周りに流される事無く、自分で判断して選んだ道を進むように育てたつもりだ。
だから、彼等が君を助けたというなら、本心からそうしたいと望んだからだよ。
だからね、謝罪など不要だ。私はこの子達の人を見る目を信じているからね」


お父様の言葉に胸が熱くなる。


「ありがとうございます。ですが、これだけは言わせて下さい。お二人の力と、オルティス男爵が大切な手記を送ってくださらなければエルディア国と……父母を救うことは出来ませんでした。心より感謝申し上げます。ありがとうございました」


アルが深々と頭を下げた。
あんなゴミ屑だったのに、救えたと感謝する姿に胸がキュッとする。これは……怒りだ。


「ルシア、ごめんね?」


どうしてすぐに気付くの。


「……私は許さないから」


最後まで彼を傷付け続けたゴミ屑なんて絶対に許さない。


「うん。君がそうやって私の為に怒ってくれるから私は救えたことに感謝できる。ありがとう」


その言い方はずるい。怒りが嬉しさに変わる。


「二人は仲良しさんね。結婚はいつ頃にするの?」


お母様の質問にアルが驚いている。


「え、いえあの、まずはお二人にお許しを得てからと思っていましたので」
「そうなの?とっくに私達はそのつもりだったわ。ねえ?」
「そうだな。ミゲルからそう聞いていたし」
「ね?心配無いって言ったでしょう?」


私達が笑っていると、ようやくアルの肩から力が抜けた。本当に緊張していたようだ。


「ありがとうございます。ただ、認めていただく前に聞いていただきたいことがあります」


そうして、アルは自分の能力のことを話した。いつか子孫にも能力が受け継がれるかもしれない事も。


「なかなかの爆弾を持ってきたなあ」
「そうね。とりあえず王家には絶対に秘密にしないといけないわ」


流石に驚いたようだけど、どう隠すかを悩んでいるだけだ。


「それからこれを」
「これは?」


アルが渡したのは1冊の本だ。
あ、これって──


「母がチェスティで覚えてきた禁忌魔法を書き記したものです。こちらをオルティス男爵に管理していただきたい」
「はっ?!」


今度は本気で驚いている。分かるわ。


「君はびっくり箱みたいな男だな?!」
「禁忌魔法……こんなにたくさん?」
「はい。禁忌となるものですから人の命に関わるものが多いです。ですからオルティス家にお渡しするのが一番かと思いました」
「……それはどういう意味で言っている?」


お父様の表情が変わる。優しい父から生体魔法を担う者として誇りと責任を持った人間の顔だ。


「ルシアが言っていました。どんなものでも使う人によって変わると。私はこの禁忌魔法も貴方達なら人を救う為に使って下さると信じています」
「……君は人たらしだな」


お父様が深々とため息を吐く。
そうね、私も初めて知った。こうやって絶対の信頼を寄せられたら落ちる人間は多いだろう。


「号泣してる人が多い理由が分かったわ」


アルはリカルド様が良い王になると言っていたけれど、本当はアルの方が王になるべき人だったのだろう。
だから王の力を与えられたのかも?

もう返してはあげないけどね。


「ありがとう。大切に使わせてもらうよ」
「はい。よろしくお願いします」
「……流石にもう無いよな?」


これ以上の爆弾は欲しくないようだ。
思わず皆で笑ってしまった。


「しかし、よくこれを持ち出せたね」
「現国王の許可は貰ってますよ。母の遺品ですし、あの国に置いておく方が危険なので。処分することも考えましたが、またいつかこういう事が起こる可能性もある。それならしっかりと対策できる所に預けた方がいいと説得して持ち出しました」
「そうか、分かったよ。ではこれで君が家族になることへの問題はすべて解決したね?」
「……はい」


アルが居住まいを正す。


「私はルシアを必ず大切にします。結婚することをお許しいただけますか?」
「おや、幸せにするとは言わないのかい?」
「ルシアは人に幸せにしてもらう人ではありません。人の幸せな姿を見て喜びを得る人だ」
「なるほど。では君の幸せは?」
「ルシアの側にいることです」
「ならば二人が揃っていればいつでも幸せだね。
少しお転婆だが大切な娘だ。よろしく頼むよ、アルフォンソ。
今から私達は君の家族だ。父と呼んでもらえると嬉しいよ」


そういうとお父様は立ち上がり、アルの方に近寄ると優しく抱きしめ、背中をポンポンっと軽く叩く。


「大変だったな。これからは幸せにおなり」
「……ありがとうございます……義父上」


アルの瞳に涙が浮かぶ。父親に抱き締められるのは初めての事なのだろう。よかったね。そう思いつつも、


「駄目よ、お父様。アルを泣かせるのも抱き締めるのも私だけなんだから」
「ルシア?!」


まさかのお父様にヤキモチを焼いてしまった。
だってアルは人たらし。特に男性。気が気でない。


「ルシアも変わったわね。セシリオがモテてもヤキモチなんて焼かなかったじゃない?」
「色々あったの。信頼と放置は別物だと学んだのよ」


嫌な学習だけど真実だ。


「あら可愛いこと。それでお式はどうする?」
「そうね、身内だけでこじんまりしたいけど。アルは何か希望がある?」
「そうだな。……ルシア、もし嫌じゃなければ籍だけすぐに入れないか?出来れば今日にでも」
「え」


全然嫌じゃないけど──どうして?



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