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3章 3年目の結婚記念日。そして──
34.
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「キリアン様にお聞きしてもいいですか?
なぜ旦那様は話し合い一つしないで、3年も結婚生活を続けてきたと思いますか?」
「…え、分からない…私が知りたいよ」
「あー、キリアン。さっきは殴って悪かった。怪我させるつもりは無かったんだ。」
殿下がそっとハンカチを渡す。涙を拭きながら、ありがとうとお礼を言っている。
気が付かなくてごめんなさい?
なんだか弟みたいな扱いね。
「俺も聞きたいんだが、昨日今日とローズ夫人と話をしてみてどう思った?印象というか、どんな人かとか。」
「ローズ嬢は……優しくて、明るくて、楽しい女性です。なぜこんな素敵な人を大切にしないのか理解できません。」
うん?明るいはまぁ分かるわ。でも優しいと楽しいはなにかしら。離婚したいことと私が今まで旦那様にされて嫌だったことを話しただけよね?
「まず、どんな所が優しいと思ったんだ?」
「記憶が無い私を責めるのはおかしいと、優しくお茶を振る舞ってくれたり、私が彼女の前でイヴォンヌ様の手を握ってしまっても、最初は冷たい視線だったのに、ため息一つで仕方がないなというような慈愛の瞳で見つめてくれた。普通ならそれこそ殴られてもおかしくないのに!」
うーん、何かが違うわ。責めるならやった自覚のある方に言いたかっただけだし、イヴォンヌ様とのことは今更で、慈愛では無く諦観の瞳だと思うわ。
「……そうか。では楽しいというのは?」
「彼女の話し方がとても楽しいです。つぎつぎと言葉が溢れ出て、内容は未来の私の駄目な所なのでさすがに休憩をお願いしましたが、もっと違う内容ならいつまでも聞いていられるのにと残念に思いました。」
いつまでも聞いていられる?……え?
もしかして、あの無言のお茶会は会話の場では無く、私の講演会のような認識だったの?!
えー?私が無言にならないように頑張れば頑張るほど、楽しい講演会になり、余計に喋らなかったと……
うそ!あんなに嫌われているのかとか、どうやったら仲良くなれるかとかたくさん悩んだのに!
「まさかの5年目の真実……」
さすがに私が両手で顔を覆うと、殿下とアラン様が慌てた。いえ、泣きませんよ。涙も出ないわ。キリアン様だけきょとんとしている。
もしかして、あんな結婚生活に不満が無かったとか言わないわよね?
「………もう一つだけいいか?
ローズ夫人は18歳で結婚して、3年経った今は21歳だ。いいか?3年だ!
いままで聞いた内容を踏まえてどう思う?」
「ずいぶん曖昧な質問ですね…。ですが、きっとこの3年で更に美しくなったのでしょうね。」
そう言って微かに微笑む。
見たことがあるわ。その表情。3年目の結婚記念日だから早く帰ってきてねって伝えた時!
あーそうか、3年の意味が分からないのかぁ
白い結婚の概念がない?知識としてはあるけど、自分達には当てはめて無いのね。
どうしよう。すごいわ、ここまでズレている人っていたのね。
もしかして、やっとイヴォンヌ様への思いが捨てられそうだから、そろそろ夫婦になろうか的な?
まさかねぇ、そんなおかしなこと──
言うかも?
チラリとイヴォンヌ様を見る。まったく目が笑っていない。殿下とアラン様を見る。あ!反らした!
「殿下、アラン様。質問してもよろしいですか?男性と女性では心の中の時間の流れが違うのでしょうか?」
「いや、多少の違いはあってもそこまでではない!これは特殊な事例だ。
まず、キリアン。お前は女性に夢を見過ぎだ!男性を相手にしている時は普通なのに、どうして女性だとそうなんだ?
男も女も基本は変わらない。にっこり微笑んでいても腹の中では違う事を考えていることだってあるし、会話をしていたら返事がほしいんだ。相槌じゃない。返事だ!なぜお前はうっとりと聴き入ってしまうんだ?」
「え、でもすごく流れるように話してくれるから。」
なるほど……きっと私も悪かったのね。沈黙が怖くてどんどん隙間なく話していたかもしれないわ。
でもどこ?悪循環の始まりはどこだったの?まったく気づかなかったわ。
「だからポンコツだって言ったじゃない。私だって幼馴染なのよ?性格なんて知ってるはずなのにアレよ。
兄様達は子供の頃から一緒なのに、その女性崇拝に今頃気づいたの?」
「すまん、まったく気付かなかった…」
「ごめん、僕も。」
そして凄いわ幼馴染。よくもこんな難解なキリアン様を紐解けるわね。
やっぱり私は無理。10年一緒にいても理解できないわ。いっそのことキリアン様が女性だったら殿下といい夫婦になれたんじゃない?きっと美人で優秀で仲良しで公爵家で何も問題が無かったわよ。残念だったわね。
だんだんそう思えてきた。
なぜ旦那様は話し合い一つしないで、3年も結婚生活を続けてきたと思いますか?」
「…え、分からない…私が知りたいよ」
「あー、キリアン。さっきは殴って悪かった。怪我させるつもりは無かったんだ。」
殿下がそっとハンカチを渡す。涙を拭きながら、ありがとうとお礼を言っている。
気が付かなくてごめんなさい?
