魔法のせいだから許して?

ましろ

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「ねぇ、リーゼ。リーゼは先輩のこと好きなんじゃないの?先輩の告白、嬉しかったんじゃないの?間違いだなんて嫌だって言わなくていいの?」

「ビ~ア~ン~カ~?」


フィデルがとっても怖い笑顔でビアンカの頭をグリグリしてる。


「だって!この二人まどろっこしい!」


先輩を好き、か。ビアンカは野生の勘が備わってるのかな。逃げられる気がしない。ここまでかな。


「あのね、ビアンカ。この一年間、私は恋に翻弄されてきたのよ。殿下の恋に公女の恋。私自身の恋。恋が全てなはずが無いのに、たったそれだけのことで皆おかしくなった。魔法のせいだったけど、その魔法も恋のせいでしょう?
……怖いのよ。誰かを好きになって、また繰り返されるかもしれないことが。
だから先輩が間違いだって言った時、悲しかったけどホッとしたの。先輩の想いを見て見ぬ振りをしたのよ」


そう。本当は分かってた。間違いだっていう言葉が指す意味。でも、私は先輩の恋が間違いだと思いたかった。恋じゃなければ側にいても怖くないから。


「ごめんね、ずるいのは私なの。先輩より自分が大事な卑怯者なのよ」


恋をしたくない。振り回されたくない。傷付きたくない。
だから気が付いていない自分でいたかった。
先輩の気持ちに気付かない振りして甘やかされて。こんな汚い自分を見ないようにしてた。


「だから私は先輩に伝える事は何もないの。悪いって分かってるのにやめないの。恋を知らないままでいたい。でも一人にもなりたくないずるい奴。
……せっかく友達になってくれたのに、こんな卑怯者でごめんなさい」


これで結局はひとりぼっちに戻るのね。
自業自得だけど辛いな……


「わかった!根掘り葉掘り聞いてごめん!でも、教えてくれてありがとう!」

「……見捨てていいわよ」

「なんで?リーゼは怖いんでしょう?だったら仕方がないわ。先輩は残念ながらリーゼの恐怖を越える安心感を友達としてしか与えられなかっただけ。もっと頑張るか諦めるか、決めるのは先輩だもん。
私は想いがあるなら伝えればいいって単純に考えてたけど、伝えられない事情が分かったからこれ以上は言わないよ」


「……ビアンカは私に甘過ぎよ」

「そう?別にもともとリーゼが聖人君子だなんて思ってないし」

「先輩には冷たいじゃない」

「あれはヒーローなのに、ついつい違うところが気に入らなかったのよ」

「……先輩はヒーローだけど、助ける相手を間違えたの。被害者の顔した卑怯者だったなんて残念よね」

「それだけ辛かったんでしょ?ごめんね、助けられなくて。私が偉そうに先輩に言ってごめんなさい」

「そうね、そこはちゃんと謝って。あと、本能のままに発言するのは良くないわ。フィデルがフォローに回って大変過ぎるもの」


全部バレちゃったわ。ずっと見ないようにしてたのに。こんな弱くて卑怯な自分を先輩が好きになったら駄目だ。
やっぱり間違いなのよ。あの言葉は正しい。
先輩が来ないのは正解だ。このまま冷静になって私から離れてくれたらいい。好きでも相手を信じられない私は本当に傷物令嬢なんだろう。


「さて、もうこれ以上隠してる事はないわ。今日は帰りましょうか」


お父様にもいつか伝えなきゃいけないわよね。好きな人と一緒にはなれないって。泣くかなぁ、ヤダな。


恋なんて消えてしまえばいいのに──






「えっと、……久しぶり」


先輩と会えたのはそれから3日後のことだった。


「……久しぶりですね、先輩。フィデルが勉強会をやりたいって騒いでましたよ。
私は今日は用事があるので帰りますね」

「え!あの、話が」

「申し訳ありません。この後家族で出掛けるんです」


これは本当の話。私と先輩はタイミングが悪い。
私は普通にしていたつもりだったけど、家族にはバレバレだったらしい。
領地にしばらく休養に行こうと言われてしまった。でも、それもいいのかもしれない。離れる理由になるもの。


「それじゃあ、また」


しばらく会えないことは伝えない。
どこまでも卑怯でごめんね。





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