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宴席と情報収集 2
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「おなーりー」という言葉に合わせ、姿を現したサクヤの姿をひと目見て思ったのは、そうだな……。
あまりに容姿の整い過ぎた人間がさらに着飾ると、スゴ味としか呼びようのない迫力が宿るということだ。
尖塔に立っていた時や、馬に乗って防壁を目指していた際の彼女は、軽装の鎧とミニスカートを組み合わせた格好だったが、今はそうじゃない。
黒を基調とした布地のドレスは、和洋中3つの要素を複雑に組み合わせたかのような代物であり……。
特に、着物風の帯と、ふわりと広がって惜しげなくまぶしい太ももが露わになっているスカートが印象的だ。
ついでに、胸元も軽く開かれており、ほんの少し……つつましく存在する双丘の魅力を主張していた。
うーん……俺の貧弱な語彙でこの可憐さを表現すると、そうだな……。
超スーパーカワイイどすばい! ……というのは、どうだろうか?
そんなことを思っている間に、サクヤがしずしずとこちらに向け、歩んでくる。
その姿は、さながらランウェイを歩むモデル。
膳を前にあぐらかいてる兵士さんたちの視線を独り占めしており、恥ずかしいのかやや顔が赤らんでいた。
俺? ははは……ガン見だ。かわいいものや綺麗なものを鑑賞すると、心が豊かになる。
だが、その歩みも当然ながら、いつかは止まるものだ。
彼女が歩みを止め、正座する形で着座したのは……やはりというか、俺の隣に用意された座布団だった。
彼女と目が合い、軽く会釈される。
だが、それきりで会話がない。
ただ、それだけのやり取りでも警戒と困惑……わずかな照れといった感情のうねりを、読み取ることが可能であった。
「お館様の、おなーりー!」
さて、かように可憐なサクヤ姫であるが、今の俺にとって最重要な人物は、続いておなーりー! するらしいお館様である。
そして、いよいよその人物は姿を現した。
年の頃は、30後半から40前半といったところ……ぶっちゃけ、俺と同年代だ。
ただ、サクヤと血の繋がりを感じる黄金の瞳は、猛禽のごとく鋭く研ぎ澄まされており、俺とはまた別のベクトルで鍛え上げられた御仁であることがうかがえた。
長く伸ばした黒髪はかなり白髪が混ざっており、これをオールバック風に後ろへなでつけている。
指揮官として、心意気を見せつけるためだろう。
着座している家臣たちと同様、その身は鎧で守られており、鋭い眼光と合わせて、かなりの迫力を生み出していた。
そんな彼が、娘のしずしずとした歩みと対照的に、ズカズカとこちらまで歩んでくる。
そして、サクヤの隣に立つと、そのまま座ることなく、家臣一同を見渡した。
そうした上で、この孔雀の間とやら全体に響くほどの大声を出したのだ。
「みなの者!
今日は、よくぞ……! よくぞやってくれた!
今、わしの首がこうして繋がっている第一の理由は、お前たちがよく働き、戦い抜いてくれたからである!」
その言葉を受けて……。
じんわりとした感動が、さざ波のように広がっていく。
中には顔をうつむかせ、男泣きをこらえている者の姿もあった。
それだけで、分かる。
このお館様という人物が、傑物であり、指揮官としてとことん頼りになる男であると。
そう感じた一番の要素が、最初にこうして家臣たちを褒め称えたことだ。
ぶっちゃけると、彼の首が繋がっている第一の理由がオデッセイ起動であることくらい、誰でも分かっていた。
その上で、あえて彼は最初に家臣らをねぎらったのである。
救い主たる俺を後回しにするリスクは、当然ながら承知の上だろう。
自分にとって、何より大事なのは身内であると、ハッキリ線引きできている人間の行動だった。
「だが……!」
そこで、お館様が軽く首を横に振る。
若干、舞台役者のそれを思わせる大げさな動きに、家臣さんたちは首ったけだ。
「ガルゼはあまりに強大であり、遺憾ながら、お前たちの働きだけでは攻め崩され、滅んでいただろうことは明らかである!
だが! 巨神様は我らを見捨てなかった!
伝説通りに立ち上がり、コクホウ自慢の城壁すらひと息で飛び越え、ガルゼの最強兵団すら震え上がらせたのだ!