なんだか弟みたいな扱いね。
「俺も聞きたいんだが、昨日今日とローズ夫人と話をしてみてどう思った?印象というか、どんな人かとか。」
「ローズ嬢は……優しくて、明るくて、楽しい女性です。なぜこんな素敵な人を大切にしないのか理解できません。」
うん?明るいはまぁ分かるわ。でも優しいと楽しいはなにかしら。離婚したいことと私が今まで旦那様にされて嫌だったことを話しただけよね?
「まず、どんな所が優しいと思ったんだ?」
「記憶が無い私を責めるのはおかしいと、優しくお茶を振る舞ってくれたり、私が彼女の前でイヴォンヌ様の手を握ってしまっても、最初は冷たい視線だったのに、ため息一つで仕方がないなというような慈愛の瞳で見つめてくれた。普通ならそれこそ殴られてもおかしくないのに!」
うーん、何かが違うわ。責めるならやった自覚のある方に言いたかっただけだし、イヴォンヌ様とのことは今更で、慈愛では無く諦観の瞳だと思うわ。
「……そうか。では楽しいというのは?」
「彼女の話し方がとても楽しいです。つぎつぎと言葉が溢れ出て、内容は未来の私の駄目な所なのでさすがに休憩をお願いしましたが、もっと違う内容ならいつまでも聞いていられるのにと残念に思いました。」
いつまでも聞いていられる?……え?
もしかして、あの無言のお茶会は会話の場では無く、私の講演会のような認識だったの?!
えー?私が無言にならないように頑張れば頑張るほど、楽しい講演会になり、余計に喋らなかったと……
うそ!あんなに嫌われているのかとか、どうやったら仲良くなれるかとかたくさん悩んだのに!
「まさかの5年目の真実……」
さすがに私が両手で顔を覆うと、殿下とアラン様が慌てた。いえ、泣きませんよ。涙も出ないわ。キリアン様だけきょとんとしている。
もしかして、あんな結婚生活に不満が無かったとか言わないわよね?
「………もう一つだけいいか?
ローズ夫人は18歳で結婚して、3年経った今は21歳だ。いいか?3年だ!
いままで聞いた内容を踏まえてどう思う?」
「ずいぶん曖昧な質問ですね…。ですが、きっとこの3年で更に美しくなったのでしょうね。」
そう言って微かに微笑む。
見たことがあるわ。その表情。3年目の結婚記念日だから早く帰ってきてねって伝えた時!
あーそうか、3年の意味が分からないのかぁ
白い結婚の概念がない?知識としてはあるけど、自分達には当てはめて無いのね。
どうしよう。すごいわ、ここまでズレている人っていたのね。
もしかして、やっとイヴォンヌ様への思いが捨てられそうだから、そろそろ夫婦になろうか的な?
まさかねぇ、そんなおかしなこと──
言うかも?
チラリとイヴォンヌ様を見る。まったく目が笑っていない。殿下とアラン様を見る。あ!反らした!
「殿下、アラン様。質問してもよろしいですか?男性と女性では心の中の時間の流れが違うのでしょうか?」
「いや、多少の違いはあってもそこまでではない!これは特殊な事例だ。
まず、キリアン。お前は女性に夢を見過ぎだ!男性を相手にしている時は普通なのに、どうして女性だとそうなんだ?
男も女も基本は変わらない。にっこり微笑んでいても腹の中では違う事を考えていることだってあるし、会話をしていたら返事がほしいんだ。相槌じゃない。返事だ!なぜお前はうっとりと聴き入ってしまうんだ?」
「え、でもすごく流れるように話してくれるから。」
なるほど……きっと私も悪かったのね。沈黙が怖くてどんどん隙間なく話していたかもしれないわ。
でもどこ?悪循環の始まりはどこだったの?まったく気づかなかったわ。
「だからポンコツだって言ったじゃない。私だって幼馴染なのよ?性格なんて知ってるはずなのにアレよ。
兄様達は子供の頃から一緒なのに、その女性崇拝に今頃気づいたの?」
「すまん、まったく気付かなかった…」
「ごめん、僕も。」
そして凄いわ幼馴染。よくもこんな難解なキリアン様を紐解けるわね。
やっぱり私は無理。10年一緒にいても理解できないわ。いっそのことキリアン様が女性だったら殿下といい夫婦になれたんじゃない?きっと美人で優秀で仲良しで公爵家で何も問題が無かったわよ。残念だったわね。
だんだんそう思えてきた。
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