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プロローグ
1.BattleRift-アモルの覚醒-
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聖職者あああああは冒険者ランク上位の戦士に寵愛されながら高難易度クエストを攻略する
俺はゲームが好きだ。特に、VRが。
頭蓋骨に乗る重み、それが脳にまで浸透して、ゲームと一体化できたのを感じた時、ようやく気持ちが落ち着いてくる。
脳と身体全体を動かしてのプレイはゲームに己を没入させることができる。社会人のちりも積もれば山となるカスみたいなストレスの塊を魔法に込めて発散することが出来る。
学生時代からゲームは好きだったが、目的は友人たちとの交流ツールとしての利用が8割を占めていた。
それが今ではどうだ。社会人3年目にして、上司と同僚には声を爽やかに張り上げて、後輩には張り付けた笑顔と柔軟な態度で無害をアピールすることが最も重要だと理解した俺は、ゲームの世界に逃げて"高難易度クエスト"をクリアすることに快感を覚えて社会との交流から逃げている。
俺はゲームストアを開き、ゲームのダウンロードにかかる。
どうせこのゲームはランキングに入っているだろう、とダウンロードランキングを開くと、1位のゲーム名と城を背景に様々なキャラクターが、招くように手を差し伸べているイラストが大きく表示されていて、嫌でも目を惹いた、お目当てのモノ。
BattleRift―アモルの覚醒―
SNSで何度も目にしている名前だった。完全成人向けVRMMORPGで、独特なシステムとダンジョンが売りらしい。発売から一年ほど経過していても、今もランキング一位に君臨していることは、根強いプレイヤーが多くいることの証明だ。それが俺のゲームクリア意欲を増幅させる。
折角なら完全初見でやりたい。難易度高めの職業で。クリアするまでの苦労を積み重ねて、出来た時の快感を爆発させたい。時々自分をエムなんじゃないかなって思う。でも何度も何度もゲームオーバーになっても自分の手で攻略して、あるいは偶然、チート武器や強い魔法を見つけて、圧倒的な力を手に入れて敵を薙ぎ払う快感は、いつだって感情を高揚させる。
完全成人向け、ということは、グロテスクな描写の多いソウルライク――所謂死にゲーのようなものだろう。
迷わずに購入ボタンを押して、ダウンロードに入る。
ダウンロードの間、俺は部屋の掃除をして、飲み物とスナック菓子を用意してゲームをプレイする環境を整えた。1Kの部屋には、昨今のゲームのダウンロードソフトすら有難く感じる。掃除も楽だが、3年ほど住み続けていると雑貨も段々と増えてきた。平日の勤務中は土日に断捨離をしたいなぁ、と考えるのに、土日になればベッドに寝転んでスマートフォンで動画を垂れ流しにしているか、ゲームをプレイしているかの二択だ。
ダウンロードは1時間と30分ほどかかった。これに更に一年分の更新データのダウンロードで30分。合計2時間。
仕事終わりの金曜日、日付が変わる寸前にダウンロードが終わった大ボリュームのゲームを、俺はVRをかぶり直して起動する。
制作会社名が表示され、その後の画面の明滅、グロテスクな描写が一部あることの注意画面、そして、
本作品に登場する全ての人物は18歳以上です。
ん?