そして、その巨神様と異体同心! 心臓にして頭脳たる者こそ、こちらのテツスケ·トーゴー様である!」
ほーほー……そういう設定でいくのね。
というか、割と正確に分析してきたな。
そうと思いつつ、俺は精一杯の威厳を漂わせながらふんぞり返っていた。
あまりに容姿の整い過ぎた人間がさらに着飾ると、スゴ味としか呼びようのない迫力が宿るということだ。
尖塔に立っていた時や、馬に乗って防壁を目指していた際の彼女は、軽装の鎧とミニスカートを組み合わせた格好だったが、今はそうじゃない。
黒を基調とした布地のドレスは、和洋中3つの要素を複雑に組み合わせたかのような代物であり……。
特に、着物風の帯と、ふわりと広がって惜しげなくまぶしい太ももが露わになっているスカートが印象的だ。
ついでに、胸元も軽く開かれており、ほんの少し……つつましく存在する双丘の魅力を主張していた。
うーん……俺の貧弱な語彙でこの可憐さを表現すると、そうだな……。
超スーパーカワイイどすばい! ……というのは、どうだろうか?
そんなことを思っている間に、サクヤがしずしずとこちらに向け、歩んでくる。
その姿は、さながらランウェイを歩むモデル。
膳を前にあぐらかいてる兵士さんたちの視線を独り占めしており、恥ずかしいのかやや顔が赤らんでいた。
俺? ははは……ガン見だ。かわいいものや綺麗なものを鑑賞すると、心が豊かになる。
だが、その歩みも当然ながら、いつかは止まるものだ。
彼女が歩みを止め、正座する形で着座したのは……やはりというか、俺の隣に用意された座布団だった。
彼女と目が合い、軽く会釈される。
だが、それきりで会話がない。
ただ、それだけのやり取りでも警戒と困惑……わずかな照れといった感情のうねりを、読み取ることが可能であった。
「お館様の、おなーりー!」
さて、かように可憐なサクヤ姫であるが、今の俺にとって最重要な人物は、続いておなーりー! するらしいお館様である。
そして、いよいよその人物は姿を現した。
年の頃は、30後半から40前半といったところ……ぶっちゃけ、俺と同年代だ。
ただ、サクヤと血の繋がりを感じる黄金の瞳は、猛禽のごとく鋭く研ぎ澄まされており、俺とはまた別のベクトルで鍛え上げられた御仁であることがうかがえた。
長く伸ばした黒髪はかなり白髪が混ざっており、これをオールバック風に後ろへなでつけている。
指揮官として、心意気を見せつけるためだろう。
着座している家臣たちと同様、その身は鎧で守られており、鋭い眼光と合わせて、かなりの迫力を生み出していた。
そんな彼が、娘のしずしずとした歩みと対照的に、ズカズカとこちらまで歩んでくる。
そして、サクヤの隣に立つと、そのまま座ることなく、家臣一同を見渡した。
そうした上で、この孔雀の間とやら全体に響くほどの大声を出したのだ。
「みなの者!
今日は、よくぞ……! よくぞやってくれた!
今、わしの首がこうして繋がっている第一の理由は、お前たちがよく働き、戦い抜いてくれたからである!」
その言葉を受けて……。
じんわりとした感動が、さざ波のように広がっていく。
中には顔をうつむかせ、男泣きをこらえている者の姿もあった。
それだけで、分かる。
このお館様という人物が、傑物であり、指揮官としてとことん頼りになる男であると。
そう感じた一番の要素が、最初にこうして家臣たちを褒め称えたことだ。
ぶっちゃけると、彼の首が繋がっている第一の理由がオデッセイ起動であることくらい、誰でも分かっていた。
その上で、あえて彼は最初に家臣らをねぎらったのである。
救い主たる俺を後回しにするリスクは、当然ながら承知の上だろう。
自分にとって、何より大事なのは身内であると、ハッキリ線引きできている人間の行動だった。
「だが……!」
そこで、お館様が軽く首を横に振る。
若干、舞台役者のそれを思わせる大げさな動きに、家臣さんたちは首ったけだ。
「ガルゼはあまりに強大であり、遺憾ながら、お前たちの働きだけでは攻め崩され、滅んでいただろうことは明らかである!
だが! 巨神様は我らを見捨てなかった!
伝説通りに立ち上がり、コクホウ自慢の城壁すらひと息で飛び越え、ガルゼの最強兵団すら震え上がらせたのだ!
そして、その巨神様と異体同心! 心臓にして頭脳たる者こそ、こちらのテツスケ·トーゴー様である!」
ほーほー……そういう設定でいくのね。
というか、割と正確に分析してきたな。
そうと思いつつ、俺は精一杯の威厳を漂わせながらふんぞり返っていた。
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