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シュルドー廃教会
7.「――今の俺には少し、難しすぎたよ」
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俺が再び飛ばされたのは、シュルドー廃教会の前庭、動きのとまった鐘の前だった。機能停止した鐘は、一区切りついたのを示す様に回復スポットに切り替わっている。
隣にはエルドが立っていた。彼の表情が、ほんの少しだけ険しいような気もしたが、眉間の皺はすぐに解けて、目の前で電子マップを広げていたカインとミーナに手を振る。
「見て見て~」
にかっと太陽のように眩しく笑って、エルドは籠手を外し、右の手の甲をカインとミーナに見せた後、俺へと視線を寄越しながら差し出してきた。
「なにこれ! レアイベントの報酬!?」
ミーナとカインがエルドの手の甲を覗き込む。エルドが体験したイベント内容は怖くて興味がないけれど、報酬は気になる。見た目からして、俺のとは全く違いそうだし。
エルドの手の甲には、赤い刻印が刻まれていた。大剣と天使の羽がイメージされたデザインだ。
バフ効果は、武器適性+1
「どういうことだ?」
俺が問うと、エルドとカインは一度顔を見合わせる。お互いの情報が合っているかどうかの照らし合わせのような仕草だ。
「職業によって扱える武器が異なるだろう? 例えば、ボクみたいな騎士は防御重視の盾か、盾と一緒に持てる槍。盾運用も出来る大剣以外の武器適性ランクはEだ。それが単純にDになるってことだと思うけれど」
カインが顎を擦りながら言う。エルドは俺の隣でステータス画面を開き、操作するとこの場にいる全員に共有した。
「そうみたいだな。箒の武器適性がEからDになっている」
「これってどうなの?」
ミーナが肩を竦めた。聞いておきながら、期待外れも甚だしいといった表情だ。
正直、俺もそう思う。
エルドは、瞳を細めてから、頬を指で掻いた。言いにくそうにゆっくりと口を開く。
「あー……これ、成長? していくみたいで……いや、適切な選択肢を選べば多分、元から強いのが貰えたのかも、しれないけど。上手くいってたらなんでもメインウェポンに出来るくらい強かったんじゃないかな」
心臓がばくりと跳ねた。やっぱり、同じような質問形式のイベントだったんだ。
それにエルドは失敗? している。
内容は同じだったのだろうか。もし同じ場合、どこで失敗したのだろう。いや、あの質問はあまりにも"俺仕様"だったから、きっとエルドはエルドに関することを質問されたんだ。
すごく、気になる。でも、愛とはなにか? とか想いの話とか、そういうのは誰にでも聞けるから――もし同じ問をされていたらと考えると好奇心も消え失せていく。
「へぇ。君が苦戦するなんて珍しいね」
カインが軽く笑いながら言うと、エルドは手の甲の刻印を撫でた。
「――今の俺には少し、難しすぎたよ」
彼の返答に、カインが閉口する。瞳孔が少しだけ揺らいで、すぐに表情が真面目なものに戻る。
エルドの言葉にも、カインの態度の変化も、俺は気になったが、ミーナが俺のことを見つめている視線に気づいてそちらに意識が持っていかれた。
「じゃあ、あーさんくんはどうだったの?」
俺は腕輪を見せる。金色の腕輪の中心に、青色の水晶がはめ込まれている。豪華な装飾だ。
腕輪と一緒にステータス画面も三人に共有した。
「こんな感じ」
「これもまた……」
カインの感想に含みがある。俺も思った。
この腕輪もまた、エルドの刻印と同じで選択肢によっては効果が更に強力だったはずだ。
ゲームのシステム上、MP継続回復率なんていくらでも盛れる。是非盛ってくださいお願いしますって感じだ。
「これ持ってるだけであたしは羨ましいけどなあ」
同業種のミーナが羨ましそうに腕輪を見つめる。エルドが少しだけ予想したように、これから、もしも俺が正しい答えをどこかで見つけることが出来ればこの腕輪は成長するのだろうか。
だとしたら、正しい答えはなんだろう。
分かっているはずなのに、俺はその答えに蓋をする。
――もしも、エルドが同じような質問をされて、答えるのに失敗しての今回の報酬だったとしたら、尚更だった。
「で、レアイベってどんな感じだったの?」
ミーナの視線が腕輪から俺の顔へと移る。猫のような好奇心を露骨に表情に出してくる。なんというか、甘え上手と言うか、懐に入るのが上手いというか、これ、童貞だったらもうなんでも喋ってしまいそうな愛らしさだ。良かった、俺が童貞じゃなくて。
俺が答えに詰まっていると、エルドは優しく微笑みながら、すっと人差し指を唇に寄せた。手の甲の赤い刻印が、月の光に妖しく煌めいている。
「秘密♡」
エルドのあっさりとした、そして有無言わせない笑顔と返答にミーナは箒をばたばたと振りながら暴れた。
「つまんないのぉ!」
「まあまあ。ボクたちもいつか行けるさ」
暴れるミーナの肩を優しく叩き、カインはあやす。
「は~ぁ……それにしてもさ、エル君は刻印で、あーさんくんは腕輪なんだねぇ」
「嗚呼、そうだな。確かに」
エルドも同調する。カインも頷いていた。
あ、これ、俺だけがついていけてないパターンだな?