RPGでは見たことのない注意書きが現れた。疑問には思ったが、確認のために引き返す文でもないと判断した俺は、初めからを選択する。
暗い画面にスポットライトがあたり、ライトの下に天使の少女が現れた。金色の髪に天使の羽、少し気になるのはシースルーのワンピースの下にビキニを着た露出度の高い服装だ。
「ようこそ! BattleRiftへ! 貴方は、」
スキップ。
「ここでは、」
スキップ。
「この世界で、」
スキップ。
「闘いを、」
スキップ。
「出会いが、」
スキップ。
賛否両論別れるのは理解しているが、俺はゲームのシナリオに興味がない。世界観とか、物語とかよりも戦闘システムを重視している。だからキャラクターを作るためのフレーバーテキストや設定の説明、ムービーは基本的に飛ばす。決定ボタンを連打して、天使の身振りがカクカクとカットされている画面を見つめる。
説明が終わり、キャラクターメイク画面になった。
男性か女性か。
これは男性で良い。何故なら一番最初に表示されているから。
ジョブの選択。
難易度は高い方が良い。だから、最初は回復魔法しか覚えない聖職者を選ぶ。攻撃魔法の『レイ』を覚えるのはしばらく後のようだから、序盤は杖での素殴りをヒット&アウェイでこなしていく必要がありそうだ。
見た目の選択。
プレイヤーによってはここで半日が潰れるみたいだが、キャラクターに全く興味のない俺は、男性聖職者のテンプレート一番目を迷いなく選択した。
身長は170cmほどの細身で、光にあたるとキラキラと青みを帯びて光る銀色の髪。RPGの世界でどう生活すればそんなに白い肌を保てるのか? ってくらいに陶器のように白い肌。肌の色のおかげか、淡い金色の瞳が凄く映えている。聖職者という職業から、柔和や大人しそうなイメージがあったが、瞳は闘いの意志を秘めているように少しつりあがっていて、気に入った。神父服をベースにした装備に重たそうな魔道ローブを羽織った姿は、一目でジョブが分かるのもチームを組むのにいいだろう。
「………………」
あまりにもカッコイイというか、顔が良いというか、ビジュアルが整い過ぎていて、なんだか背筋に寒気が走ってしまった俺は唯一、このゲームの教会の模様であろうサインが刺繍されているフルフェイスヴェールをビジュアルに追加して、顔全体を模様付きの白い布で覆った。
その他細かい設定があったが、戦闘システムに支障があれば設定画面から直せばいいとデフォルト設定を連打して、キャラクターをサーバーに追加する。
ごぉんという重々しいジングルと共に、タイトルが画面に大きく現れる。
BattleRift―アモルの覚醒―
冒険者を大都市クラーヴェル ギルド前に転送中……――
ようやくプレイできる。
唇がひきつっていて、ぴりぴりと痛い。無意識に高揚感で口端がつりあがっていたのをようやく自覚した。
俺はゲームが好きだ。特に、VRが。
頭蓋骨に乗る重み、それが脳にまで浸透して、ゲームと一体化できたのを感じた時、ようやく気持ちが落ち着いてくる。
脳と身体全体を動かしてのプレイはゲームに己を没入させることができる。社会人のちりも積もれば山となるカスみたいなストレスの塊を魔法に込めて発散することが出来る。
学生時代からゲームは好きだったが、目的は友人たちとの交流ツールとしての利用が8割を占めていた。
それが今ではどうだ。社会人3年目にして、上司と同僚には声を爽やかに張り上げて、後輩には張り付けた笑顔と柔軟な態度で無害をアピールすることが最も重要だと理解した俺は、ゲームの世界に逃げて"高難易度クエスト"をクリアすることに快感を覚えて社会との交流から逃げている。
俺はゲームストアを開き、ゲームのダウンロードにかかる。
どうせこのゲームはランキングに入っているだろう、とダウンロードランキングを開くと、1位のゲーム名と城を背景に様々なキャラクターが、招くように手を差し伸べているイラストが大きく表示されていて、嫌でも目を惹いた、お目当てのモノ。
BattleRift―アモルの覚醒―
SNSで何度も目にしている名前だった。完全成人向けVRMMORPGで、独特なシステムとダンジョンが売りらしい。発売から一年ほど経過していても、今もランキング一位に君臨していることは、根強いプレイヤーが多くいることの証明だ。それが俺のゲームクリア意欲を増幅させる。
折角なら完全初見でやりたい。難易度高めの職業で。クリアするまでの苦労を積み重ねて、出来た時の快感を爆発させたい。時々自分をエムなんじゃないかなって思う。でも何度も何度もゲームオーバーになっても自分の手で攻略して、あるいは偶然、チート武器や強い魔法を見つけて、圧倒的な力を手に入れて敵を薙ぎ払う快感は、いつだって感情を高揚させる。
完全成人向け、ということは、グロテスクな描写の多いソウルライク――所謂死にゲーのようなものだろう。
迷わずに購入ボタンを押して、ダウンロードに入る。
ダウンロードの間、俺は部屋の掃除をして、飲み物とスナック菓子を用意してゲームをプレイする環境を整えた。1Kの部屋には、昨今のゲームのダウンロードソフトすら有難く感じる。掃除も楽だが、3年ほど住み続けていると雑貨も段々と増えてきた。平日の勤務中は土日に断捨離をしたいなぁ、と考えるのに、土日になればベッドに寝転んでスマートフォンで動画を垂れ流しにしているか、ゲームをプレイしているかの二択だ。
ダウンロードは1時間と30分ほどかかった。これに更に一年分の更新データのダウンロードで30分。合計2時間。
仕事終わりの金曜日、日付が変わる寸前にダウンロードが終わった大ボリュームのゲームを、俺はVRをかぶり直して起動する。
制作会社名が表示され、その後の画面の明滅、グロテスクな描写が一部あることの注意画面、そして、
本作品に登場する全ての人物は18歳以上です。
ん?
