魔法のせいだから許して?

ましろ

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「ロッテ、何かあった?」


優しいハルは私の変化にすぐ気付いてくれる。
ハルは寂しくはないのだろうか。私はなぜこんなにも寂しいと感じているの?


「なんだろう。老後の心配?かしら」

「老後?」

「……このまま一人で寂しくならないか心配になったの。赤ちゃんとか……産まなかったこと、後悔しないのかなって」


何故だろう。凄く恥ずかしい事を言ってしまった気がする。恋愛相談より駄目じゃないかな。


「閨ごとも出産も、綺麗なことじゃないよ」

「え、うん。分かってるわ」

「本当に?男と違って女性は受け入れる側だ。体の中に異物が入るんだよ。子ができるまで何度も。最初は痛みもあるだろうし、弱い部分をさらけ出して汚いモノを受け入れるの。そんな行為を誰かとできる?物語みたいに綺麗なだけじゃ済まないんだよ?」

「……詳しいのね」

「王子教育の中に閨の授業がある。座学と実技。私は嫌で見学だけだったけど。愛もないのに出来る行為だとは思わなかったな」


人の行為を見るの?実技って何。


「好きで見たわけじゃないから引かないで。とりあえずそういうこと。何となくで選んでいいものではないよってこと!そもそも誰の子供を産むつもり?恋人もいないのに」

「分かってるわよ。でも、女性の本能なのかな?自分の子供を抱いてみたいって思ったの。おかしいかな」


私はおもちゃを欲しがる子供のように見えるだろうか。ただ、愛する家族を作りたいと思ってしまった。寂しいからじゃなくて、手にすることが出来なくなることが寂しいのだ。
でも分かってる。子供は授かりものであって、愛し合う夫婦でもできるとは限らない。でも、今ならまだ可能性はあるのだ。相手がいれば、だけど。


「人間の本能を馬鹿にする気はないよ。でも、焦って変な人に引っかからないでね」

「誰かれ構わず誘ったりしないわよ?!」


何?痴女だと思われた?!
私だってハル程じゃないけど、他人との触れ合いは苦手だもの。マルティナ効果は恐ろしい。


「でも、ハルは?寂しいとは思わないの?」

「だってひとりじゃないと思ってるから」


同僚とか友人とか?確かに一人じゃないけど、皆は自分の大切な家族のもとに帰っていくわ。それは一人とは言わないの?


「同じ夢に進んでくれるロッテがいる。だから一人だなんて思った事がなかったな」

「私?」

「うん」

「……でも、完成したら?」

「ロッテは一つ出来上がったら終わりにするの?私は次のものを考えるよ。てっきり君も同じだと思ってた」


確かに。一つで満足なんてしない。もっと良くなるように改良するだろうし、次も考えるわ。


「そうね、そうなるとずっと一緒にいる気がするわね」


そうだわ、私が言ったことだった。
一生続くかもしれない新しい繋がりを望んだのは私。
この七年間。一番長く側にいた。すっかり体に馴染んだ存在。誰よりも大切な──


「……私、ハルなら受け入れられるかも」

「え?!」


あまりにも馴染みすぎて分からなかった。

恋ではない。これは愛だ。

唐突に気付く。人間の本能は凄いわ。
生涯を共に歩もうと思える相手が側にいる。ぬくもりを心地よいと思える人。伴侶としてなぜ望まないのか、感情よりも本能が訴えたのだ。


「私はあなたを愛していたみたい。気づくのが遅過ぎて本能が叱咤したみたいなの。私に愛されるとハルは困る?」


え、息が止まってない?


「ちょっと、ハル!息をして!」

「あ、え?なに、現実?」


そんなにショックだった?その反応に私がショックを受ける。


「今、愛してるって言った?私を?」

「……ええ、嫌なことを言ってごめんなさい。困るわよね?」

「違う!困るんじゃなくて!だってありえない。側にいれるだけで幸せだったのに、愛されるなんて」


アクアマリンの瞳から涙が溢れだす。
泣き顔も綺麗だわ。


「嫌じゃない?愛してもいいかしら」

「……本当に?……後悔しない?」

「何を後悔するの?愛せることが嬉しいのに。もう誰もそういう意味で愛することはないと思っていたわ。
でも、こんなに近くに愛はあったのね」


いつからかは分からない。でもきっと理屈では無い。ただ、愛しいと思った。


「愛してるよ、ロッテ。ずっと側にいてもいい?」

「もちろん。これまでと同じね」

「うん、それだけでいいと思ってた」

「ごめんね?私は欲張りだったみたい。もっと欲しくなってしまったわ。嫌じゃなければそういうことも含めて一緒にいたいの。家族になりませんか?」

「本当に私を受け入れてくれる?私の愛は狂ってるって……」

「今度その台詞を言ったら殴るかもしれません。マルティナ様を泣かせた威力をお見せしますよ」


王妃め。心の傷が深いじゃないの!
ハルは隠すのが上手過ぎ。困った人だ。
彼の傷を私が癒やしていけるといい。


「ありがとう、ロッテ。どうか私の伴侶に、家族になってください」

「ありがとう、愛してるわ」


涙の残る頬に口付ける。
愛おしいな。なぜ気付かなかったのかしら。
そっと抱きしめられる。温かい。幸せで心地よい。


「……なんで仕事があるんだろう」

「そうね、休憩室で何をやってるのかしら」


誰も入って来なくてよかった。
さすがに恥ずかしいわ。


「さて、仕事を頑張りましょうか」






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