ゲームの報酬に法則や決まりがあるのだろうか。
チュートリアルをすっ飛ばした、若葉マークとれたての俺には見当もつかなくて、三人の予想していた答えを促した。
「じゃあ、なんだと思ったんだよ」
「「「淫紋かと思った」」」
隣にはエルドが立っていた。彼の表情が、ほんの少しだけ険しいような気もしたが、眉間の皺はすぐに解けて、目の前で電子マップを広げていたカインとミーナに手を振る。
「見て見て~」
にかっと太陽のように眩しく笑って、エルドは籠手を外し、右の手の甲をカインとミーナに見せた後、俺へと視線を寄越しながら差し出してきた。
「なにこれ! レアイベントの報酬!?」
ミーナとカインがエルドの手の甲を覗き込む。エルドが体験したイベント内容は怖くて興味がないけれど、報酬は気になる。見た目からして、俺のとは全く違いそうだし。
エルドの手の甲には、赤い刻印が刻まれていた。大剣と天使の羽がイメージされたデザインだ。
バフ効果は、武器適性+1
「どういうことだ?」
俺が問うと、エルドとカインは一度顔を見合わせる。お互いの情報が合っているかどうかの照らし合わせのような仕草だ。
「職業によって扱える武器が異なるだろう? 例えば、ボクみたいな騎士は防御重視の盾か、盾と一緒に持てる槍。盾運用も出来る大剣以外の武器適性ランクはEだ。それが単純にDになるってことだと思うけれど」
カインが顎を擦りながら言う。エルドは俺の隣でステータス画面を開き、操作するとこの場にいる全員に共有した。
「そうみたいだな。箒の武器適性がEからDになっている」
「これってどうなの?」
ミーナが肩を竦めた。聞いておきながら、期待外れも甚だしいといった表情だ。
正直、俺もそう思う。
エルドは、瞳を細めてから、頬を指で掻いた。言いにくそうにゆっくりと口を開く。
「あー……これ、成長? していくみたいで……いや、適切な選択肢を選べば多分、元から強いのが貰えたのかも、しれないけど。上手くいってたらなんでもメインウェポンに出来るくらい強かったんじゃないかな」
心臓がばくりと跳ねた。やっぱり、同じような質問形式のイベントだったんだ。
それにエルドは失敗? している。
内容は同じだったのだろうか。もし同じ場合、どこで失敗したのだろう。いや、あの質問はあまりにも"俺仕様"だったから、きっとエルドはエルドに関することを質問されたんだ。
すごく、気になる。でも、愛とはなにか? とか想いの話とか、そういうのは誰にでも聞けるから――もし同じ問をされていたらと考えると好奇心も消え失せていく。
「へぇ。君が苦戦するなんて珍しいね」
カインが軽く笑いながら言うと、エルドは手の甲の刻印を撫でた。
「――今の俺には少し、難しすぎたよ」
彼の返答に、カインが閉口する。瞳孔が少しだけ揺らいで、すぐに表情が真面目なものに戻る。
エルドの言葉にも、カインの態度の変化も、俺は気になったが、ミーナが俺のことを見つめている視線に気づいてそちらに意識が持っていかれた。
「じゃあ、あーさんくんはどうだったの?」
俺は腕輪を見せる。金色の腕輪の中心に、青色の水晶がはめ込まれている。豪華な装飾だ。
腕輪と一緒にステータス画面も三人に共有した。
「こんな感じ」
「これもまた……」
カインの感想に含みがある。俺も思った。
この腕輪もまた、エルドの刻印と同じで選択肢によっては効果が更に強力だったはずだ。
ゲームのシステム上、MP継続回復率なんていくらでも盛れる。是非盛ってくださいお願いしますって感じだ。
「これ持ってるだけであたしは羨ましいけどなあ」
同業種のミーナが羨ましそうに腕輪を見つめる。エルドが少しだけ予想したように、これから、もしも俺が正しい答えをどこかで見つけることが出来ればこの腕輪は成長するのだろうか。
だとしたら、正しい答えはなんだろう。
分かっているはずなのに、俺はその答えに蓋をする。
――もしも、エルドが同じような質問をされて、答えるのに失敗しての今回の報酬だったとしたら、尚更だった。
「で、レアイベってどんな感じだったの?」
ミーナの視線が腕輪から俺の顔へと移る。猫のような好奇心を露骨に表情に出してくる。なんというか、甘え上手と言うか、懐に入るのが上手いというか、これ、童貞だったらもうなんでも喋ってしまいそうな愛らしさだ。良かった、俺が童貞じゃなくて。
俺が答えに詰まっていると、エルドは優しく微笑みながら、すっと人差し指を唇に寄せた。手の甲の赤い刻印が、月の光に妖しく煌めいている。
「秘密♡」
エルドのあっさりとした、そして有無言わせない笑顔と返答にミーナは箒をばたばたと振りながら暴れた。
「つまんないのぉ!」
「まあまあ。ボクたちもいつか行けるさ」
暴れるミーナの肩を優しく叩き、カインはあやす。
「は~ぁ……それにしてもさ、エル君は刻印で、あーさんくんは腕輪なんだねぇ」
「嗚呼、そうだな。確かに」
エルドも同調する。カインも頷いていた。
あ、これ、俺だけがついていけてないパターンだな?
ゲームの報酬に法則や決まりがあるのだろうか。
チュートリアルをすっ飛ばした、若葉マークとれたての俺には見当もつかなくて、三人の予想していた答えを促した。
「じゃあ、なんだと思ったんだよ」
「「「淫紋かと思った」」」
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