RPGでは見たことのない注意書きが現れた。疑問には思ったが、確認のために引き返す文でもないと判断した俺は、初めからを選択する。
暗い画面にスポットライトがあたり、ライトの下に天使の少女が現れた。金色の髪に天使の羽、少し気になるのはシースルーのワンピースの下にビキニを着た露出度の高い服装だ。
「ようこそ! BattleRiftへ! 貴方は、」
スキップ。
「ここでは、」
スキップ。
「この世界で、」
スキップ。
「闘いを、」
スキップ。
「出会いが、」
スキップ。
賛否両論別れるのは理解しているが、俺はゲームのシナリオに興味がない。世界観とか、物語とかよりも戦闘システムを重視している。だからキャラクターを作るためのフレーバーテキストや設定の説明、ムービーは基本的に飛ばす。決定ボタンを連打して、天使の身振りがカクカクとカットされている画面を見つめる。
説明が終わり、キャラクターメイク画面になった。
男性か女性か。
これは男性で良い。何故なら一番最初に表示されているから。
ジョブの選択。
難易度は高い方が良い。だから、最初は回復魔法しか覚えない聖職者を選ぶ。攻撃魔法の『レイ』を覚えるのはしばらく後のようだから、序盤は杖での素殴りをヒット&アウェイでこなしていく必要がありそうだ。
見た目の選択。
プレイヤーによってはここで半日が潰れるみたいだが、キャラクターに全く興味のない俺は、男性聖職者のテンプレート一番目を迷いなく選択した。
身長は170cmほどの細身で、光にあたるとキラキラと青みを帯びて光る銀色の髪。RPGの世界でどう生活すればそんなに白い肌を保てるのか? ってくらいに陶器のように白い肌。肌の色のおかげか、淡い金色の瞳が凄く映えている。聖職者という職業から、柔和や大人しそうなイメージがあったが、瞳は闘いの意志を秘めているように少しつりあがっていて、気に入った。神父服をベースにした装備に重たそうな魔道ローブを羽織った姿は、一目でジョブが分かるのもチームを組むのにいいだろう。
「………………」
あまりにもカッコイイというか、顔が良いというか、ビジュアルが整い過ぎていて、なんだか背筋に寒気が走ってしまった俺は唯一、このゲームの教会の模様であろうサインが刺繍されているフルフェイスヴェールをビジュアルに追加して、顔全体を模様付きの白い布で覆った。
その他細かい設定があったが、戦闘システムに支障があれば設定画面から直せばいいとデフォルト設定を連打して、キャラクターをサーバーに追加する。
ごぉんという重々しいジングルと共に、タイトルが画面に大きく現れる。
BattleRift―アモルの覚醒―
冒険者を大都市クラーヴェル ギルド前に転送中……――
ようやくプレイできる。
唇がひきつっていて、ぴりぴりと痛い。無意識に高揚感で口端がつりあがっていたのをようやく自覚した。
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